ISOが求めるスキルアップを実現するための教育訓練を徹底解説

ISOが求めるスキルアップを実現するための教育訓練を徹底解説 ISO9001

ISOを運用していくなかで悩ましいことの一つが教育訓練ではないでしょうか。ISOでは業務に必要な力量を要員が身に付けるために、教育・訓練などの処置をとることが要求されています。従業員各人に対してどのような教育訓練を実施すればよいかは、上長やISO管理責任者などの悩みどころです。

この記事では、教育訓練の必要性や教育訓練の種類、教育訓練の有効性をどのように評価するかなどを、以下の項目を中心にして徹底的に解説します。

  • ISOにおける教育訓練の位置づけ
  • 教育訓練のニーズは力量マップから
  • 具体的な教育訓練の種類や内容
  • 教育訓練の有効性の評価方法

教育訓練の計画を立案する立場の組織の上長やISOの管理責任者の方などで教育訓練の内容に悩んでいる方の他、実際に教育訓練を受けている方などに是非参考にしていただきたい内容です。

ISOが要求する教育訓練とは

Training Development

ISOでは品質のISO9001でも環境のISO14001や情報セキュリティのISO27001でも、7.2の力量の項に教育訓練のニーズや取扱いが規定されています。マネジメントシステム規格の規格構成が統一されたからですが、統一される前は、例えばISO9001では2008年版の6.2.2の力量、教育・訓練及び認識の項に教育訓練は含まれていました。現行版では力量の項に含まれていて条項の表題に教育・訓練の用語はありませんが、内容的には旧版と大きく変わるところはなく、どのマネジメントシステム規格の内容もほぼ同様のものになっています。

マネジメントシステムについては、こちらの記事でより詳細に解説しています。【ISOマネジメントシステムを基本からわかりやすく解説!規格の種類も紹介

ISO9001での力量における教育訓練は

ISO9001の7.2項では力量に関して次の4点を要求しています。

  • a) 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務をその管理下で行う人に必要な力量を明確にする。

→必要な力量は力量表やスキルマップなどで表すのが一般的です。

  • b) 適切な教育、訓練又は経験に基づいて、それらの人々が力量を備えていることを確実にする。

→力量を備えるために教育、訓練などを確実に実施することが求められています。

  • c) 該当する場合には、必ず、必要な力量を身に付けるための処置をとり、とった処置の有効性を評価する。

→力量を身に付けるための処置の一つが教育訓練です。教育訓練などの処置に対してその有効性を評価することが求められています。

  • d) 力量の証拠として、適切な文書化した情報を保持する。

→教育訓練の記録、評価などの情報は文書化して管理することが求められています。

教育訓練については、ニーズに応じた実施とその有効性の評価、文書化しての記録・管理の3点が要求されていることになります。

教育訓練の必要性はスキルマップから

業務に従事する人が職務を遂行するのにどの程度の能力、力量があるかを把握することが重要です。不足しているのであれば、それを補う教育訓練などが必要になります。従業員一人ひとりの力量を一覧表などにしたものを、スキルマップあるいは力量表、技能マップなどと呼んでいます。スキルマップは不足している能力などのレベルが一目で確認でき、従業員の計画的な教育訓練、人材育成を図るうえでは必須のツールになります。

スキルマップは、通常次の3つのステップで作成します。

  • STEP1:スキル体系の設定:業務項目や要素技術などで分類し、その職場に適した分類の階層や細分化を加えて設定します。
  • STEP2:スキル基準の設定:出来る出来ないの〇✕ではなく、4段階などのレベル分けにするのが一般的です。
    • レベル4:指導ができる
    • レベル3:一人で実施できる
    • レベル2:指導を受けながら実施できる
    • レベル1:補助ができる
  • STEP3:スキルの評価:上司あるいは本人と上司とでスキルを評価します。

スキルマップは表やグラフで表しますが、レーダーチャートが一目で把握できて見やすいでしょう。

スキルマップは職場内のスキルを可視化することで、不足しているスキルに対しての教育訓練につなげる目的と、従業員各人のモチベーションを向上させる目的ももっています。個人の品質目標などに数値化したスキルレベルを設定するのも良いでしょう。

ISOのスキルマップについては、こちらの記事でより詳細に解説しております。【ISO規格要求が求める力量とは?力量を管理するスキルマップもあわせて解説

スキルアップを実現する具体的な教育訓練は

Skills Training

不足しているスキルを充足させる、スキルアップを実現するための教育訓練には具体的にどのようなものがあるでしょうか。目的別や方法別など形態別に教育訓練を見てみましょう。その前に、そもそもISOで求める教育訓練とは何かを確認しておきましょう。

ISOでの教育訓練とは

ISOの原文では、教育訓練には「training(訓練)」が使われていて、「education(教育)」はほとんど使われていません。「training」の定義は「特定の技能、専門性、業務等に関して指導する、又は、それを受ける行為やその過程」とされています。

規格の教育訓練は職業訓練の類になるtrainingが主になりますが、組織の業務遂行に関わる要員の能力向上について、技能だけではなく知識や認識、自覚なども対象にしています。知識習得などeducationの要素も含まれることから、教育訓練としているのでしょう。認識や自覚についての教育訓練は、再発防止のための是正処置教育や方針、目的・目標などの決意・啓発のための訓練などが挙げられます。

教育訓練は何か特別のことではありません。組織の目標を達成するためには、チームの目標を達成し、要員一人ひとりが各自の目標を達成することが原点です。そのためには要員に必要な知識や技術などのスキル、力量で不足しているところを教育訓練で補足していく必要があります。組織のマネジメントシステムを運用して組織の目標を達成するためのベースとなる活動の一つが教育訓練であると言えるでしょう。

教育訓練の形態別分類

ISOでの教育訓練は、開催方法、目的、対象者、方法の形態別で分類できます。

開催方法による分類

組織の内部教育訓練と外部機関などによる外部教育訓練があります。

  • 内部教育訓練:組織内部の講師、テキストなどを使用しての研修などの教育です。テキストは組織のマニュアルや手順書などを使って具体的な内容にすると効果的です。ISOのコンサルティング会社などが扱う種々のPDF資料サービスなどを活用して作成するのも良いでしょう。
  • 外部教育訓練:外部機関の教育セミナーなどへの参加研修教育です。外部講師を招へいしての社内セミナーなども外部教育訓練と言えるでしょう。外部教育訓練には特別なコストがかかります。受講した社員を講師として社内の内部教育を行なうのも、教育の効果を評価するうえで有効です。

目的による分類

教育訓練の目的によってその対象者や内容のポイントが異なります。

  • ISO教育:ISOを認証取得しているか、まだ準備段階かによって内容は異なります。取得前の教育であればISO全般について各部署の現状、準備状況を確認しながらのギャップを是正する目的の教育が主体になるでしょう。認証取得している場合は、審査機関や内部監査の指摘事項などに対する再発防止のための是正教育が重要になります。
  • 責任者認定教育:責任者にはいろいろありますがISOシステムで言えばISOの管理責任者、内部監査の主任監査員などがあります。その資格要件は規格では特に規定がなく、組織での個々の定めによります。ISOコンサル会社などによるセミナー受講を要件にしている組織も多いでしょう。審査を依頼している認証機関が主催するセミナーを選択するのが無難ですが、多くのセミナーがあるので内容やネットの評判なども参考にすることをおすすめします。
  • 新入社員・新任者教育:新入社員については会社の歴史や製品・組織の説明、緊急事態対応や法令順守などの教育を導入として、人材育成専門企業などによる合宿型の教育もあるでしょう。他部門などから着任する新任者に対しては、業務に必要なスキルの不足部分を強化するOJTを主体にした教育が最優先で必要です。
  • 設備・システム導入時教育:新しい設備やシステムの導入時には、操作マニュアルなどをテキストとした教育が必須です。設備などの供給企業に教育をまかせるのではなく、その協力を得て導入責任部門が講師や実際の操作実演などを行なうのが効果的です。
  • 是正処置、再発防止教育:内部監査や審査機関による指摘事項に対する是正処置について、対象部門と横展開した関連する部門に対する再発防止教育は、マネジメントシステムを効果的に運用するうえで特に重要な教育です。横展開して他部門に対しても他人ごとではなく認識させることで、同様な不適合を発生させない予防措置にもなります。
  • スキルアップ教育:要員のスキル不足部分に対する教育で、業務関連知識や技能、専門性などをOJTや独習で幅広い要員に対して行なう最も基本的な教育訓練と言えます。要員個々の目標達成にも深く関わる教育です。また、業務に必要な公的資格や免許を取得するための教育、講習受講なども重要です。自己研鑽や外部教育への参加などを支援する制度も必要になるでしょう。

対象者による分類

教育訓練の対象はその組織の全構成員です。社長や幹部、パートや派遣社員なども対象になります。環境ISOでは、サイトを訪問する部外者に対しても方針・目的などの認識を共有することを求めています。非正規社員と社外部外者に対する教育を見てみましょう。

  • パートや派遣社員など非正規社員教育:全体教育や部門別教育でも、パート社員や派遣社員の参加は必要です。非正規社員であっても目的・目標などの認識や自覚の共有が重要ですし、必要なスキルアップをして業務成果へ貢献することも当然求められます。認識や自覚を共有するために、方針や、目的・目標、部門や個人の目標などを記入できるカードなどを非正規社員を含め全従業員に携帯させるなどの処置も効果的です。
  • 社外部外者教育:納品で資材部門などを訪れる協力企業や設備などの工事業者など、社外部外者にも共通の認識を持ってもらうための教育が必要です。該当する部門の担当者による要約した資料などを使っての説明が直接的で有効と言えるでしょう。ISO9001では外部供給者を評価することが求められていますので、その評価の際に自社の方針などを提示するのも良いでしょう。

方法による分類

教育の実施方法による分類では職場の実務上で行なう方法と、職場を離れて講習会などに参加する方法に分けられます。

  • OJT教育:OJT(On the Job Training)は実際の業務上で仕事をしながらその実務を習得する教育訓練です。新人に対してはなるべく多くの実務訓練を体験させる目的からジョブ・ローテーション制度の採用が有効です。ISO教育に関しては、審査機関による定期審査などへの参画が格好のOJT教育になります。審査する時の着眼点や不適合のとらえ方など、数多くの参考事例を得ることができます。
  • 講習会などのOff-JT教育:職場を離れて講習会などでの教育をOff-JT(Off the Job Training)と言います。職場では得られない高度な、あるいは別領域の知識や技能などを習得するための教育です。教室形式の座学が主体となりますが、自己研鑽のための独自学習教育や通信教育などもOff-JT教育と言えるでしょう。

教育訓練の有効性を評価するには

さまざまな教育訓練の形態を説明しましたが、ISO規格ではこれらの教育訓練の有効性を評価することを要求しています。この要求には教育訓練プロセスにおいてもPDCAを回して、より良い教育訓練に改善するようにという意図があります。ですから教育を受けた人に対する有効性の評価だけでなく、教育訓練の手法などについても評価することが重要になります。

有効性の評価方法としては、理解度の確認試験、教育する講師などによる個別評価、受講者提出のレポートによる評価、受講後の実務アウトプウトの評価などが考えられます。評価は教育実施後すぐに行なう必要はありません。OJTなどであっても半期ごとにまとめて評価するという方法でも、適切に有効性が評価できれば問題ありません。組織の状況などに合わせて具体的で効果的な評価方法を決定すればよいことです。何らかの形で教育訓練の有効性を評価し、PDCAを回してより良い教育訓練の改善につなげていくことが最も重要なことです。

文書化と記録管理の要件は

規格では、教育訓練の記録、評価などの情報は文書化して管理することを要求しています。これは業務に必要な力量を明確にし、そのための教育の記録などを証拠として残すことを目的としています。

文書化した情報には教育計画や実施記録、教育に対する評価記録などが含まれ、様式などの規定はありません。教育実施記録には次のような項目が必要でしょう。

  • 教育タイトル
  • 実施日時
  • 講師名、受講者
  • 教育目的・目標
  • 教育項目
  • 受講所見・感想
  • 講師あるいは上長などによる評価

記録の保管期間は、その教育に関連する業務が終了した後5年間程度が一般的です。

まとめ

教育訓練は組織の要員の力量をアップし、組織のパフォーマンスを向上させるうえで欠かせないものです。教育訓練には、要員のスキルレベルを正確に把握し、業務に不足しているスキルギャップを効果的に埋めることが求められます。

教育訓練にはさまざまな形態、種類があります。教育の目的に適した形態、種類の採用が望まれます。規格では教育の有効性を評価することも求めています。評価することで、教育内容を改善することにつなげられます。

組織のパフォーマンスを継続的に改善、向上させるために教育訓練は非常に重要な要素になります。教育訓練のPDCAを確実に回して効果的な成果の実現につなげましょう。

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