ISO9001取得企業:製造業だけではない多くの業種の企業で認証を取得

ISO9001

ISO9001というと品質マネジメントシステムの規格で、製品の品質に関わる製造業が主体の規格と考えている人も多いかと思います。確かに取得企業のなかでは製造業が多いですが、その他にもいろいろな産業、業種の企業がISO9001を認証取得しています。

この記事では、どのような業種の企業がどのくらいISO9001を取得しているのかをテーマとして、次のようなデータなどをもとに説明しています。

  • ISOの各規格の認証取得企業数
  • 認証取得企業数の推移
  • ISO9001認証取得企業数
  • ISO9001認証取得企業数
  • ISO9001の要求事項

ISO9001の認証取得を検討されている企業の方や業界などの動向に興味をもたれている方などに、参考にしていただきたい内容です。

ISO9001の認証取得企業数

ISO9001の認証取得企業数は、ISO本部のサイトや日本の認証審査機関を統括する(財)日本適合性認定協会(JAB)のサイトなどから知ることができます。日本の状況であれば、品質マネジメントシステムだけに限らずJABの統計を確認するのが良いでしょう。

まず、日本でのISOマネジメントシステム規格の認証取得企業数を見てみましょう。JABではJQAなどの認証審査機関ごとの取得件数を公開しています。そのデータから表1にISO各規格の認証件数を経時推移で示します。

マネジメントシステム規格の種類2019.122015.72012.7
QMS品質 ISO900141,93547,82149,713
EMS環境 ISO1400122,00425,15826,157
ISMS情報セキュリティ  ISO270015,2275,0684,324
FSMS食品安全 ISO220001,4831,076733
MD-QMS医療機器 ISO13485982860366
AS-QMS航空宇宙 ISO9100818566432
その他の主な規格※4,9733,431
合計76,46683,15781,725
表1.ISOマネジメントシステム規格の認証件数推移
マネジメントシステム認証件数(2019年12月31日)などから集計(https://www.jab.or.jp/

※その他の主な規格には、OHSMS労働安全衛生(OHSAS18001)、FSSC食品安全システム認証(FSSC22000)、ITSMS ITサービス(ISO20000-1)、RTSMS道路交通安全(ISO39001)、AMSアセット(ISO55001)、JFS-C食品安全規格が含まれます。

ISO各規格の認証取得企業数

表1に各規格の認証取得企業数を示しましたが、2019年末時点で日本国内での取得件数は約7万6千件です。品質のISO9001がトップで約4万2千件、次に環境が約2万2千件、情報セキュリティが約5200件と続いています。

日本の企業数は、少し古い統計ですが平成30年の総務省・経済産業省の資料によると、事業所としての総数が約534万もあります。従業者規模別のデータを表2に示しましょう。

従業者規模事業所数比率(%)従業者数比率(%)
300人以上12,2230.28,301,69614.6
20029910,4540.22,524,2344.4
10019939,0020.75,291,7609.3
5099100,4281.96,864,82612.1
3049163,0743.16,133,93610.8
2029232,6014.45,530,9919.7
1019649,83612.28,768,30315.4
591,057,29319.86,940,74812.2
143,047,11057.16,516,32211.5
総数5,340,783100.056,872,826100.0
表2.従業者規模別事業所数および従業者数(2016年)
総務省・経済産業省:平成28年経済センサス-活動調査(確報)産業横断的集計結果の概要からのデータ(https://www.stat.go.jp/)

約534万もの事業所がありますが、その6割近くの約305万が従業者規模1~4人の個人事業所的な存在です。個人事業所がISO取得事業所の対象外とは一概に言えませんが、ISOマネジメントシステム規格の認証取得の必要性が高い事業所とは言えないでしょう。

50人以上の事業所を対象とすれば総数で約16万2千、ISOの取得件数7万6千は約47%に相当します。ISOマネジメントシステム規格の普及はまだまだ途上段階とも言えるでしょう。

ISO9001認証取得企業数の推移

表1に示したようにISO9001の認証取得企業数は2012年の49,713件から2019年は41,935件と約7年間で約16%減少しています。JABの統計によると2006年をピークにして約25%認証取得企業数は減少しています。

表1から環境のISO14001も減少傾向にあり、情報セキュリティは高止まりの傾向を示しています。食品安全はこれからも増加傾向を続けるでしょう。

ISO9001の認証取得企業数が減少傾向となっているのは、新規の登録数よりも途中で登録を解除、放棄する企業数が多いからです。では、なぜ登録を解除する企業が多いのでしょうか。

(社)日本能率協会が2018年に「ISOの取得・運用状況に関する調査報告書」を公開しています(https://www.jma.or.jp/)。そのなかで、ISOを登録解除した理由についての複数回答のアンケート調査結果は次のようになっています。

審査費用が高かったから 47.9%
あまりにも手間が掛かったから  43.8%
期待した効果が得られなかったから34.4%
経営に役立たないと判断したから15.6%
取引上の必要性がなくなったから12.5%
運用が定着しなかったから12.5%
自主適合宣言をすることにしたから12.5%
親会社などの認証の適用に含まれることになったから2.1%
その他28.1%
2018年(社)日本能率協会「ISOの取得・運用状況に関する調査報告書」アンケート調査結果まとめ

要約すると、コストパフォーマンスが悪いということが原因になっています。ISO9001の管理責任者や事務局の方などは、この点を肝に銘じて効果的で効率の良い品質マネジメントシステムを運用するよう心がけましょう。

世界各国のISO9001認証取得企業数

世界各国のISO9001認証取得状況はどうでしょうか。ISOによる世界各国の認証規格別、産業分野別認証数のデータ(2019年秋発表 2018年実績)から上位10カ国を表3に示します。

国名認証取得企業数構成比(%)
中国365,75142.1
イタリア90,40910.4
ドイツ47,9115.5
日本35,5844.1
スペイン28,7103.3
インド25,7523.0
イギリス16,0241.8
アメリカ14,6461.7
ブラジル13,5731.6
ポーランド11,8811.4
全世界総数867,802100.0
表3.ISO9001認証取得企業数-上位10カ国(2018年)
(https://isotc.iso.org/データから集計)

日本は35,584件で世界第4位です。ISOの公開データはJAB以外の日本の認証機関などのデータも含まれていますし、調査時の違いなどからJABのデータと合致することはありません。

特筆すべきは中国の件数ですが、日本を始め多くの企業が中国に進出していてメーカーとしての信頼性を担保するためにISO9001の取得を奨励していたことも、認証取得企業数が増えた理由の一つです。日本の約10倍の件数ですが、人口比でも妥当な数字と言えるでしょう。

反面、超大国アメリカの認証数が少ないのが目立ちます。アメリカファースト、アメリカ第一主義の考え方の影響によるものでしょうか。軍需や航空宇宙などアメリカ主導の規格には厳しい規格があることもあり、ISO9001に対しての評価、必要性はあまり高くないのかもしれません。

産業分野別のISO9001認証取得企業数

次に産業分野別のISO9001認証取得企業数を見てみましょう。表4に示しますが、取得企業数はJABが公開しているISOが規定した39分類の業種での数字で2020年6月時点のものです。その39の業種分類を、総務省が2013年に改訂告示した日本標準産業分類に区分けして取得企業数をまとめています。 また、各産業分類の総事業所数は、総務省統計局の「産業、経営組織別民営事業所数(2016年)」のもので、ISO9001取得比率をA/Bとして示しています。

表4.産業分野別ISO9001認証取得企業数と総事業所数との割合

製造業が最多、その次は?

産業分類別で取得企業が最も多いのが製造業で、取得企業総数40,887のうちの23,680、約58%を占めています。そのなかで上位を占めているのは「基礎金属、加工金属製品」、「電気的及び光学的装置」、「機械、装置」、「ゴム製品、プラスチック製品」で、この順位は2003年から17年間変わっていません。

製造業に次ぐのは、7,355件の建設業です。建設業は2006年がピークで約16,000件の企業が取得していましたが、この15年ほどで半減以下に減少しています。全産業のISO9001取得企業数が減少傾向にあるのは、建設業の状況が大きな影響を与えています。

建設業では、2000年に約2,000件だった取得件数が2006年には約16,000件まで急増しました。これは、2000年に国土交通省がISO9001取得を入札参加の必須条件とする試行を始めたことが主要因になっています。その後、その条件が緩和されたことや、無理して取得した企業などが撤退することになって取得件数も減少傾向に転じることになりました。

減少したとはいえ建設業は3位以下を大きく離して2位を堅持しています。製造業と建設業の2分野で取得企業全体の約76%を占めていますが、ISO9001はメーカーのための規格と考えられがちなことも、この実績によるものと言えるでしょう。

多くの業種の企業も認証取得

表4に示すように、製造業、建設業の他、多くの産業分野、業種でISO9001は認証取得されています。取得企業数を総事業所数で割った取得率(A/B)は、全産業平均で0.77%です。平均を上回っている業種は、製造業、建設業、学術研究・専門・技術サービス業、情報通信業、運輸・郵便業、電気・ガス・熱供給・水道業、鉱業・採石業です。

ISO9001は製品とサービスの品質に関する規格とも言えますが、種々のサービス業では取得率の低迷傾向が見られます。取得件数最下位の公務、公共行政もサービス業の性格が強い分野でしょう。市役所などで取得しているところはまだ数カ所しかありません。中央官庁などがISO9001を取得すれば行政はどう変わるでしょうか。ISO9001はどの産業分野においても、業務を効果的に変革する可能性を持っている規格です。

ISO9001の要求事項は多様な産業に適用可能

ISO9001規格の目的は、「良い製品やサービスを提供するためのシステムを管理する」ことで、結果的には「良い製品やサービスを提供する」ことにつながります。「良い製品やサービス」というのは、「顧客が要求する製品やサービス」のことで、ISO9001は「顧客満足の向上」を目指すことが大前提になっています。

ISO9001規格のなかで、品質マネジメントの7つの原則を次のように定めています。

  1. 顧客重視
  2. リーダーシップ
  3. 人々の積極的参加
  4. プロセスアプローチ
  5. 改善
  6. 客観的事実に基づく意思決定
  7. 関係性管理

この7つの原則に即してISO9001の種々の要求事項が規定されています。ここでは内容の説明は省きますが、この原則はすべての産業分野に適用できるもので、製造業に傾注した規格ではないことは明白です。すべての産業でお客様、顧客は存在し、その満足度を向上させるための規格がISO9001なのです。

いろいろな産業分野で品質を担当されている方は、ISO9001を取得する可能性を検討してみるのも良いでしょう。様々な分野で認証登録審査に関わっている審査機関や経験豊富なコンサルタント会社などに相談してみることをお薦めします。

まとめ

ISO9001は品質マネジメントの規格ということもあって、製造業向けの規格と思われがちです。実際、認証取得している企業は全体の6割弱が製造業で占められています。ただ、ISO9001が要求する事項は顧客の満足度を向上させることが主旨で、製造業に限らず全産業に共通する事項です。

ISO9001の認証件数は減少傾向にありますが、主因は費用対効果のパフォーマンスに期待を持てないと判断する企業が多いことにあります。ISO9001の管理責任者や事務局などの方は、この内容をよく確認してより効果的なISO9001の運用を検討するべきでしょう。

製造業や建設業など、ISO9001の認証の多くを取得している業界以外の方たちも、ISO9001の目指すところ、ISO9001の本質を確認して、ISO9001の導入を検討されてはいかがでしょうか。

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この記事を書いたライター
hikaruta

ISO9001:94年版での認証取得に関わって以来、ISO14001や医療機器品質のISO13485の認証取得・運用に深く携わり、ISOに翻弄、鍛えられたビジネスライフを経験。一線を退き、反省なども込めてISOを見つめ直しています。

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