ISO認証機関による指摘は改善の種~QMSに有効に活かすには?

認証機関による指摘は改善の種~QMSに有効に活かすには? ISO全般

ISOの認証機関による審査は、登録審査にしても定期審査、更新審査にしても緊張しますね。緊張で思うように意見できなかったことはありませんか?

認証機関に高い費用を払っての審査です。審査の内容や結果は有効に活用して、QMS(品質マネジメントシステム)の運用に効果的に反映させるようにしましょう。

この記事では、ISO認証機関の審査での指摘事項などへの対応の仕方、指摘事項を是正、改善してQMSに有効に反映させる方法などを、以下の項目を中心にして解りやすく解説します。

  • ISO認証機関の役割
  • ISO認証機関の審査の指針
  • 審査の場で留意すること
  • 指摘事項の種類とその対応
  • 指摘事項を是正・改善しQMSに反映させる方法

ISO認証機関の審査に対応する品質管理責任者や事務局、各部門の審査対応者など、審査の対応に悩んでいる方や審査を有効に活用したいと考えている方などに参考にしていただきたい内容をまとめています。

ISO認証機関とは-役割は?審査機関、審査登録機関とは違う?

機関

ISO認証機関による審査には、ISO規格の認証取得時に行なわれる認証登録審査と3年毎に行なわれる認証の更新審査、運用状況を確認する1年毎の定期審査があります。ISOの認証を取得していれば年に1回はお世話になる審査です。ISO9001やISO14001、ISO27001など複数のISO認証を取得していれば、数カ月毎に認証機関の審査を受けることにもなります。

このISO認証機関は、審査登録機関とも呼ばれ、単に審査機関と称することもありますが、ISOでは第三者適合性評価機関のことを認証機関と定義しています(ISO/IEC 17021-1)。事業所などの組織を審査することによって、問題がなければISOの認証証明書(ISO登録証)を発行することができます。認証機関は各国に1機関ある認定機関(日本ではJAB:日本適合性認定協会)に認定された機関で、日本には約80のISO認証機関があります。

ISO認定機関と認証機関の関係などは、関連記事としてISO認定機関の役割とは?認証機関との関係性や制度の仕組みも解説もご覧ください。

また、ISO審査機関(認証機関)の選定などについては、ISO審査登録機関とは?現場で機関選定や変更の際に間違わない4つのポイントを参考にしてください。

このISO認証機関の役割は審査をしてISOの認証登録することですが、その過程でその組織に弱点があれば指摘して、その組織が効果的にISOの運用ができるように導いていくことも大きな役割です。審査で不適合などの指摘されるのは嫌なことかもしれませんが、前向きな指導と考えて受審側は対応すべきでしょう。

ISO認証機関による審査の指針

方針

ISO認証機関による審査を実りあるものにするには、認証機関がどのような方針で審査に臨んでいるかを理解することが大切です。認証審査や監査についてはISOの次の二つの規格を参考にすると良いでしょう。

ISO/IEC 17021-1は認証機関に対する要求事項の規格で、認証の原則や審査員の力量、審査プロセスの要求事項などを定めています。ISO 19011は第三者監査となる認証審査の他、内部監査や第二者監査も含めた監査のための指針で、監査の原則や監査員の望ましい行動、監査の計画及び実施に関する手順などの指針を示しています。

公平で適切かつ信頼のおける審査結果を導き出すためには、監査の原則を順守することが必須です。ISO19011では4章で監査の原則について次の七つの原則を示しています。

高潔さ:専門家であることの基礎

公正な報告:ありのままに,かつ,正確に報告する義務

専門家としての正当な注意:監査の際の広範な注意及び判断

機密保持:情報のセキュリティ

独立性:監査の公平性及び監査結論の客観性の基礎

証拠に基づくアプローチ:体系的な監査プロセスにおいて,信頼性及び再現性のある監査結論に到達するための合理的な方法

リスクに基づくアプローチ:リスク及び機会を考慮する監査アプローチ

引用元:ISO19011(JIS Q19011:2019 4章)抜粋

また、監査員の望ましい行動についても、ISO19011の7章(監査員の力量及び評価)の7.2.2項(個人の行動)で、倫理的である、心が広い、外交的である、観察力がある、知覚が鋭い、適応性がある、粘り強い、決断力がある、自立的である、不屈の精神をもって活動できる、改善に対して前向きである、文化に対して敏感である、協力的である、など13項目の資質を挙げています。

この素晴らしい資質を持つ審査員が厳格な7原則に基づいて示す審査結果です。リスペクトをもって審査結果に対応、検討するようにしましょう。

ISO認証機関の審査への対応で留意すること

認証登録審査や定期審査、更新審査などの具体的な審査の場で、認証機関や審査員に対して留意すべきことをまとめてみましょう。組織のQMSの運用状況などを確実に審査してもらい、良いところや弱点、改善が必要な点などを指摘してもらうのが審査では重要なことです。弱点や指摘事項などをQMSの改善に有効に活用できるように、審査の場では審査員とのコミュニケーションを図って、審査内容を確実に把握することが大切です。

審査プログラムなどの確認

審査の日程やプログラムは認証機関から事前に連絡されますが、受審にあたって問題がないかをよく確認しましょう。必須審査項目になっているマネジメントレビューや内部監査は審査前の早めの日程で完了しておかなければなりません。審査当日のプログラムで審査順序の入れ替えなどの要望があれば、初回会議(オープニングミーティング)の場で調整を申し入れましょう。

コンサルタントなどの同席についてISO/IEC 17021-1では、認証機関と受審側とで同意することを求めています(9.2.2.2.1項)。特に初めての認証登録審査の場などではコンサルタントの同席が心強い味方になりますが、認証機関によっては同席を認めないところもありますので事前に確認しておくことをおすすめします。

ISO認証取得支援のコンサルタントの内容、選び方など詳細はこちらをご参考ください。【ISOのコンサル会社がサポートする内容は?コンサルタントを活用してISOを取得・運用する背景

審査員とのコミュニケーションを大切に

コミュニケーション

ISO19011の監査の原則や監査員の望ましい資質に見られるように、認証機関による審査は閉鎖的なものではありません。審査員は受審組織のQMS改善のために審査していますので、審査員の問いかけや審査員の発言で不明な点などについては積極的に回答や相談、疑問点の投げかけなどをして、コミュニケーションを密にして対応するようにしましょう。「聴かれたことだけに答えればいい」とか「余計なことを話してボロを出すな」などはもってのほかのことです。

ISO/IEC 17021-1では、認証機関によるマネジメントシステムのコンサルティングを禁止しています(5.2.5項)。ただし、所見の説明や要求事項の明確化のための情報交換は妨げるものではない、としています。審査員もQMS改善のための対話を望んでいます。コンサルに近い発言をする時に審査員がよく使う言葉は、「これは審査員の独り言ですから」というフレーズです。大切なヒントが含まれていますので、聞き逃さないようにしましょう。

審査についての要望も

信頼性の高い審査が期待できるISO認証機関の審査では、組織のQMSの弱点を重点的に見てもらいたいですね。審査の重点を決めるのは審査員で、そのために審査員は情報収集して課題を見出そうとしますが、必ずしも的確な把握ができないこともあります。

そのような組織が抱える課題を一番解っているのは受審側の品質管理責任者や各部署の責任者です。製造ラインや検査工程、開発工程での問題など具体的な例を挙げて、重点的に審査して欲しい点をオープニングミーティングや現場審査の場などで審査官に申し出てみましょう。審査官はそのことを念頭に置いて審査をし、更に深い問題点や受審者が気付いていない課題などを見出し、QMSの改善につながる指摘をしてくれることでしょう。

指摘事項を積極的に受け入れる

ISO認証機関による審査で不適合などの指摘事項が無かった時、安堵もあるでしょうが良かったと喜んでいることはありませんか。本当に完璧なQMSであればそのようなこともあるでしょうが、そのような時はむしろ落胆すべきかもしれません。どこかにQMSの弱点はあるはずであり、QMS改善の種である指摘事項、不適合が見つけられなかったからです。

審査の場で審査員が不適合にするか観察事項にするか悩む場面があり、それが受審者に伝わることもあります。そんな時、受審者側から「不適合にしてください」と伝えるのも改善のための一つの方法です。高い費用を払っての審査です。審査を有効に活用するためにも、問題点を明確にして改善につなげられる認証機関による不適合はQMS改善のための貴重な指摘です。

誤解があれば解消を

審査員とのコミュニケーション

ISO認証機関による審査の結果については敬意をもって対応するべきですが、誤解などに基づく審査結果があれば徹底的に協議して解消するようにしましょう。

ISO/IEC 17021-1の9.4.7.3項の最終会議(クロージングミーティング)の項でも、

依頼者には,質問の機会を提供しなければならない。審査所見又は審査結論に関して,審査チームと依頼者との間に意見の相違があれば,協議して,できる限りそれを解決しなければならない

ISO/IEC 17021-1の9.4.7.3項

としています。また、解決されない意見の相違があれば、それを記録し、認証機関に通知しなければならない、ともしています。

なお、意見が決裂して、どうしても納得できない場合には、審査後に異議申立てをするプロセスも残されています(9.7項)。

指摘事項の種類とその対応

ISO/IEC 17021-1の定義では、指摘される不適合は重大な不適合(major nonconformity)と軽微な不適合(minor nonconformity)の2種類です。ISO認証機関ではその定義のまま使うところもありますが、重大な不適合を単に不適合とし、軽微な不適合を観察事項とか推奨事項とするところが多くみられます。それぞれの不適合について、それらに対する処置、対応が異なります。

不適合

ISO/IEC 17021-1の3.12項では重大な不適合を次のように定義しています。

意図した結果を達成するマネジメントシステムの能力に影響を与える不適合。

ISO/IEC 17021-1の3.12項

不適合とは要求事項を満たしていないことで、注記として、効果的なプロセス管理が行われているか、又は製品やサービスが規定要求事項を満たしているかについて重大な疑いがある場合としています。また、軽微な不適合が複数あってシステムの欠陥につながる場合にも重大な不適合とされます。

不適合を指摘された場合、審査機関が指定する期間内に是正処置を行ない、認証機関によるレビュー、検証、容認を得なければなりません。容認されない場合は、認証登録不可あるいは認証の一時停止、取消しなどの処置につながります。

観察事項、推奨事項

ISO/IEC 17021-1で定義する軽微な不適合に相当する指摘で、ISO認証機関では観察事項とか推奨事項、改善の機会などの指摘で表しています。ISO/IEC 17021-1の3.13項では軽微な不適合を次のように定義しています。

意図した結果を達成するマネジメントシステムの能力に影響を与えない不適合。

ISO/IEC 17021-1の3.13項

軽微な不適合についてもISO認証機関から是正処置を求められますが、認証機関による検証は修正や是正処置の計画についてのレビューと容認です。計画についての確認のみですが、不適合案件と同様の確実な是正を心がけましょう。

指摘事項を是正、改善してQMSに反映させるには

ISO認証機関から指摘された不適合や観察事項は、是正処置あるいは修正をして改善し、QMSに反映させなければなりません。ここではISO9001に規定されている不適合及び是正処置(10.2項)の方法を主に紹介します。

なお、是正処置については、ISO9001で求められる是正処置とは?規格要求事項に沿って解説で詳しく解説されていますので参考にしてください。

原因分析から対策立案

課題と対策

不適合が再発しないように、ISO9001では不適合の原因を除去するために以下の処置の検討を求めています(10.2.1-b項)。

1)その不適合をレビューし,分析する。

2)その不適合の原因を明確にする。

3)類似の不適合の有無,又はそれが発生する可能性を明確にする。

引用元:ISO9001(JIS Q9001:2015 10.2.1-b)抜粋

そのうえで、必要な処置を実施し、とった全ての是正処置の有効性のレビューを要求しています。

原因の特定には4M(人、機械、材料、方法)分析や魚の骨、なぜなぜ分析などの手法が必要でしょう。原因を明確にし、再発防止のための対策を立案します。

水平展開してQMSに反映

不適合の原因分析には類似の不適合の確認も含まれています。他の製品や他部門の業務などで同じような問題が発生していないか、発生する可能性はないかを確認し、問題があれば対策をとる水平展開の活動が必要です。

不適合の是正処置は、QMSの計画を策定する際の前提としたリスク及び機会への取組みの見直しや、必要な場合は品質マネジメントシステム、QMSの見直し、変更までを含めた活動になります。

まとめ

ISO認証機関による審査は、ISOの認証を取得していれば年に1回は受審する重要な審査です。認証機関による審査は、認証機関に対する要求事項や審査の指針を定めたISO規格に沿って的確に行なわれます。審査の場においては、有効な審査ができるように審査員とのコミュニケーションを大切にし、質問への応対や要望事項の投げかけなど積極的に臨むようにしましょう。

ISO審査機関からの不適合とか観察事項などの指摘事項はQMSの弱点を示すもので、それを是正、修正することがQMSの改善につながります。認証機関による審査はQMS改善の貴重な機会です。審査には確実に対応し、不適合などの指摘に対しては効果的な対応でQMSの改善、向上につなげましょう。

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