ISO規格要求が求める力量とは?力量を管理するスキルマップもあわせて解説

ISO規格要求が求める力量とは?力量を管理するスキルマップ ISO全般

ISOでは規格要求事項で、マネジメントシステム(MS)に関わる業務に対して力量のある人に従事させることを求めています。この要求については、ISO9001、ISO14001ともに明確に規定されています。それでは、力量とは何でしょうか?

力量とは、意図した結果を達成するために、知識及び技能を適用する能力をいいます。つまり、その業務に必要な知識と技能をもっていて、それを使って実際に業務をする能力を備えていることです。

組織には非常に多くの業務が存在します。マネジメント業務をはじめとし、企画、営業、総務、人事、生産管理、設計開発、製造、検査、品質管理、設備管理、ファシリティー管理、サービス管理などの業務がありますが、それぞれの業務には専門性があり、誰でもがすぐに勤まるものではありません。よって、各業務に従事する人には必要な力量を備えてもらい、各業務をスムーズに回していく必要があります。

業務が問題なく回ることでマネジメントシステムが有効に機能し、結果的に顧客満足を得ることに繋がるので、力量の確保は重要な要素となります。

この記事では、ISOが求める力量に関して以下をまとめています。

  • ISO規格要求が求める力量とはなにか?
  • 力量を管理するスキルマップについて

力量についてISOは何を求めているのか理解できておらず、そして力量の管理方法に悩んでいる方はぜひこの記事をご覧ください。

ISO規格要求が求める力量とはなにか?

チーム集合

ISO9001、ISO14001ともに、マネジメントシステムのパフォーマンスに影響を与える、組織の管理下で働く人々に対しての力量の明確化を求めています。組織の管理下で働く人々とは、組織の正社員のほかに、契約、派遣、臨時雇用者、パート、アルバイトの全てを指します。これらの人々の力量が発揮されると、組織全体のパフォーマンスが向上し、マネジメントシステムが有効に機能することになります。その結果、顧客が満足する製品やサービスを提供することができるのです。それだけ、組織にとって人々の力量を確保するというのは非常に重要な要素になります。

これから、ISO規格要求事項の求める力量について見ていきましょう。

力量の明確化

組織は、各部署で実施している業務について、力量を必要とする業務内容を整理しなければなりません。その部署の責任者が力量を必要とする業務内容を整理し、管理者が確認するのが一般的です。もし、その部署に新規の人材が欲しいとなったときに、管理者と責任者が必要な力量を把握しておかなければ、希望する人材を経営層に正確に伝えることができないので、管理者と責任者は必要な力量を明確にし、把握しておくことが大切です。

それでは、必要な業務に対して、各担当者のもつ力量はどのように判断すればよいのでしょうか。

力量については、各担当者が学校や業務で得た知識や技能、そしてその業務の実務経験などで判断します。なお、力量の判断は、組織の正社員だけでなく、配属された契約社員や派遣社員なども適用する必要があります。

力量を得るための処置

組織は、各部署に必要な力量をもつ人を配置しなければなりません。しかし、会社の業務は各社オリジナルであることが多く、一般的な知識や経験をそのまま使えるわけではありません。

よって、配属された人の力量を上げていくことで、業務全体の質を上げていく必要があります。

業務従事者の知識、技能、経験が不足している場合には、力量を得るための処置をとらなければなりません。

力量を得るための処置として組織がまず第一にやるべき事は、教育、訓練の提供、指導の実施になります。管理者と責任者は教育と訓練を計画し、実行していくことが大切です。なお、必要な力量を確保するまで業務に従事させないというわけにはいかないので、力量を有する従業員や責任者指導のもと、業務を遂行することになります。

その他の力量を得るための処置のひとつとしては、配置転換の実施になります。経営層や管理者は全社員の力量を見極めたうえで、人員が不足している部署に対して配置転換を行い補うことも考慮しなければなりません。

それ以外の処置としては、力量を備えた人の雇用、契約締結などがあります。

いずれにせよ、経営層および管理者は、従業員に過度な負荷がかからないように十分な人材を割り当てる必要があり、管理者と責任者は教育と訓練を行いながら、業務従事者を育てていくことが求められています。

教育・研修

ISOにおける教育訓練については、こちらの記事で解説しています。【ISOが求めるスキルアップを実現するための教育訓練を徹底解説

力量に対する有効性の評価

責任者と管理者は、教育、訓練を行った結果について、期待した通りの力量に到達しているかを定期的に評価しなければなりません。その評価結果次第で、教育、訓練を継続するか、あるいはさらなる力量アップを目指して追加で計画するかを検討していくことが重要です。

配置転換と新規雇用の場合は、管理者と責任者は、配属された人がその業務に従事するための力量をどれだけ備えているかの初期評価を行わなければなりません。その評価結果から、教育と訓練の計画を立て、実行し、定期評価を行います。

もしその業務に対しての力量アップが困難であると判断される場合には、管理者は経営層にその結果を伝達したうえで、どのように処置するかを改めて検討しなければなりません。

力量評価の記録管理

規格要求事項では、業務従事者の力量の証拠としての記録管理が要求されています。力量評価の管理として一般的に作成されている記録は、スキルマップあるいは力量表と呼ばれているものです。

スキルマップは業務従事者の不足している力量項目を一目で確認でき、教育訓練を計画するための重要なツールとなります。

力量を管理するスキルマップについて

記録作業

前項では、力量について詳しく見てきました。そして、力量評価の記録としてスキルマップを作成し管理する必要があることも述べました。

それでは、スキルマップはどのように作成すればよいのでしょうか。これから、スキルマップを作成する手順を見ていきます。

力量(スキル)を要する業務の整理

スキルマップを作成するにあたり、まずは職場でスキルを要する業務の整理をしなければなりません。

業務の整理としては、職場の業務フローの順にそって洗い出していくとよいでしょう。業務整理の階層としては、第1階層を業務項目で区分し、そこから第2階層として業務項目ごとの作業項目に分解していくと、必要なスキルを洗い出していくことができます。つまり、第2階層の作業項目がスキルを要する項目となります。

スキルの粒度

作業項目を洗い出す際に、職場の業務を分解していくと、かなり細かい作業まで分解することができます。しかし、作業項目が細かくなりすぎても、スキルを管理する際に管理しきれなくなります。逆に粗くなりすぎると、業務従事者のスキルを把握するにも、教育訓練に繋げていくにも不十分な状態となってしまいます。

それでは、どれくらいの粒度で管理するのが適正なのでしょうか。

事例として検査工程で考えてみましょう。

検査作業としては、外観検査、寸法検査や顕微鏡検査などがあります。それでは、検査員の力量としては、外観検査ができる、寸法検査ができる、寸法検査ができるのみでよいでしょうか。いえ、そうではないはずです。検査を行う前後でもやるべきことがあり、それらの作業にも力量が必要です。例えば、その日に行う検査の計画(先入先出し段取り)、検査仕様との整合、検査用ツールの点検、検査環境の整備、検査実施、検査結果集計、製品包装などの作業があります。それぞれの作業を最終的には一人でできるようにし、後輩を指導できるまで成長しなければなりません。

このように、検査員には、検査ができるとの力量だけでなくそれに付随する作業にも力量が必要であることが分かるかと思います。

検査工程と同じように各工程には主要作業のほかに複数の作業で成り立っているので、力量評価しておくべき作業項目をいくつも洗い出すことができるはずです。なお、作業項目を細かく洗い出し過ぎても管理が大変になってしまうので、責任者として適切に管理できる範囲での作業項目の洗い出し量にしておきましょう。

 スキル評価基準の策定

Skillmap

次に、スキルの達成度を判定するためのスキルレベルを決めていきます。スキルにレベルを持たせると、業務従事者の保有スキルがより分かりやすくなります。

それでは、スキル評価基準は何段階にしたらよいのでしょうか。

スキル評価基準の数としては、3~6段程度に設定されることが多いようですが、4段階が一番管理しやすいかと思います。4段階とは、以下のような評価基準になります。

  • レベル4:指導ができる
  • レベル3:一人で実施できる
  • レベル2:指導を受けながら実施できる
  • レベル1:補助ができる

評価基準をさらに増やせばより詳細な管理が可能となりますが、反面、評価基準が細かいために評価が難しくなってしまい、管理が困難になってしまう恐れもあるので注意が必要です。

スキルマップの管理

業務項目、作業項目、そしてスキル評価基準が決定したら、業務従事者のスキルレベルを評価していくことになります。

スキルの評価には、下記2つの方法があります。

  • 責任者が業務従事者のスキルを評価し記入する方法
  • 本人が自身のレベルを記入し、責任者が評価、修正する方法

多くは、前者の責任者が評価する方法を採用しています。なぜなら、責任者は業務従事者全員を客観的に見て評価し、平等感を得られるからです。後者の、自己評価後の責任者評価のやり方は、業務従事者自身が現状何点かを見直すにはよいことですが、各々の自己評価基準が異なる可能性があり、責任者としてその評価基準を業務従事者全員に理解させ納得させるのに負荷がかかります。従業員の異動や新入社員配属のたびに理解させる機会を設けなければなりません。

よって、スキルマップは責任者の客観的な評価により実施するのがよいでしょう。

スキルマップのなかには、現状評価欄、予定欄、実績評価欄を設けておくと管理がしやすくなります。まずは、責任者が評価する時点での評価点を記載します。そして、責任者として業務従事者が成長して欲しい作業項目に対して、予定評価点を記載し、面談などで業務従事者と共有しておきます。もし、業務従事者がどのようにしてスキルを上げたらよいか悩むポイントがあれば、責任者は必ず何をすべきかしっかりと説明しておきましょう。そして、一般的には半期あるいは期末でのスキル到達状態の評価を実施することになりますが、その結果を実績評価欄に記載します。

このように評価点を記載していけば、スキルが向上したかどうかを業務従事者が確認することができます。

この管理については、次の項の事例で具体的にみていきましょう。

スキルマップの事例

これまで、スキルマップの作成方法および管理方法を述べてきました。何となくイメージはできるかと思いますが、どのように形にしたらよいか迷うかもしません。

これから、事例を交えてスキルマップの管理を説明します。 まずは、スキルマップのフォーマット事例を図1に示します。

図1 スキルマップのフォーマット事例

このフォーマットを利用した、プレス加工(図2)と外観検査(図3)を事例として作成しましたので、参考にしてください。

図2 プレス加工のスキルマップ事例
図3 外観検査のスキルマップ事例

スキルマップを作成したあと、点数をレーダーチャート化すると、業務従事者のスキル分布を見ることができます。弱い部分を可視化できるので、レーダーチャート化することもお勧めです。

まとめ

この記事では、力量とは何か、ISO規格要求事項に沿って解説してきました。また、力量を管理するスキルマップについても具体的に説明してきました。

国際要求や顧客要求は日々変化しており、製品やサービスへの品質要求がますます上がってきています。また環境に関しても、地球温暖化が加速している現状、企業に求められる環境管理要求も増えてきています。

このように企業への要求が増えている環境下では、従業員のスキル向上は欠かせない重要要素となります。製品やサービスの品質を向上させる、また環境負荷低減活動を推進するためには、従業員のスキルアップが不可欠です。

経営層および管理者は、従業員が安心してスキルを伸ばせる環境を整え、そして責任者は従業員との対話をしっかりと重ねたうえで知識および経験を増やせる機会を与えていきましょう。そうすれば、積極的にスキルを上げていこうとの意思が従業員に生まれ、指導できるレベルの人が多く育っていきます。

スキルアップを従業員の成長能力に頼るだけではいけません。会社一丸となってスキルを伸ばせる環境を整えバックアップすることで、人が育ち、そして人が定着します。全従業員のスキルアップが企業全体の底上げに繋がりますので、ぜひ、力量管理の大切さを認識し、活動してみてください。

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この記事を書いたライター
小一郎秀長

ISO9001(1994年度版)導入に続きISO14001(1996年度版)導入において、ISO事務局委員長として会社の認証取得に貢献。その後のISO改定時には、後輩育成のためにISO事務局へのアドバイザーとしてサポート。
現在はISO9001/IATF16949の維持管理に従事中。
戦国時代をこよなく愛し、尊敬するのは豊臣秀長。連休は城址廻りでリフレッシュ。

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