ISOを効果的に運用するためのポイントは?コロナ禍や緊急事態での対応も解説

ISOを効果的に運用するためのポイントは?コロナ禍や緊急事態での対応も解説 ISO9001

ISOの認証取得が達成されるとホッとして安心される人が多いと思います。でも実際に重要なのは取得したその後です。ISOを確実にかつ有効に運用していかなければなりません。認証機関による審査は、1年毎の定期審査、3年目には更新審査もあります。苦労して取得したISOを無駄にすることなく、効果的に運用するにはどうすれば良いのか、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

この記事では、ISO9001を中心にしてISOを効果的に運用するために重要なポイントは何かについて解説します。また、コロナ禍や緊急事態で運用する際に留意すべき要求事項についても説明を加えています。

ISO9001の運用に携わっている方や、ISOの効果的な運用に悩んでいる品質管理責任者や事務局の方、コロナ禍などでの運用を模索している方などに参考にしていただきたい内容をまとめています。

ISOの維持管理には効果的なQMSの運用が必要

quality control

ISO9001を取得してからの運用は、QMS(Quality Management System:品質マネジメントシステム)を維持管理することですが、如何にしてQMSを効果的に運用するかが重要です。

認証機関による定期審査や更新審査では、ISOの要求事項に対して組織の活動が適合していれば特に問題なく認証は継続されます。ただ、この「適合性」だけでなくQMSを改善して組織の収益などにつなげているかの「有効性」にも着目して審査されます。PDCAを回して継続的な改善を実現しているかの視点で認証機関から具体的な指摘があれば、適切な是正対応をして組織の改善につなげるようにしましょう。

実際にISOを運用するうえで何が課題なのかを調査した報告が(社)日本能率協会から示されています(ISO の取得・運用状況に関する調査報告書~ https://www.jma.or.jp/img/pdf-report/etc_2018-iso.pdf)。この報告書のなかのISO9001のみを取得している企業に対して行なった、運用するうえでの課題についての調査結果を表1に示します。

表1.ISOを運用するうえでの課題(ISO9001のみを取得している企業)
表1.ISOを運用するうえでの課題(ISO9001のみを取得している企業)※複数回答
引用元:(社)日本能率協会:ISO の取得・運用状況に関する調査報告書3.4項 

「マンネリ感、形骸化」や「実質的なマネジメントのレベルアップ」などの課題比率が高いのは、ISO9001の運用が「適合性」の維持管理に留まっているため、組織の改善につながる効果的な運用、つまり「有効性」を求めている結果とみて良いでしょう。また、そのために必要な課題が「内部監査のレベルアップ」や「一般社員、管理職層の理解促進」の比率の高さに表れています。ISOの維持管理、運用にはISOへの「適合性」だけでなく、「有効性」のための効果的なQMSの運用が必須と言えるでしょう。

QMSを効果的に運用するポイントは

では、効果的にQMSを運用するポイントは何でしょうか。ISOの活動はPDCAを回して常に改善を目指す「継続的改善」がベースです。そのなかで、個人レベルから組織全体にまでベクトルの合った活動にすることが重要です。以下に、具体的な活動、運用方法を示します。

PDCAサイクル

ISOのスリム化

ISO管理責任者や事務局、各部門のISO担当者などで、品質マニュアルや手順書類の徹底的な見直しをしましょう。認証取得時は審査にパスするためにISO9001規格を過剰に解釈して万全のマニュアルや手順書類を制定しがちです。QMSを運用していくなかで、不要なルールがあれば削除し、実作業と異なる使いづらい手順などがあれば改訂し、組織にとって運用しやすいスリムなシステムに再構築することが必須です。

具体的な目標展開

ISO9001では、組織が関連する機能、階層、プロセス毎に品質目標を確立することを規定しています(6.2.1)。組織全体の目標や部門別の目標、従業員各個人の目標をもう一度確認してみましょう。それぞれの目標がリンクされているものか、目標は測定可能で監視できるものかなどをチェックし、必要であれば修正などの更新をすることが重要です。組織全体の目標が個人レベルまでに落とし込まれ、全従業員が目的をもって具体的な目標を立てて活動することがISOの運用では望まれます。

ISOで求められる目標に関しては、関連記事としてISO規格要求で求められる目標及びその管理について具体事例を交えて解説で詳しく解説していますので参考にしてください。

内部監査の活用

内部監査

内部監査のレベルアップについては、ISOを運用するうえでの課題についての調査でも上位に位置付けられています。内部監査ではISOに対する適合性だけを確認するのではなく、QMSが有効に機能しているか、効果的に活用されているかを確認することが重要です。有効性に難点があれば改善することを指摘し、是正処置で有効性が確認されるまで見届けなければなりません。内部監査員にはISOや対象職場に関する高い知識が必要になります。対応できる内部監査員を養成することも組織の重要な課題です。内部監査の実施方法については、関連記事として適合性検査だけではダメ?ISO9001の内部監査を効果的に実施する方法も参考にしてください。

一般社員、管理職層の教育

ISO運用上の課題として上位にあげられるのが、一般社員や管理職層など従業員の理解促進です。この解決には教育しかありません。特にISOについての教育はいろいろな手段を講じて、継続的改善の必要性や手法を組織内に根付かせる必要があります。教育はISO教育の他、責任者認定教育や新入社員・新任者教育、設備・システム導入時教育、是正処置・再発防止教育、スキルアップ教育など多岐にわたります。組織外の認証機関やISOコンサルタント会社などのセミナーなどを利用するのも良いでしょう。教育訓練については、関連記事のISOが求めるスキルアップを実現するための教育訓練を徹底解説で詳細に解説していますので参考にしてください。

以上のような活動、運用方法の他、QCサークルや5S活動などの小集団活動を取入れて組織内を活性化するのも良いでしょう。また、具体的な運用例など豊富な経験を持つコンサルタント会社などへの相談もお勧めします。

組織の運用プロセスは8.1 運用の計画及び管理をベースに

組織独自の運用プロセス、例えば製造業とか建設業、サービス業などの運用プロセスは、ISO9001の8章「運用」に規定されています。この8章はISO9001のPDCAのDに相当する部分で、8.2項から8.7項に以下のような運用プロセスについての要求事項などが示されています。

8.2 製品及びサービスに関する要求事項
8.3 製品及びサービスの設計・開発
8.4 外部から提供されるプロセス,製品及びサービスの管理
8.5 製造及びサービス提供
8.6 製品及びサービスのリリース
8,7 不適合なアウトプットの管理

引用元:ISO9001(JIS Q9001:2015 8章)抜粋

これらの運用プロセスに対して8.1項でそれらの運用の計画とその管理を規定しています。8.1項では計画、管理するにあたって次の5項目を実施することを要求しています。

1.製品・サービスに関する要求事項を明確にすること

2.プロセスに関する基準、製品・サービスの合否判定の基準を設定すること

3.製品・サービスの要求事項を達成するために必要な資源を明確にすること

4.2の基準に従ったプロセスの管理を実施すること

5.運用プロセスの程度についての記録を明確にし、維持・保持すること。

引用元:ISO9001(JIS Q9001:2015 8.1項)参照

その他、変更の管理や外部委託したプロセスの管理についても言及しています。8.2項から8.7項にある設計・開発や購買プロセスなどの組織独自の運用のなかにもそれぞれに個別の要求事項はありますが、共通の要求事項としてこの5項目は確実に実施して運用しなければなりません。その運用のなかでも前項までに紹介した継続的改善につながる効果的なQMSの運用を心掛けるようにすべきでしょう。

コロナ禍や緊急事態での運用で留意すべき要求事項は

コロナ禍

コロナ禍でリモートワークや時差出勤など働き方にも大きな影響が出ています。認証機関の審査日程などにも影響がでて、調整が大変なところもあるでしょう。ただ、このような緊急事態であっても、QMSは確実に運用しなければなりません。

環境のISO14001では8.2項の「緊急事態への準備及び対応」とか、環境側面でも緊急事態を含めた抽出などが規定されています。しかし、ISO9001では特にそのような条項はありません。ここでは、緊急事態での運用で留意すべきISO9001の要求事項について紹介しましょう。要求事項やQMSを見直す機会はなかなかありませんが、緊急事態は見直しの絶好の機会です。また、緊急事態であっても、その運用は継続的改善につながる効果的なものとするように努力する必要があります。

ISO9001の要求事項については、関連記事としてISO9001の要求事項とは?規格の一覧とポイントを徹底解説で詳細に解説していますので参考にしてください。

4.1 組織及びその状況の理解

4.1項の「組織及びその状況の理解」では、組織の目的や戦略的な方向性に関連したQMSで定めた結果を達成するための組織の能力に影響を与えるような、外部及び内部の課題を明確にし、その課題に関する情報を監視し、レビューしなければならない、としています。

つまり、組織が達成しようとしていることに影響を与えるような組織内外の状況をよく把握しなさい、ということです。緊急事態の影響で、資材が予定通り納品されないとか、病欠の従業員が多くラインが停滞する、新規の受注が減少し売上が大幅に低下している、リモートワークのための機材が不足しているなど、さまざまな状況が確認できるでしょう。

課題の洗い出しには部署ごとで行なうルーチンのミーティングや組織内の部門長会議とか進捗会議など、あらゆる場を利用しましょう。現状の課題を把握できたら、それらに対する取組みを6.1項「リスク及び機会への取組み」で検討することになります。

4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解

4.2項の「利害関係者のニーズ及び期待の理解」では、組織のQMSに密接に関連する利害関係者を明確にし、その利害関係者の要求事項を明確にすること、さらにそれらに関する情報を監視し、レビューしなければならない、としています。

QMSに関連する利害関係者は、顧客や取引先、従業員などが主になりますが、緊急事態では周辺住民や行政機関など想定していなかった対象もあるかもしれません。それらの利害関係者の要求事項、つまりニーズと期待が緊急事態で変わったことはないか確認し理解する必要があります。その要求事項の変化などを4.1項と同様、6.1項「リスク及び機会への取組み」で検討することになります。

6.1 リスク及び機会への取組み

リスク

6章「計画」の6.1項「リスク及び機会への取組み」では、QMSの計画を策定するときに4.1項で明確にした組織内外の課題や、4.2項で明確にした利害関係者の要求事項を考慮して、取り組む必要があるリスクと機会を決定しなければならない、としています。

課題や要求事項のなかで解決しなければならないリスクは何か、活用すべき機会は何かを決定し、さらに、それらに対してどのように取組むのか計画を策定することを要求しています。緊急事態では機会(チャンス)よりもリスクのほうが圧倒的に多いことになるでしょうが、リスクを最低限に抑えて回避しプラス面に展開できるような計画が期待されます。ピンチはチャンス、よく考えてみましょう。

リスク及び機会への取組みについては、関連記事のISO9001活動でのリスクと機会への取り組みとは?ポイントを解説で具体的に解説していますので参考にしてください。

9.3 マネジメントレビュー

マネジメントレビューはあらかじめ定めた間隔で実施することが9.3項で定められています。認証機関による審査が年に1回はあることから、マネジメントレビューも年1回の開催としている会社なども多いことでしょう。規格では臨時や緊急にマネジメントレビューを行なうことには言及していませんが、マネジメントレビューのインプットにはQMSに関連する外部及び内部の課題の変化が含まれています。

コロナ禍のような緊急事態で、さまざまな課題や組織内外の要求事項への対応策、計画の修正や新たな計画策定などがあるでしょう。こんな緊急事態の時こそ、トップマネジメントからの発信も含めたマネジメントレビューを臨時開催して、組織内一丸となって対処するよう努力しましょう。

マネジメントレビューについては、関連記事のISO9001要求事項で求められるマネジメントレビューとは?ポイントを解説で説明していますので参考にしてください。

まとめ

ISOに基づくQMSの運用には、規格の要求事項などに対する適合性だけでなく、継続的改善をベースにして効果的に運用する有効性が重要です。効果的な運用をするためには、組織に適したスリムなQMSシステムに再構築することや、組織の目標が従業員個人レベルにまで落とし込まれた目標展開、内部監査の有効な活用、管理職層を含む従業員の各種教育などが重要なポイントになります。組織独自の運用プロセスについても、有効性を重視したQMSの運用が望まれます。コロナ禍などの緊急事態では、リスクに対する課題や要求事項に対処する必要があります。緊急事態に対応した計画をトップマネジメント以下一丸となって推進する努力が必要です。QMSを効果的に運用するためのポイントを押さえての活動で、組織の改善、発展の一助となるよう努めましょう。

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この記事を書いたライター
hikaruta

ISO9001:94年版での認証取得に関わって以来、ISO14001や医療機器品質のISO13485の認証取得・運用に深く携わり、ISOに翻弄、鍛えられたビジネスライフを経験。一線を退き、反省なども込めてISOを見つめ直しています。

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