ISO9001での文書化、文書体系のあり方について重要ポイントを徹底解説

ISO9001での文書化、文書体系のあり方について重要ポイント ISO9001

ISO9001のシステムを導入する時に悩ましいものの一つが文書化ではないでしょうか。何を文書化すれば良いのか、どのような文書体系が好ましいのか苦労される方が多いかと思います。そのような悩みを解決するには、文書化する目的は何か、良い文書や管理上の要件は何か、などを明確にすると良いでしょう。悩ましい文書化への道筋が見えてきます。

この記事では、ISO9001が求める文書化や文書体系のあり方について、以下の項目を中心して徹底的に解説します。

  • 文書化する対象
  • 文書化する目的
  • ISO9001が要求する文書化対象
  • QMSの有効性のために必要な文書化対象
  • 文書化した情報に求められる要件
  • ISO9001の文書体系のあり方

ISO9001での文書化に取組んでいる方やISOの管理責任者の方などで、文書化の方法、内容などに悩んでいる方などに是非参考にしていただきたい内容です。

「文書」、「記録」から「文書化した情報」に

ISO9001では2015年版に改訂されるまでは、「文書」、「記録」と表現されていました。2015年版からこれらをまとめて「文書化した情報(documented information)」と表現されるようになりました。

「文書化した情報」というのは聞きなれない言葉で、英語圏の人にとっても理解しにくい違和感のある言葉だそうです。「文書化した情報」はISO9000(品質マネジメントシステム規格-基本及び用語)の3.8.6で次のように定義されています。

「組織が管理し、維持するよう要求されている情報、及びそれが含まれている媒体」

「文書」や「記録」とすると紙媒体のイメージが強いので、電子媒体も含めて「文書」や「記録」の本質は「情報」であるということを意図する表現にしたと考えられます。

では、「文書化した情報」のなかで「文書」と「記録」はどのように区別されているのでしょうか。規格本文では、文書化した情報を「維持する(maintain)」と「保持する(retain)」という言葉で区別しています。ISO9001の附属書Aで、「維持する」の場合は従来で言う「文書」や「文書化された手順」などを、「保持する」の場合は従来の「記録」を意味すると規定しています。

文書化の目的は?何のために文書化するのか

何を文書化すればよいのか悩んでいる人は、何のために文書化するのか、文書化の目的を考えてみると良いでしょう。

ISO9001:2015の文書化の規定では、文書化の目的を「品質マネジメントシステムの有効性のため」と表しています。より具体的には2000年版での指針で、文書化の目的として「情報伝達の道具」、「適合性の証拠」、「知識の共有」の3つを挙げています。規格の変遷のなかで、文書化の必要性や重要性、また文書化規定の意図についての変更などは示されていないので、この指針の文書化の目的は2015年版でも引き継がれていると言えるでしょう。

情報伝達の道具:情報を伝える方法には口頭伝達がありますが、誤りや記憶忘れなどによる誤認や誤解が避けられません。文書化することにより確実に情報を伝達することができ、業務の手順や作業方法などに間違いが起こりにくくなります。

適合性の証拠:業務の結果などを文書化して記録することで、組織の規則やISO9001の要求事項に適合していることの証拠とすることができます。組織内や外部に対して、品質マネジメントシステムが正常に機能しているかを示す重要な証拠になります。

知識の共有:業務や技術のノウハウなどを文書化して組織内で知識を共有することも重要です。業務に関するあらゆる構成要素を標準化してそれを文書化することで、組織の要員の誰もがそれを利用できるようになります。

これらの目的のために文書化が必要になるわけですが、この文書化によって得られる効用、利益は何でしょうか?

規格の指針には、業務の明確かつ効率的な枠組みができる、業務に一貫性が与えられる、教育訓練の基礎となる、などのことが挙げられています。品質マネジメントシステムを有効に運用するためには、適切な文書化が不可欠の要素になると言えるでしょう。

ISO9001が規定する「文書化した情報」は

ISO9001の7.5.1で、「組織の品質マネジメントシステムは、次の事項を含まなければならない」として次の2つを挙げています。

  • a) この規格が要求する文書化した情報
  • b) 品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した、文書化した情報

では、これらがどのような文書化した情報なのか個別に見てみましょう。

規格が要求する「文書化した情報」とは

規格が要求する「文書化した情報」は、文書化した情報を維持(maintain)する、と文書化した情報を保持(retain)するという言葉で指定されています。維持するとされるのが「文書」で、保持するとしているのが「記録」を意味しています。表1に要求される文書化した情報の内容を示します。

章.項要求される文書化した情報の内容
4組織の状況
4.3QMSの適用範囲(M)
4.4.2プロセスの運用を支援するための文書化した情報(M)
プロセスが計画どおりに実施されたと確信するための文書化した情報(R)
5リーダーシップ
5.2.2品質方針(M)
6計画
6.2.1品質目標(M)
7支援
7.1.5.1監視及び測定のための資源が目的と合致している証拠(R)
7.1.5.2国際又は国家計量標準に対してトレーサブルな計量標準が存在しない場合、測定機器の校正又は検証に用いたよりどころ(R)
7.2力量の証拠(R)
7.5.1この規格が要求する文書化した情報
QMSの有効性のために必要であると組織が決定した文書化した情報
8運用
8.1プロセスが計画どおりに実施されたという確信をもつために必要なもの(M)
製品及びサービスの要求事項への適合を実証する文書化した情報(R)
8.2.3.2顧客要求事項のレビューの結果、及び製品・サービスに関する新たな要求事項(R)
8.3.2設計・開発の要求事項を満たしていることを実証するために必要なもの
8.3.3設計・開発へのインプット(R)
8.3.4設計・開発の管理の活動(R)
8.3.5設計・開発からのアウトプット(R)
8.3.6設計・開発の変更、変更のレビューの結果、変更の許可、悪影響を防止するための処置(R)
8.4.1外部提供者の評価、選択、パフォーマンスの監視、再評価の活動、及び評価によって生じる必要な処置(R)
8.5.2トレーサビリティを可能とするために必要なもの(R)
8.5.3顧客・外部提供者の所有物を紛失、損傷、又は使用に適さないと判明した場合、発生した事柄の内容(R)
8.5.6製造又はサービス提供の変更のレビューの結果、変更を正式に許可した人、及びレビューから生じた必要な処置を記載したもの(R)
8.6製品及びサービスのリリース(合否判定基準への適合の証拠、リリースを正式に許可した人に対するトレーサビリティを含む)(R)
8.7.2不適合の内容、対応した処置、取得した特別採用、不適合に関する処置を決定した権限者を記載したもの(R)
9パフォーマンス評価
9.1.1QMSのパフォーマンス及び有効性を評価した結果の証拠(R)
9.2.2内部監査プログラムの実施及び監査結果の証拠(R)
9.3.3マネジメントレビューの結果の証拠(R)
10改善
10.2.2不適合の性質及び対応した処置、是正処置の結果の証拠(R)
表1.ISO9001が要求している文書化した情報の内容
表中の(M)は文書を、(R)は記録を示します。

QMSの有効性のために必要な「文書化した情報」とは

QMSの有効性のために必要な「文書化した情報」は、組織が必要と判断したものとされていますから、組織の規模や製品・サービス・プロセスの種類などによって異なります。4.4.2項に規定されている次の文書化した情報が中心になるでしょう。

  • a) プロセスの運用を支援するための文書化した情報(M)
  • b) プロセスが計画どおりに実施されたと確信するための文書化した情報(R)

a)は各種プロセスの手順書や規定などの文書が主なものになります。b)は各種プロセスを実施した記録になります。

a)の文書には、品質マニュアルや文書管理手順書、内部監査手順書、是正処置手順書など2015年版より前のISO9001で必須とされていた手順書も含まれます。他に組織図や仕様書、指示書、生産計画書や試験・検査計画書などの各種計画書などがあるでしょう。

「文書化した情報」に求められる要件は

ISO9001で文書化しなければならない情報がはっきりしてきましたが、その文書化した情報に求められるものは何でしょうか。まず、良い文書、適切な文書に求められることと、次に文書の管理上で求められる要件は何かについて考えてみましょう。

良い文書とは

良い文書というのは、必要な時にその文書通りに実施することができて有益な結果を得ることができる文書でしょう。まとめると、次の3つの要件があります。

  1. 文書を使う時期、状況が明確になっている。
    • 文書のタイトルや適用範囲、文書体系での位置付けなどで、文書を使う状況を明確にする必要があります。
  2. 文書記載通りに業務が実施できる。
    • 文書に記載した手順通りに作業などすることによって業務を確実に実施できることは非常に重要なことです。その業務を実施するための力量の教育訓練も必要ですが、文書記載内容の詳細度も検討を要する点です。文書通りの作業で業務遂行が困難であるなら、その文書には何らかの欠陥があるはずです。改訂の検討が必要でしょう。
  3. 文書に基づく行動で有益な結果が得られる。
    • 文書はそれによって有益な結果が得られることを考えて本来は作成されますが、必ずしも良い結果が得られるとは限りません。標準作業や技術標準なども不備があればそれを明確にして、他の文書との関連なども含めて論理的に修正し改訂する必要があります。

良い文書には以上のような要件がありますが、大切なことは文書通りに業務を実施することです。そしてその文書による手順などが適切でないと解った時には、文書を適正に改訂することが重要です。

管理上求められる要件

ISO9001では7.5.3.1項で、以下の目的で文書化した情報を管理しなければならないとしています。

  • 文書化した情報が、必要なときに、必要なところで入手でき、かつ利用に適した状態になっているようにするため。
  • 文書化した情報が十分に保護されているようにするため。

そして、文書化した情報の管理にあたって取り組む事項として以下の4点を示しています。

  • a) 配付、アクセス、検索及び利用:文書が改訂された時などの新旧差し替え配布や閲覧や修正などのアクセス権、必要な文書・記録を容易に検索・利用できるようにするための処置を明確にします。
  • b) 読みやすさが保たれることを含む、保管及び保存:紙の書類や電子データに関わらず、文書はいつでも読みやすい状態を保つために破損や汚損、紛失などを防止するための保管、保存のルールを定めます。
  • c) 変更の管理(例えば、版の管理):文書を改訂した場合に改訂番号や改訂履歴などで変更箇所を明確にし、旧版が使われないようにするなどの管理が必要になります。
  • d) 保持及び廃棄:文書の重要度や法規制に準じた保管期間を定め、その後の廃棄方法を明確に規定します。法定文書には次のような文書があり、保管期間が定められています。
    • 取引に関する帳簿(7年)
    • 従業員の身元保証書、誓約書(5年)
    • 雇用保険の被保険者に関する書類(4年)
    • 労働者名簿、雇用または退職に関する書類(3年)
    • 社会保険に関する書類(2年)

これらの文書化した情報に関わる管理上の要件や決まりごとは、文書体系も含めた形で「文書管理手順書」などにまとめて規定すると良いでしょう。

ISO9001の文書体系のありかたは

ISO9001で種々の文書を文書体系として整理するように規定したのは1994年版です。品質マニュアルを頂点として、文書化された手順を第二階層、作業手順書や書式、報告書などのその他の品質文書を第三階層とする、ピラミッド型の三階層構造の文書体系を典型例として指針規格に示しています。

2000年版以降のISO9001では規定上は文書体系について言及していません。しかし、規格の指針には同様の三層構造の文書体系と記録文書の必要性が規定されていて、2015年版でもこの文書体系の考え方が継承されていると考えて良いでしょう。

文書体系は、一般的に文書の階層と運用項目などとのマトリックス内に文書名称を記した「文書体系図」で示されます。組織の文書全体を俯瞰できるので文書の位置付けなどの全体像の把握が容易になります。

文書化した情報は、組織の規模や製品・サービス・プロセスの種類などによって異なりますから、その組織に適した必要最低限の文書類で体系化すれば良いことです。QMSの管理の対象となるすべての文書を把握でき、それぞれの文書の位置付けと文書間の関係を明確にすることが文書体系図には求められています。

まとめ

ISO9001で文書化することが要求されている情報についてまとめました。文書化する目的と対象は何か、文書化した情報に求められる要件は何かなどを明確にして文書化する必要があります。重要なことは、文書化した情報によって円滑にかつ効果的に業務が遂行されなければならないということです。

組織によって文書化した情報の種類などは異なりますが、文書の位置付けや文書間の関係性を明確にした文書体系図が管理すべき文書を把握するためには必要です。文書はQMSに有効なものでなければなりません。有効性の観点から、あなたの組織の文書を今一度、見直してみるのも良いでしょう。

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この記事を書いたライター
hikaruta

ISO9001:94年版での認証取得に関わって以来、ISO14001や医療機器品質のISO13485の認証取得・運用に深く携わり、ISOに翻弄、鍛えられたビジネスライフを経験。一線を退き、反省なども込めてISOを見つめ直しています。

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