ISO9001:品質マニュアル作成のポイント

ISO9001:品質マニュアル作成のポイント ISO9001

品質マニュアルはISO9001のマネジメントシステムを運用するうえで、組織にとっての決まりごとなどを取りまとめた重要な文書です。しかし、ISO9001:2015年版では品質マニュアルについての要求事項がなくなり、対応に悩んだ組織も多かったことでしょう。

ただ、やはり品質マニュアルはISO9001の運用には欠かせないものなので、ほとんどの組織は品質マニュアルの改訂などをして活用していることと思います。ここでは、わかりやすく有用な品質マニュアルを作成することをテーマとして、次のことを主に解説します。

  • ISO9001規格における品質マニュアルの位置づけ
  • 品質マニュアルの主要な項目
  • 品質マニュアルの平易でわかりやすい書き方

品質マニュアルの制定や改訂に取り組んでいる人や悩んでいる人などに、参考にしていただきたいことを中心にまとめています。

ISO9001の運用に品質マニュアルは不要なのか?

ISO9001が2015年版に改訂されたときに、要求事項から品質マニュアルの文書化が無くなりました。ただ、このことがISO9001では品質マニュアルが不要だということにはつながりません。

ISO9001を運用するうえで、品質マニュアルは組織にとって大きな役割を果たしています。まず、ISO9001規格が品質マニュアルに求めていることや、組織での品質マニュアルの活用、役割などについてみてみましょう。

ISO9001規格は品質マニュアルを不要とはしていない

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2015年版で「品質マニュアル」に関する明確な要求事項が無くなったことは確かなことです。ただ、規格の4.4.2項で、「プロセスの運用を支援するための必要な文書化した情報の維持」することを要求しています。個別のプロセスの運用については、個別の手順書のような文書が必要になるでしょう。しかし、さまざまなプロセスの運用を品質マネジメントシステムのもとで支援する文書と言えば「品質マニュアル」の他にはないでしょう。

ISO9001に対応する用語規格となるISO9000:2015では「品質マニュアル」を「組織の品質マネジメントシステムについての(for-を確立するための-)仕様書」と定義しています。また、ISO9001:2015の附属書A.1では、「文書化された情報」のなかに「品質マニュアル」が含まれていると明記しています。これらのことから、ISO9001:2015では決して「品質マニュアル」を不要としているわけではないことがわかります。

では、なぜISO9001:2015規格の本文に「品質マニュアル」という個別の呼称が用いられないのでしょうか。その理由の一つに、多くの組織が定める品質マニュアルの形式化、形骸化に対しての警鐘があるのではないでしょうか。つまり多くの品質マニュアルが規格の構成や文言をそのままコピーしたようなマニュアルになってしまっていることに対しての是正の意味が含まれているのではないでしょうか。その組織に適した本来の品質マニュアル、役に立つ品質マニュアルをISOは求めていると考えても良いでしょう。

品質マニュアルの組織での役割

品質マニュアルは誰のためのものでしょう。認証審査登録機関の審査員のために用意するものではありません。品質マニュアルはその組織に従事する人、全員のためのものです。ですから、それら従業員の人たちに組織の品質マネジメントシステムがどのようになっているのかを良く理解してもらえるように解りやすいものでなければなりません。

ところが、ISO9001の規格条文などにこだわり過ぎて多くの品質マニュアルは次のような傾向があって、従業員誰もが理解できるマニュアルとは程遠いものになっているのが実情です。

  • 実際の組織の活動が適切に示されていない。
  • 通常では使用していない難解な言葉で書かれている。

品質マニュアルが組織の従業員のためにあることを考えると、品質マニュアルはより具体的に組織の活動を表わすこと、より平易な普段従業員が使用している解りやすい言葉などで表現することが、まず求められることです。解りやすい品質マニュアルにすることで、従業員や内部監査員などの教育の場などで有用な役割を果たすことはもちろんですが、何よりも品質マネジメントシステムを全社的に運用、推進していくうえでバイブル的な役割を果たすことになるでしょう。

品質マニュアルの構成と項目のポイント

ISOなどの国際規格やJIS規格などの国内技術規格などはその構成などの要件が特別な規格で定められています。例えばJISであれば、JIS Z8301(規格票の様式及び作成方法)で様式や構成要件などが定められています。まえがきや序文、適用範囲、引用規格、用語および定義、附属書、参考文献などの他、文章の書き方や用字、用語、記述符号などについてまで幅広く規定されています。

このような規格の規定に沿って作成された品質マニュアルも見受けられますが、品質マニュアルはその組織の従業員のためのものですから、堅苦しくなく解りやすいマニュアルが望まれます。適用範囲は明確にしなければなりませんが、用語や定義は必要であればその項目のなかで組織内に通用する言葉で表現するなど、規格の規定にはとらわれない品質マニュアルが良いでしょう。

ISO9001の要求事項で組織が対応しなければならない項目について、その運用方法などに重点を置いての品質マニュアル作成が望まれます。また、組織変更や規格の改訂などで品質マニュアルの内容について変更を生じたときには、変更来歴や改訂来歴などで事細かく記載しておくことをおすすめします。

品質マニュアルで定める主要な項目

ISO9001の要求事項に対応して品質マニュアルで定めるべき主要な項目は以下のようなものになるでしょう。

  • 適用範囲:組織のなかでISO9001規格が適用される範囲や、規格の要求事項のなかで適用除外とする項目などを明確にします。
  • 組織の状況:顧客などの利害関係者を含め、組織内の各部門の活動を「品質マネジメントシステム体系図」あるいは「組織図」などで表すと良いでしょう。
  • リーダーシップ:品質方針の周知と組織各部門の役割、責任と権限を明確にします。主要業務の責任と権限を表で示すのが解りやすいでしょう。
  • 計画:品質目標とそれを達成するための計画策定のルールなどを示します。
  • 支援(品質目標達成のためのサポート)品質目標を達成するためのサポートとなる要員や設備などの資源、その要因の力量や認識などについての評価ルールなどを定めます。
  • 運用:品質目標達成のための行動、日々の業務の運用についての計画や管理のルールを定めます。組織によって業務は多様なので、規格から該当する部分についてルール化することが重要です。
  • パフォーマンス評価:活動結果の評価、分析を行なうルールを定めます。内部監査やマネジメントレビューも重要な実施項目です。
  • 改善:継続的改善の仕組みや、不適合、是正措置などの不具合再発防止対策のルールを定めます。

必要な項目のみを簡素化することがポイント

品質マニュアルに必要な項目は、前項に示したものが主要なものになります。どのような業界の会社、組織にも当てはまる項目ですが、そのなかでも業種によっては関係のない事項も含まれています。規格の要求事項をベースにして品質マニュアルを作成すると、業務の実態には無いルールや合致しないルール、実際には使用されない文書などが出来上がってしまいます。

要求事項を組織の業務に合致している部分にそぎ落として簡素化することが重要なポイントです。品質マニュアルで読んでも解らない部分、訳が分からないような部分があれば、それは不要な部分とも言えるでしょう。

品質マニュアルの書き方で留意するポイント

品質マニュアルの構成や必要な項目をシンプルに簡素化することは重要ですが、解りやすい品質マニュアルにするにはその内容の書き方にも留意するポイントがあります。それは、難しい言葉ではなく平易で解りやすい言葉を使うことです。

品質マニュアルを読む人の多くは、一般の従業員です。従業員の人たちにより良く理解してもらうために、簡素な言葉、平易な言葉づかいで解りやすい文章で表現するようにしましょう。

平易な解りやすい言葉の使い方

(財)日本規格協会がISOと連携して「規格の書き方-規格作成者のための秘訣」という冊子を発行しています(https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/dev/md_347.pdf)。

そのなかで、平易な言葉の使い方として次のようなポイントをあげていますので、参考にすると良いでしょう。

  • 主旨を明確にする。声に出して読んで確かめてみること。
  • 読み手の立場になって作成する。
  • 一文を短く保つ。
  • 1つの考えは1つの文にまとめる。
  • 必要でない単語は省く。
  • 簡潔にし、短くて簡素な単語を使う。
  • 可能な限り日常的な言葉を用い、専門用語を減らす。
  • 要点は肯定的に表現する。
  • 可能な限り能動態にする。
  • 可能ならリスト、箇条書きにする。
  • 句読点を注意深く用いる。
  • ピリオドをより多く用いて、コンマと括弧は少なめにする。
  • 同じ概念には同じ用語を使う。類義語は使わない。

言葉の使い方は慣れないと難しいことですが、要は読む人の気持ちになって解りやすく、いつも組織で使っている簡単で易しい言葉で表現することが大切です。ネットのサイトでは製造業や商社など各種の企業などの品質マニュアルのサンプルなどが公開されています。品質マニュアルを作成する際、参考にすることはおすすめしますが、くれぐれも自身の組織の言葉で組織の活動内容などを表現するようにしましょう。

まとめ

品質マニュアルの文書化はISO9001の要求事項には含まれていませんが、ISO9001の品質マネジメントシステムを運営していくうえでは欠かせない文書です。目標設定やその達成のための計画、運用、評価、継続的改善の仕組みなど、品質マネジメントシステムを運用していくためのルールなどが定められています。

ところが、ISO規格の要求事項や規格条文、用語などをそのまま使った解りにくい品質マニュアルが多いのも事実です。品質マニュアルはその組織で働く従業員たちのためのものですから、組織で普段使っている簡単で易しい言葉で解りやすく表現することが大切なことです。

品質マニュアルで規定すべき要求事項、必要な項目のみに簡素化するポイント、解りやすい平易な言葉での書き方などについてまとめました。品質マニュアルを作成、あるいは改訂しようと検討している方にはぜひ参考にしていただきたいと思います。

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この記事を書いたライター
hikaruta

ISO9001:94年版での認証取得に関わって以来、ISO14001や医療機器品質のISO13485の認証取得・運用に深く携わり、ISOに翻弄、鍛えられたビジネスライフを経験。一線を退き、反省なども込めてISOを見つめ直しています。

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