ISO9001が求める予防処置とは?規格要求事項をもとに予防処置の在り方を考える

ISO9001が求める予防処置とは?規格要求事項をもとに予防処置の在り方を考える ISO9001

ISO9001規格において、2008年度版までは予防処置の要求事項がありました。不適合に対して実施した是正処置を踏まえ、類似のプロセスや製品に対して予防する必要があるかを判断し、予防処置として記録を残す要求事項となっていました。

この予防処置の要求事項が2015年度版では削除されています。予防処置の実施が削除されたことから、2008年度版から2015年度版への移行の際に安心した組織が多いのではないでしょうか。

それでは、予防処置が規格要求事項からなくなったからといって、予防処置を実施しないでよいのでしょうか。けっしてそうではありません。

2015年度版では、予防処置は品質マネジメントシステム(QMS)全体で実施する必要があるとの考えから、大きく形を変えました。予防処置の言葉がないことから分かりにくいですが、いくつかの規格要求事項に分散し予防処置を実施することを求めています。これは、環境マネジメントシステム(EMS)の規格要求事項を定めるISO14001の最新版でも同じ考え方となっています。

この記事では、組織として実施すべき予防処置について、ISO9001規格要求事項で求めている実施事項を踏まえ、以下について概要としてまとめています。

  • ISO9001:2015年度版で予防処置要求はなぜなくなったのか?
  • ISO9001規格で予防処置につながる要求事項とは?

ISO9001認証を取得し予防処置を実施したいと考えているが、どのように展開すべきか悩んでいる品質管理責任者やISO事務局の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

ISO9001:2015年度版で予防処置要求はなぜなくなったのか?

なぜか?と悩む男性

先に述べましたが、ISO9001:2015年度版の改訂では、規格要求事項のなかから予防処置の要求がなくなりました。2008年度版までは、是正処置と予防処置との形で規格要求事項のなかで明確に実施することが求められていました。それではなぜ予防処置の要求がなくなったのでしょうか。

2008年度版までは、不適合に対する是正処置対応のあとに類似製品やサービスに展開するために予防処置を実施し処置結果を記録に残すことを求めていました。よって、是正処置と似通った予防処置フォーマットを作成し運用する形で、不適合対象製品やサービス以外のどの対象分に展開したとのやり方で予防処置を実施する企業が多くありました。しかし、是正処置はあくまでも不適合の発生した製品やサービスに対する根本原因とその原因に対する対策を検討した結果であり、単純に他のものに展開したとしても、他の製品やサービスで不適合を抑えられるとは限りません。とはいえ、規格要求事項では予防処置の実施が必須であることから、処置手順の文書を作成し形だけの予防処置が記録として残される状況となってきました。 不適合が発生したということは現行の品質マネジメントシステムの仕組み自体に問題がある可能性が高く、予防処置として是正処置を単純に展開するだけでなく、品質マネジメントシステム自体に不備がなかったかを分析評価し必要に応じて見直すことが必要です。そこで2015年度版の改訂では、是正処置の水平展開としての予防処置は品質マネジメントシステム見直しのなかで実行する形になりました。

それでは、どの規格要求事項が予防処置につながる活動になるのでしょうか?

これから、予防処置につながる規格要求事項を具体的にみていきます。

ISO9001規格で予防処置につながる要求事項とは?

ドキュメント

ISO9001:2015年度版では、予防処置との具体的な言葉は出てきませんが、予防処置の実施は求めています。予防処置の全体の流れとしては、次のような考え方となります。不適合が発生したら是正処置を行い、並行して類似不適合の発生可能性を洗い出し、是正処置及び水平展開した結果のレビューを実施します。レビューした結果を分析したうえで、品質マネジメントシステムに対しての影響度合いのリスク評価を行い、影響度が高い内容であれば、改善計画に盛り込み活動していく形になります。

それでは、ISO9001規格では予防処置がどのような繋がりとなって活動されるのか、具体的にみていきましょう。

不適合及び是正処置

不適合及び是正処置

10.2項の不適合及び是正処置の要求項番内の10.2.1b)-3)項で、類似の不適合の有無と不適合が発生する可能性を明確にすることを求めています。つまり、不適合の原因を追求し是正処置を取るだけでは不十分で、類似の不適合が発生していないか、あるいは発生する可能性がないかをすぐに調査し、類似の対象が見つかった場合には不適合の対象となった製品やサービスと同じく、是正処置を適用し水平展開することを求めているのです。不適合が発生した製品やサービスに対してだけでなく、類似対象においてこれから発生しうる可能性のある不適合を未然に防ぐための再発防止活動が、予防処置ということになります。

また10.2.1d)項では、とった全ての是正処置の有効性をレビューすることを求めています。是正処置を実施し適切な期間が経過したあとに、処置内容が有効であり計画した結果を達成しているか、つまりそれ以降不適合が再発していないかをレビューします。この項番では、とった全ての是正処置に対しての有効性レビューを指示していますので、不適合対象の是正処置の有効性レビューだけでなく、類似で是正処置を水平展開した製品やサービスにおいても有効であったかをレビューする必要があります。不適合対象及び類似の対象全てにおいて再発していなければ、是正処置がようやく有効であったと判断できます。

10.2.1e)項では、是正処置の有効性をレビューした後に、今回の不適合の波及影響が品質マネジメントシステムに大きく関わる場合、つまりリスク影響が高いと判断する場合には、計画策定段階で決定したリスクと機会を更新することも求めています。6.1項で、組織内外で不適合が発生しないようにリスクと機会を洗い出し取り組んできたにもかかわらず是正処置を行うような不適合が発生したので、その取り組みが有効であったか、或いは今まで気づかなかったリスク及び機会があるのかを再分析し、必要ならばそれを更新しなければなりません。

10.2.1f)項では、是正処置で不適合を除去し、再発を防止するための予防処置を実施するために、組織で品質マネジメントシステムの変更が必要と判断した場合には、変更に着手することを求めています。是正処置として業務手順書内容を変更し再教育を実施するレベルで有効性が得られる不適合の場合には組織全体への影響は少ないことから、品質マネジメントシステム変更を行うところまではいきません。一方で、ある部署で不適合が発生し、類似の調査を進めると同様の不適合発生可能性が複数の部署にあることが分かった場合には、是正処置の水平展開を行うだけでは不十分で、品質マネジメントシステムの在り方に問題がある可能性があります。そのような場合には、例えば、組織で決められた業務手順書の作成方法では作業担当者が理解しにくい、組織全体で実施する教育やOJTのやり方では習得に時間がかかるなどの問題が内在している可能性が高く、組織の品質マネジメントシステムを今一度見直し、改善に向けて変更をかけていく必要があります。

このような形で、予防処置のことは10.2項の不適合及び是正処置の要求事項のなかでしっかりと述べられているのです。

不適合及び是正処置については、関連記事 ISO9001で求められる是正処置とは?規格要求事項に沿って解説 で詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください。

分析及び評価

分析及び評価

9.1.3項は分析及び評価の項番となっており、監視及び測定からの適切なデータや情報を分析し、評価することを求めています。評価する事項としては、a)項で製品及びサービスの適合、d)項で計画が効果的に実施されたかどうか、そしてe)項ではリスク及び機会への取り組みの有効性があります。会社として提供する製品やサービスが顧客要求をつねに満足していれば、製品やサービスに対して計画していた目標値もクリアでき、結果的にリスク及び機会への取り組みは有効であったとの判断になります。しかし、製品やサービスで不適合が発生すると、期初に計画した目標値を達成できなくなる可能性が高く、結果としてリスク及び機会の分析が甘かったとの見解に繋がることが想定されます。発生した不適合内容の分析と評価が不十分であると有効な是正処置に繋がらず、あわせて類似対象に水平展開した予防処置も不十分となってしまうため、正しい改善に結びつきません。

よって、予防処置としてリスク及び機会まで有効に繋げるためには、9.1.3項の分析及び評価の要求事項を品質マネジメントシステム活動のなかにしっかりと取り込むことが大切です。

是正処置及び水平展開内容については内部監査で確認することになっているので、内部監査のなかで第3者的にチェックすれば有効性を確認できるかと思います。また、認証登録機関の定期審査や再認証審査でも不適合の是正処置は確認されることが多いので、審査員の是正処置に対する指摘事項などがあれば参考にするのも効果的です。

マネジメントレビュー

マネジメントレビュー

9.3項はマネジメントレビューの要求事項となっており、9.3.2項はマネジメントレビューへのインプット事項が示されています。インプット事項として予防処置に繋がる項目は、c)-4)項の不適合及び是正処置、5)項の監視及び測定の結果、そしてe)項のリスク及び機会への取り組みの有効性です。不適合と是正処置及び水平展開した処置内容、それらを監視し有効性確認を行った結果、そしてそれら結果をもとに評価したうえでリスク及び機会への取り組み活動の有効性確認を行った結果を、トップマネジメント(経営層)にインプットし次期の活動方針への判断材料とします。マネジメントレビューへのインプット情報をもとに、是正処置を含めた活動が次期の品質方針、目標に反映され改善活動計画に展開されると、立派な予防処置活動となります。

マネジメントレビューの詳細については、関連記事 ISO9001要求事項で求められるマネジメントレビューとは?ポイントを解説 でまとめていますので、ぜひご覧ください。

リスク及び機会の取り組み

リスク及び機会の取り組み

製品やサービスで不適合が発生すると、前述した要求事項を経て、計画段階の6.1項のリスク及び機会への取り組みに戻ります。

6.1.1項では、取り組む必要があるリスク及び機会を決定し、改善目標を立て計画しなければならないとしており、c)項では望ましくない影響を防止又は低減させること、d)項では改善を達成することと示されています。不適合の発生は確実に望ましくない影響であり、それを防止することをリスク及び機会の項目としてとらえ改善に値するとトップマネジメントが判断すれば、改善活動計画を策定し活動を開始することになります。この改善活動が着実に実行されれば、不適合の発生した事象だけでなく類似対象の不適合発生を防止できるため、これが予防処置に繋がる活動となり得ます。

ISO9001でのリスク及び機会への取組みについては、関連記事 ISO9001活動でのリスク及び機会への取り組みとは?ポイントを解説 で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

予防処置は、組織の品質マネジメントシステムを大きく改善する重要な活動で、下記のDo(運用)→Check/Action(評価/改善)→Action(改善)→Plan(計画)の流れになります。

  • Do(不適合の発生、修正処置或いは暫定処置)
  • Check/Action(原因分析から是正処置、水平展開、有効性レビュー)
  • Action(②情報のマネジメントレビューへのインプット展開、改善判断)
  • Plan(リスク及び機会への取り組み反映、品質改善目標及び計画への展開)

予防処置の流れを図1に示します。

図1 予防処置とは
図1.予防処置とは

ISO9001規格が2015年版に切り替わり予防処置がなくなったことにより、どのような活動として切り替えていけばよいかまだ展開できていない企業の方は、コンサルタントにその旨伝えコンサルティング依頼し相談するとよいでしょう。

ISO認証取得支援のコンサルタントの内容、選び方など詳細はこちらをご参考ください。【ISOのコンサル会社がサポートする内容は?コンサルタントを活用してISOを取得・運用する背景

まとめ

この記事では、ISO9001:2015年度版では予防処置の言葉はなくなったものの、実際には品質マネジメントシステム活動の中で予防処置を実施することが求められており、組織として実施すべき予防処置について、ISO9001規格要求事項で求めている実施事項を踏まえ解説しました。

組織の様々な品質活動においては、4M(人、材料、装置、方法)変動要素が関わる限り、不適合の発生は大なり小なり必ず発生します。残念ながら不適合が発生した場合には、4Mの変動要素のどの部分が原因なのかを徹底的に調査し、原因が掴めればその変動要素に対する是正処置を取り、同様の4M変動要素を抱える工程に水平展開し全社の改善活動に繋げていくと、ISO9001が求める継続的改善に到達することができます。 予防処置は、品質マネジメントシステムを大きく改善できる活動であることを認識した上で、規格要求事項にそって活動展開し、大きな改善効果に繋げるようにしてください。

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この記事を書いたライター
小一郎秀長

ISO9001(1994年度版)導入に続きISO14001(1996年度版)導入において、ISO事務局委員長として会社の認証取得に貢献。その後のISO改訂時には、後輩育成のためにISO事務局へのアドバイザーとしてサポート。
現在はISO9001/IATF16949の維持管理に従事中。
戦国時代をこよなく愛し、尊敬するのは豊臣秀長。連休は城址廻りでリフレッシュ。

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