ISO規格で求めるトップマネジメントの責任とは何か?規格要求事項をもとに徹底解説

ISO規格で求めるトップマネジメントの責任とは何か?規格要求事項をもとに徹底解説 ISO9001

ISO規格最新版においては、トップマネジメントの責任としての規格要求事項があります。ISO9001、ISO14001は当然ですが、ISO27001やISO45001も同様にトップマネジメントの責任としてリーダーシップ及びコミットメントの規格が明確になっています。

それではなぜ、トップマネジメントに対する規格要求事項が存在しているのでしょうか。ISOを取得し導入後の運用段階でトップマネジメントの関与が薄いと、ISO活動と経営管理が別運用となってしまい、結果的にISO活動が無駄なものになってしまいます。ISO活動と経営管理がしっかりと融合することでISOが求めているマネジメントシステムの効果的運用が成り立つことから、規格要求事項のなかでトップマネジメントのISO活動への関与を明確にしているのです。トップマネジメントの規格要求事項をしっかりと認識するために、品質マニュアルに要求事項を記載しておくとよいでしょう。

ISO活動に対してトップマネジメントの関与が薄くなるとどのようなことが生じるかについては、関連記事【ISO離れはなぜ起きるのか?原因と対策を徹底解説】でまとめていますので参考にしてください。

この記事では、ISOで求めているトップマネジメントの責任について、ISO9001規格要求事項をベースにして以下の項目にそって概要をまとめています。

  • トップマネジメントの責任とは?
  • リーダーシップとコミットメントの実証項目

なお、ISO14001、ISO27001及びISO45001についても、ほぼ同様の規格要求事項となっています。

ISO活動でトップマネジメントの関与をどのように繋げるべきかを悩んでいる経営層、品質管理責任者あるいはISO事務局の方はぜひ参考にしてください。

ISO定期審査や再認証審査では、トップマネジメントインタビューで必ずヒアリングされる項目ですので、しっかりと理解しておくことが大切です。トップマネジメントのインタビューでどのようなことがヒアリングされるか不安のある経営者は、サポートとして顧問契約しているコンサルタントやネット上でコンサルタント実施を提案しているコンサルティング企業に相談し、認証登録機関の審査員から質問される事項を確認したうえで、事前に回答の準備をしておくとよいでしょう。

トップマネジメントの責任とは?

組織のトップ

それではまず、トップマネジメントとは誰のことを指すのでしょうか?トップマネジメントとは、組織のなかで最高位として指揮し、管理する個人あるいはグループのことを指します。一般的には、社長や会長などの経営者がトップマネジメントになりますが、役員全員での合議制にしている会社では全役員の経営層がトップマネジメントとして活動することになります。

それでは、ISO規格要求事項は、そのトップマネジメントに対してどのような責任を負うことを求めているのでしょうか。

ISO規格では、トップマネジメントに対してマネジメントシステムに関するリーダーシップとコミットメントを実証することを求めています。リーダーシップとは、方針、目的及び目標のベクトルを一致させ、組織に関わる人々が目標達成に向けて積極的に参画する状態を作り出すことをいいます。そして、コミットメントとは関与することをいいます。よって、リーダーシップとコミットメントを実証するというのは、マネジメントシステム活動においてリーダーシップを発揮している状態と関与している状態を、証拠などをもって示すことができるようにしておくことを求めているのです。

ISO審査のときには、トップインタビューでは品質管理責任者などが経営者の代わりに対応することはできず、必ず経営者が受審し、リーダーシップとコミットメントの実現について自身で答え、規格要求を満足していることを証明する必要があります。

それでは、リーダーシップとコミットメントの実証項目としてどのようなものがあるのでしょうか。

次の項では、実証項目について具体的に見ていきます。

リーダーシップとコミットメントの実証項目

トップマネジメントでの経営判断

各ISOで、リーダーシップとコミットメントの実証項目数に変動はありますが、ISO9001で求められるリーダーシップとコミットメントの実証項目内容のほとんどは他のISOとリンクしているので、これからISO9001規格を中心に見ていきます。

説明責任(accountability・アカウンタビリティー)

ISO9001規格では、品質マネジメントシステムの有効性に対しての説明責任を負うことを求めています。トップマネジメントは、組織活動に対して自ら決定し行動することに責任をもち、品質マネジメントシステムの有効性に関して最終的な責任を負わなければなりません。そして、目的や目標などに対して、トップマネジメントが意図した結果が得られていることを説明する責任があります。なお、有効性とは、計画した活動を実施し、計画した結果を達成した程度のことをいうので、達成或いは未達成の結果いずれの場合でも、従業員などのせいではなく、トップマネジメントの責任として全てを受け入れ、次の活動方針に反映していく必要があります。

方針と目標の確立

トップマネジメントは、顧客要求などをベースにしながら、組織の置かれている状況や戦略的な方向性と両立する品質方針と品質目標の確立を、確実に実現できる状態にもっていかなければなりません。なお、組織の置かれている状況とは、組織の提供する製品やサービスに対する内部・外部の課題であり、戦略的な方向性とは中長期的な展望です。

なお、ISO規格要求で求められる目標及び管理については、関連記事のISO規格要求で求められる目標及びその管理について具体事例を交えて解説で詳しく説明していますので、そちらを参考にしてください。

事業プロセスへの統合

事業プロセスへの統合_プロセスアプローチとリスクに基づく考え方の利用促進

トップマネジメントには、組織の事業プロセスに対して品質マネジメントシステム要求事項の統合を確実にするように求めています。組織の根幹となる事業活動に、品質マネジメントシステムを組込み、お互いがかい離することなく運用できるようにすることが大切であることを述べています。ISO活動が組織の活動として定着するか否かについては、トップマネジメントの責任である、この事業プロセスとISO活動の統合成否が大きく影響してきます。

プロセスアプローチとリスクに基づく考え方の利用促進

トップマネジメントは、リスクに基づく考え方を含み、プロセスアプローチによる管理が目標及び計画を達成するために有効な管理方法であることを、組織の人々に認識させたうえで、その管理方法を促進し進めていく必要があります。この要求事項は、プロセスアプローチを推奨しているISO9001のみとなっています。

リスクに基づく考え方については、関連記事のISO9001活動でのリスク及び機会への取り組みとは?ポイントを解説で説明していますので、そちらを参考にしてください。

また、プロセスとプロセスアプローチについては、以下の関連記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

ISO9001活動で求められるプロセスとは?定義と具体的事例を解説】

【ISO9001活動でプロセスアプローチを適切に運用する方法を徹底解説】

必要資源の確保

必要資源の確保_要求事項適合の重要性伝達

トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの運用に必要な資源を、それぞれの部門に割り当て利用できるようにしなければなりません。必要資源とは、人材、設備、作業環境、知識などがあります。トップマネジメントとしては、品質マネジメントシステムを適切に運用するために、十分な資源を確保し提供する必要があります。

要求事項適合の重要性伝達

トップマネジメントは、品質マネジメントが有効に機能するためには品質マネジメントシステムの要求事項に適合することが重要であることを組織内に伝達する必要があります。つまり、経営者は、組織の立てた目標を達成しながら安定した経営体制に導くためには、ISO規格要求事項をもとに構築した組織のルールを順守し業務を遂行することが大切であることを従業員に伝え認識させなければなりません。

意図した結果の達成

意図した結果の達成_人々の積極的参加の支援

トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの意図した結果の現状を把握し、達成されていなければ達成に向けて活動を遂行することを指示しなければなりません。トップマネジメントとしては、組織の目標及び各部署の目標達成状況を定期に把握しながら、未達成になりそうな場合にはその後の活動見直しで達成可能か、或いは目標自体の見直しが必要かを判断し、その後の方向性を示す必要があります。

人々の積極的参加の支援

トップマネジメントは、品質マネジメントシステムが有効に機能するためには組織の品質活動に関わるすべての人々の積極的な参加が大切であることを伝え、その人々を指揮し、支援していくことが大切です。経営者は、品質マネジメントシステムが有効に機能し組織目標を達成することで、組織の経営が安定し利益を確保することができ、社員を含め品質マネジメントシステムに関わる関係者に見返りがあることを認識させ、組織の品質活動に積極的に参加するように促していきます。

改善の促進

改善の促進_管理層役割の支援

トップマネジメントは、組織全体に対して改善に取り組むよう、各種会議体やマネジメントレビューなどを通して指示し、改善活動を促進していきます。また、内部監査の結果報告内容を判断材料とし、不適合が発生していればその是正処置と水平展開をしっかりと行うことで改善に繋がることを社員に認識させ、改善意識を植え付けていく必要があります。

トップマネジメントが関与するマネジメントレビューについては、関連記事のISO9001要求事項で求められるマネジメントレビューとは?ポイントを解説で詳しくまとめていますので、参考にしてください。

管理層役割の支援

トップマネジメントは、組織内の管理層が自己の責任範囲内において、品質マネジメントシステムの要求事項を実施し、目標を達成するためにリーダーシップを発揮し役割を果たすことに対して支援する必要があります。管理層がリーダーシップ性を発揮するために、トップマネジメントは組織内で管理層が動きやすく力を発揮しやすい環境を整え、目標達成に貢献できる土俵づくりを行っていくことが大切です。

なお、品質マネジメントシステム活動が有効に機能するためには、トップマネジメントからの指示を受けて品質マネジメントシステムの中心的存在として活動する品質管理責任者(QMR)の立ち位置が重要となります。組織の品質マネジメントシステムを有効なものにするためには、トップマネジメントは品質管理責任者をしっかりと支えていくことが重要です。

品質管理責任者の具体的役割については、関連記事のISO活動を円滑に進めるための品質管理責任者が果たすべき役割についてISO9001を中心に解説で詳しくまとめていますので、ぜひ確認してください。

トップマネジメントがになうリーダーシップとコミットメントの実証項目について図1に示しますので、関係性を理解する参考としてください。

図1.リーダーシップとコミットメントの実証項目
図1.リーダーシップとコミットメントの実証項目

この記事では、ISO9001をベースにトップマネジメントの責任について解説してきましたが、ISO14001、ISO27001、ISO45001などの認証を取得するISOでは全て、トップマネジメントの責任としてリーダーシップとコミットメントの実証項目は要求されています。ぜひ、この記事で述べたリーダーシップとコミットメントの実証項目を参考にし、トップマネジメントの役割を明確にしたうえで、マネジメントシステム活動に積極に参加する体制を構築してください。

まとめ

この記事では、ISO9001規格要求事項をベースにして、ISOで求めるトップマネジメントの責任について解説してきました。特に、トップマネジメントに求められるリーダーシップとコミットメントの実証項目について具体的に説明しています。

ISO活動に対してトップマネジメントの関与が薄いと、マネジメントシステムが効率よく運用されません。ISO活動を有効なものとするためには、トップマネジメントにはISO規格のなかのリーダーシップとコミットメントの実証項目を実現してもらうことが大切です。トップマネジメントにISO規格要求事項で求められている責任を確実に認識してもらい、しっかりと実現してもらうことで、マネジメントシステムが有効に働き、組織としての有益な結果に繋がります。

トップマネジメントと社員がISO規格をしっかりと理解し、その要求に基づいた活動を遂行することで有効なマネジメントシステム体制が整い、つねに利益を生む健全な経営管理体制が構築されます。組織にとってISO活動を有効なものとするために、ISO規格のトップマネジメントの責任について、マネジメントシステム活動に関与するすべての人々も確実に理解し受け入れ、トップマネジメントを中心軸としたマネジメントシステム体制を確立してください。

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この記事を書いたライター
小一郎秀長

ISO9001(1994年度版)導入に続きISO14001(1996年度版)導入において、ISO事務局委員長として会社の認証取得に貢献。その後のISO改訂時には、後輩育成のためにISO事務局へのアドバイザーとしてサポート。
現在はISO9001/IATF16949の維持管理に従事中。
戦国時代をこよなく愛し、尊敬するのは豊臣秀長。連休は城址廻りでリフレッシュ。

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