ISO9001が要求する設計・開発プロセスの重点手法を徹底解説

ISO9001が要求する設計・開発プロセスの重点手法を徹底解説 ISO9001

ISO9001は品質マネジメントシステムの規格で、製品やサービスの品質マネジメントについて多くの要求事項を定めています。新しい製品やサービスを設計・開発することは企業の発展のためには欠かせないことですが、ISO9001は設計・開発のプロセスに対してどのようなことを要求しているのでしょうか。

この記事では、ISO9001の設計・開発プロセスに対する要求事項のなかで、以下の4つの重点手法に的を絞って解説します。

  • 要求仕様、設計仕様の明確化
  • FMEAによるリスク対策の反映
  • 各ステップでのデザインレビュー
  • 徹底した設計検証と妥当性確認の実施

この4つの手法を効果的に実現できれば、その新しい製品やサービスの開発は期待以上の満足できる結果を得ることができるでしょう。設計・開発のプロセスで悩んでいる方や、確実な開発手法を検討している方などに、ぜひ参考にしていただきたいポイントを中心にして徹底解説します。

ISO9001設計・開発プロセスでの要求事項

ISO9001は設計・開発プロセスのなかで以下の事項を明確に要求しています。

1. 製品及びサービスに不可欠な要求事項を明確にすること(8.3.3設計・開発へのインプット)。

⇒ 要求仕様を明確にすることで、機能・性能の他、法規制や公的規格、技術基準、リスクに関連する要求事項も含むこととしています。8.3.4設計・開発の管理)。

2. 次の事項を確実にするために、設計・開発プロセスを管理すること(8.3.4設計・開発の管理)。

2-a. 達成すべき結果を定める。

⇒ 漠然とした表現ですが、設計・開発の各プロセスでのアウトプットが達成すべき機能や性能などの結果を明確に定めて進捗管理することを要求しています。

2-b. 設計・開発の結果の、要求事項を満たす能力を評価するためのレビューを行う。

⇒ 設計・開発プロセスの各ステップでの結果を評価するデザインレビュー(設計審査)を行うことを要求しています。

2-c. 設計・開発からのアウトプットが、インプットの要求事項を満たすことを確実にするために、検証活動を行う。

⇒ 設計・開発のアウトプットに対して設計検証を行うことを要求しています。要点は設計・開発へのインプットである要求事項を満たしているかを検証することです。

2-d. 結果として得られる製品及びサービスが、指定された用途又は意図された用途に応じた要求事項を満たすことを確実にするために、妥当性確認活動を行う。

⇒ 設計・開発のアウトプットから得られる製品やサービスに対して妥当性確認を行うことを要求しています。設計・開発にインプットされた用途についての要求事項を満たしているかを確認することが要点です。

2-e. レビュー、又は検証及び妥当性確認の活動中に明確になった問題に対して必要な処置をとる。

⇒ デザインレビュー、設計検証、妥当性確認で修正・改善などが明確になった問題に対しては、必要な処置をとることを要求しています。当然のことですね。

2-f. これらの活動についての文書化した情報を保持する。

⇒ デザインレビュー、設計検証、妥当性確認などの活動については文書化が要求されています。

設計・開発については8.3項だけでなく、8.2(製品及びサービスに関する要求事項)や8.5(製造及びサービスの提供)の項にも、広い意味での設計・開発に対する要求事項が含まれています。ただ、具体的な設計・開発プロセスについての要求事項は上述の8.3項に集約されていると言って良いでしょう。

上述したこれらの要求事項に対して、効果的な結果を得るための活動のポイントは何か、以下に具体的に説明しましょう。設計・開発プロセスは製品とサービスを対象にしていますが、ここではテーマを単純化するために製品を対象にして説明します。

要求仕様に対応する詳細な設計仕様の明確化が重要

設計・開発プロセスへのインプットで要求されている事項は、製品の要求仕様を明確にすることです。要求仕様はマーケティング部門や企画・営業部門あるいは設計・開発部門自らが、製品に対する顧客などの要望・要求事項を多角的にまとめ、要求仕様書として設計・開発部門に提示します。

要求仕様書に望まれる情報項目

要求仕様に対してISO9001が求めているのは、機能・性能の他、法規制や公的規格、技術基準、リスクに関連する情報などです。要求仕様書はシステム開発やソフトウエア開発などでは従来からよく用いられていた手法ですが、汎用的な製品開発にも有用な手法です。市場の要求仕様も含めて、次のような項目を明確にすると良いでしょう。

  • 製品概要
  • 想定される対象ユーザーと使用環境
  • 市場要求と競合情報
  • 機能
  • 性能
  • 形状、重量、電源などのユーティリティ
  • 安全機能・対策
  • 使用環境条件
  • オプション、消耗品
  • サービス性の考慮
  • 法規制、関連規格、知的財産権など
  • 価格設定
  • 耐用年数、推定故障率
  • 市場導入時期、生産台数

要求仕様書は具体的な製品を設計するための設計仕様書に展開されるものです。その展開は会議などの打合せを経て決定されていくものですが、要求仕様書には当たり前のこととか当事者には解っているだろうことも記載しておきましょう。漏れなく要求仕様を記載することが重要です。

トレースマトリックスで要求仕様から設計仕様へ

要求仕様を具体的な製品を設計するための設計仕様に展開するには、トレースマトリックスを使うと良いでしょう。トレースマトリックス(またはトレーサビリティマトリクス)、TM(Traceability Matrix)はシステム開発ではよく使われる手法です。

Excelを使って、縦行には仕様を、横列には要求仕様とそれに対応する設計仕様を並べます。設計仕様は機構設計、電気設計、ソフトウエア設計などに区別し、要求仕様を含めてそれぞれの仕様に識別Noを付けて管理すると良いでしょう。

要求仕様に対応する設計仕様がマトリックスで一目瞭然に比較できるので、漏れや間違いがありません。要求仕様に対して設計仕様が妥当であるかについては、後述するデザインレビュー(設計審査)などで徹底的な検討が必要になります。

FMEAであらゆるリスクを設計仕様に反映

設計・開発へのインプットには、リスク情報を含むことがISO9001では要求されています。例えば、設置場所や使用環境についてのリスクや、使用部品が故障してしまったときのリスク、操作手順を間違えてしまったときのリスクなど、そのようなリスクに対応する手段を設計仕様に盛り込むことが要求されています。

リスク対応の手法として最も用いられているのがFMEAです。FMEA(Failure Mode and Effect Analysis:故障モードとその影響の解析)は、1940年代にアメリカ軍が導入したもので、その後、航空宇宙開発分野や自動車、医療機器、半導体、食品、合成化学など幅広い各種産業で用いられています。

FMEAの具体的な手法

まず、FMEAを実施するための5人程度のチームを各部門から編成し、以下のような手順で解析を進めます。

1.対象となる製品やシステムの構成要素、部品を調べて対象範囲を決定する。

2.各部品などの考えられる故障モードと、その原因を列挙する。

3.その故障モードによる影響、損害度を漏れなく考えあげる。

4.影響などに対して以下の評価を行い、危険優先指数(RPN:Risk Priority Number)を求める。

  ①影響の厳しさ(被害の大きさ)

  ②発生する頻度(故障の起こりやすさ)

  ③検出の可能性(故障を発見できるか)

それぞれ、あらかじめ決めておく基準で10段階などの評価をする。RPN=①×②×③で、10段階評価なら1000点が最高点になる。

5.RPNがあらかじめ決めておく評価基準点以上の故障モードに対しては、改善・対策を検討する。

6.改善・対策した場合のRPNを再評価し、評価基準点以下になるようにする。

このようにFMEAで改善・対策したリスク対応内容を確実に設計仕様書に反映することが重要です。

設計開発の各ステップでのデザインレビューが必須

8.3.2項(設計・開発の計画)では、設計・開発の計画のなかに設計・開発のレビューを含むことを要求しています。設計・開発のレビューは、一般的にはデザインレビュー(DR:Design Review、設計審査)と呼ばれているものです。設計・開発の各ステップで要求仕様や設計仕様あるいはそのアウトプットなどに対して、品質特性などの評価や問題点の摘出などを行い、設計・開発の次のステップに移行できるかを審査する活動のことをデザインレビュー、DRと言います。

設計・開発とデザインレビューについては、詳細にこちらの記事でも解説しております。【ISO9001が規定する設計・開発のレビューについて重要ポイントを徹底解説

デザインレビューを実施する開発ステップは

デザインレビューはその製品に関係する各部門からの適任者が参加して実施されます。実施する開発ステップは、開発計画のなかで定められますが大きなステップは次の4つが一般的です。

製品企画DR:

・要求仕様

・設計仕様へのインプット

・開発日程や要員構成

・コスト目標

などの妥当性をチェックし、製品設計への移行審査を行ないます。

製品設計DR:

・設計仕様の妥当性

・標準部品、標準規格の採用状況

・信頼性、安全性、操作性、生産性の問題点

などをチェックし、試作評価への移行審査を行ないます。

試作評価DR:

・試作問題点管理表など

・設計検証報告書

・妥当性確認報告書の一部

などの内容をチェックし、量産試作への移行審査を行ないます。

生産移行DR:

・QC工程表

・検査規格書

・妥当性確認報告書

などをチェックし、生産移行への審査を行ないます。

どのデザインレビューも次の開発ステップに移行するための審査で、激しい議論が伴います。検討・審査に必要な十分な書類・資料などを準備することが重要です。

設計検証と妥当性確認は設計開発の最終関門

設計・開発プロセスでのアウトプットが、要求仕様あるいは設計仕様を満足するものになっているか?それを確認・検証するのが、設計検証と妥当性確認です。設計検証と妥当性確認の結果は、デザインレビューにおいても重要な審議事項になります。

  • 設計検証(Design verification):設計・開発のアウトプットが、インプットの要求事項を満たすことを確実にするために行う活動。

具体的には、アウトプットとして完成した製品の試作機が、インプットされた設計仕様に示された機能・性能などの仕様を満たしているかを試験・評価して検証します。

  • 設計の妥当性確認(Design validation):結果として得られる製品及びサービスが、指定された用途又は意図された用途に応じた要求事項を満たすことを確実にするために行う活動。

製品もしくは製品に近い量産試作機などを使って、要求仕様に示された用途や操作性などを満たしているかを試験・評価して確認します。顧客への持込デモ試験なども妥当性確認の一つです。

設計検証と妥当性確認との境界が明確にできない場合もあります。システム開発や医療機器開発などでは、すべての要求仕様、設計仕様に対応する評価をV&V(Verification & Validation)として、最終評価フェーズとすることもあります。V&Vで重要なポイントは、評価の方法や評価基準など細部にわたって事前に審査・承認を得たうえで実施し、誰が評価しても同じ結論に至るような手順で行うことです。

どのような方法で評価するにしても、設計検証と妥当性確認の評価結果がデザインレビューで審議・承認されなければ、その設計・開発による製品の商品化は成し遂げられません。

まとめ

ISO9001が設計・開発プロセスに要求する事項は何か、具体的な活動手法でのポイントとしてまとめました。顧客が望む製品を開発して実現するためには、顧客が要求する仕様を明確にして、その要求が開発した製品のなかで確実に満たされていることを示さなければなりません。

具体的には、要求仕様を設計仕様に落とし込むトレースマトリックスの手法や、リスク要因を設計仕様に取り込むFMEAの手法、設計・開発の各ステップで確実に審議するデザインレビューのシステム、顧客の要求する仕様が実現できているかを実証する設計検証や妥当性確認などの開発手法が必要になります。

これらの設計・開発の重点手法を確実に実施すれば、間違いなく顧客の求める新しい製品を開発することができます。製品開発の基本手法と言っても良いでしょう。新しい製品を開発するというのは簡単なことではありません。新製品開発の手法に悩んでいる方などは、今一度この基本に立ち返って開発プロセスを見直してみることをおすすめします。

ISOナビでは月額4万円から取得・運用を完全サポートしております。

HACCPやISMS、Pマーク、ISO9001をはじめとする各種規格の新規の認証取得から更新・運用までサポートしております。

業界最安級の月額4万円からご利用いただけ、対応工数のゼロ化を実現します。

まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いたライター
hikaruta

ISO9001:94年版での認証取得に関わって以来、ISO14001や医療機器品質のISO13485の認証取得・運用に深く携わり、ISOに翻弄、鍛えられたビジネスライフを経験。一線を退き、反省なども込めてISOを見つめ直しています。

hikarutaをフォローする
ISO9001
ISOナビ
トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました