ISO離れはなぜ起きるのか?原因と対策を徹底解説

ISO離れはなぜ起きるのか?原因と対策を徹底解説 ISO9001

近年、ISOを導入している状態にメリットを感じなくなり、ISO離れが起きていることを耳にするようになりました。なぜ、国際規格であるISO認証維持を辞め、ISOから離れる企業が増えてきているのでしょうか。

企業は、顧客のニーズや期待を満たす製品及びサービスを提供することにより、売上を上げ利益を得て健全な経営を行うことを目的としています。顧客のニーズ及び期待を満足するために組織は整ったマネジメントシステム体制で運用する必要があり、その体制作りには国際的に認められているISO規格を利用するのが一番有効です。品質マネジメントシステムはISO9001規格、また環境マネジメントシステムはISO14001規格に基づく認証を取得すると、組織にとって有効な体制を構築することができます。

国際規格であるISO9001やISO14001を利用してマネジメントシステムを構築し維持管理することで経営のメリットがあるはずですが、そのメリットを活かすことができないことを理由として取得していた認証を返上する企業が出てきています。ISO離れが進んでいるのは、維持費用を含めた負担が目立つようになり、負荷を感じた企業のデメリット要素が強調されてきたことが要因として挙げられます。

この記事では、ISO離れに関する概要として以下を説明しています。

  • ISO離れが起きる原因とは?
  • ISO離れを起こさないための対策

ISO認証維持していることにデメリットを感じており、返上しようかどうか悩んでいる企業の方は、ぜひこの記事をご覧ください。

ISO離れが起きる原因とは?

ISO離れの原因とつながりやすいポイント

ISO国際規格の目的は、適用範囲のなかで規格要求事項をもとに組織のマネジメントシステムを構築し維持管理することで、顧客満足を向上させ安定的に利益を確保できる健全な企業経営体制を構築することにあります。しかし、顧客指示などでISO認証取得が目的になった結果、ISO規格要求事項をそのまま取り入れてしまい、経営管理に必要なマネジメントシステム以上の管理項目を作りこんでしまう企業も多く存在します。

この章では、ISO規格要求事項をそのまま取り入れることで負荷が増え、ISO離れに繋がりやすい下記5つのポイントを説明しますので、それぞれ見ていきましょう。

ISO離れに繋がりやすいポイント

  • 高い目標値設定
  • 教育の負荷が高い
  • 文書及び記録管理工数の増大
  • 内部監査の負荷大
  • マネジメント層の関与が薄い

ISO離れに繋がりやすいポイント① 高い目標値設定

高い目標

ISO規格要求事項では、次の活動実施を求めています。年間の活動をまとめたマネジメントレビュー結果や、組織を取り巻く環境から得られる内部・外部課題そして利害関係者のニーズ・期待の分析結果から、経営層であるマネジメントは組織の向かうべき方針を決めます。その方針をもとに組織の目指すべき目的そして目標を決定し、各部署は組織目標達成に向けての部署目標を設定します。部署目標達成に向けての活動計画を策定し、その計画にそって活動することがISO規格要求になります。

ISO規格要求事項では高い目標値の設定を要求していませんが、ISO審査や顧客監査での印象が悪くならないように、組織の実態から離れた高い目標値を設定されることがあります。高い目標値設定の場合、組織メンバーは活動初期から達成が難しいことを感じているため、活動に対してのモチベーションが上がりません。また、目標未達成状況が続くため、是正処置をずっと行うことになり、各部署は活動自体が大きな負荷になってしまいます。

ISO離れに繋がりやすいポイント② 教育の負荷が高い

ISO規格要求事項では、顧客が満足する製品やサービスを提供するために、仕事に従事する従業員の十分な力量の確保を要求しています。そのためには、従業員に対して必要な教育と訓練を実施する必要があります。

部署毎で必要な力量が異なるため、部署の管理者やリーダーは業務従事者の力量向上のための教育訓練計画を策定し実行することになります。部署毎の教育訓練については、従業員に必要な力量項目を管理者やリーダーが把握しているので大きなずれはありませんが、問題となるのは集合教育の在り方にあります。

例えば、ISO認証取得している会社は従業員に対してISO規格の求める内容を教育を通して伝える必要がありますが、ISO規格要求事項を全社員に時間をかけて細かく教育している企業があります。そのような教育の場合、全従業員の多くの工数をかけて実施したにも関わらず、教育実績が業務結果に結びつきません。また、他部署の業務内容について集合教育の形で時間をかけて全従業員に行うこともあるようです。組織内にどのような業務があるのかを知るのは大切なことですが、このように集合教育を増やしていくと、従業員にとっては教育自体が負担となり、多大な工数をかけて教育を行っているわりには組織の実績には結びつかない結果となります。

ISO離れに繋がりやすいポイント③ 文書及び記録管理工数の増大

文書管理

ISO規格は文書や記録の要求が多く、それらを管理する工数が増えるイメージがあります。ISO規格が発行された初期段階では、確かに文書と記録の要求が多かった事実はありますが、現行のISO規格ではマネジメントシステム管理に最低限必要となる文書と記録の要求にスリム化されています。

しかし、ISO規格要求事項は文書と記録の要求が多いとのイメージが強いまま、組織で運用する文書と記録について過去に作成したものを整理できずにそのまま運用し、管理工数が減らずに負荷になっている企業が多くあるようです。

ISO離れに繋がりやすいポイント④ 内部監査の負荷大

ISO規格要求事項では内部監査の実施を要求しています。内部監査の目的は、組織で管理しているマネジメントシステムが有効に機能しているかを、組織で認定された内部監査員が定期にチェックすることにあります。組織で決めたルールである品質マニュアル、規定や規則そして設計開発や製造加工作業手順書などにそって業務が遂行されているか、また必要な記録は漏れなく管理されているかを中心に内部監査を実施すると、確実に改善につながります。

しかし、ISO認証登録機関の審査と同じような形式で内部監査を取り組んでいる会社もあり、そのような組織では事前準備を多く求めます。そして実行段階では、内部監査手順に従い内部監査員がISO規格要求事項に基づいているかを被監査部署に質問するものの、監査員の意図と被監査部署の回答がずれ、そのやり取りで時間を要し、表面的な監査で終了してしまいます。このような内部監査では改善ツールとして活かせずに、内部監査員と被監査部署ともに大きな負担となります。

ISO離れに繋がりやすいポイント⑤ マネジメント層の関与が薄い

マネジメント層の関心

ISO認証取得したものの、マネジメント層のほうでISO維持管理が工数の無駄であると感じている場合には、ISO離れが起きやすくなります。

マネジメントシステムはマネジメント層が中心となって運用する必要がありますが、マネジメント層がISO維持が無駄であると感じている場合には、ISOに関わる活動が通常業務と分離していることでISO活動の時間は余計な工数として捉えている可能性があります。あるいは、経営管理とマネジメントシステムが別々に運用されていると、マネジメント層としては経営管理に力を入れることになり、ISO業務は事務局などに任せっぱなしになることから、ISOは本当に必要かと疑問を感じる大きなポイントとなりえます。

ISO離れを起こさないための対策

前章では、ISO離れが起きる原因を解説しました。ISO認証を返上しようと考えている会社では、ISO離れに繋がっている項目としていくつか思い当たるものがあるのではないでしょうか。

それでは、気持ちがISOから離れずに維持管理が必要と感じるようになるためには、前章で挙げた項目に対してどのような対策で臨むべきでしょうか。

これから、前章で述べたISO離れに繋がりやすい5つの原因に対するそれぞれの対策を以下に解説していきます。

原因への対策

  • 達成可能な目標設定
  • 必要な教育の整理
  • 文書及び記録管理のスリム化
  • 内部監査イベントからの脱却
  • マネジメント層の意識向上

対策① 達成可能な目標設定

マネジメントシステム活動では、マネジメントレビュー結果を分析し、かつ市場動向などの分析結果をもとに次期目標を決めるのが一般的な流れです。例えば、市場の景気を見ると楽観視できない状況であれば、売上目標を下げそして使用経費目標も下げて、前期と同程度の利益を確保するための目標値設定を検討する必要があります。しかし景気が悪くなっているにも関わらず、売上目標を前期より上げ、利益も大幅アップを目指す目標設定にすると、各部署が設定する目標値も必然的に高いものとなってしまい、活動前から達成が困難であることが分かりモチベーションが上がりません。

組織の目標は、審査員や他者に対する見栄で設定するものではなく、その年の動向を分析し達成可能な範囲で設定するのが望ましく、達成可能であることを認識すれば活動に対する意欲も湧きます。

売上や利益だけでなく歩留や生産性などについても目標達成に手が届く範囲で設定すると、活動が前向きに進みISOから気持ちが離れることはなくなるでしょう。

ISOに基づく目標管理については、関連記事のISO規格要求で求められる目標及びその管理について具体事例を交えて解説でまとめていますので、ご覧ください。

対策② 必要な教育の整理

社員教育

教育の実施は、従業員の力量を上げ業務を遂行できる力をつけることで、品質の安定した製品やサービスを顧客へ提供できるようにすることが目的です。ISO規格要求事項が求めているから実施するわけではありません。

ISO規格の教育実施要求を受けて様々な集合教育が設定されているのであれば、従業員の力量を上げるための教育がどれだけあるのかを一度見直す必要があります。例えば、他部署の業務内容を知るために全社員に集合教育を設定しているのであれば、複数回に分割しているものを1回に集約し効率化するなど、従業員への負荷を減らすなどの視点で見直してみることをお勧めします。

なお、ISOに基づく教育訓練については、関連記事のISOが求めるスキルアップを実現するための教育訓練を徹底解説でまとめていますので、ぜひ確認してください。

対策③ 文書及び記録管理のスリム化

ISO規格要求事項で文書作成や記録を残す指示のある項目は、マネジメントシステムを効率的に運用するためには必須と考えられているものです。ISO規格の最新版では特に、重要な文書と記録が絞り込まれているので、最新版で必須としているものを改めてチェックし、過去のISO規格で作成した文書と記録の整合を取るようにしてください。ISO認証取得時に文書を作成したものの組織の運用にのっておらず定期見直しだけ行っているもの、記録だけが年々増えてきて有効活用されておらず書庫を占有しているものが洗い出されるはずです。

スリム化を目的として分析すれば、組織にとって有効な文書と記録を見直すことができ、結果として事務局や従業員の負担を減らすことに繋がります。

対策④ 内部監査イベントからの脱却

マンネリからの脱却

内部監査の目的は組織のマネジメントシステム改善ツールであることを組織全体に浸透させ、内部監査の事前準備は不要であり、普段の業務に不適合がないかを内部監査員に確認してもらう場であることを意識してもらいましょう。内部監査の目的を理解すれば、事前準備工数を削減でき、自部署業務運用の改善の場との認識で内部監査に臨めるので、重要度が高まってくるばずです。形式的な内部監査から脱却し、業務改善の一つのツールとして有効活用しましょう。

なお、何年経っても有効な内部監査にならない組織は、コンサルタントに相談し内部監査実施時に立ち会ってもらいコンサルティングしてもらうのもよいでしょう。

ISO認証取得支援のコンサルタントの内容、選び方など詳細はこちらをご参考ください。【ISOのコンサル会社がサポートする内容は?コンサルタントを活用してISOを取得・運用する背景

対策⑤ マネジメント層の意識向上

対策①から④を実施すると、ISO業務が日々の業務のなかに取り込まれてくるので、無駄な工数が減ってきます。そうすれば、マネジメント層としてもISOが組織に定着したことを実感し、無駄を感じなくなります。

ISOが定着すると業務実績のレビューがそのままマネジメントレビューに繋がるので、マネジメント層の経営管理へ直結することになります。ISO管理責任者と事務局の手腕が問われるところですが、ぜひ、ISOの仕組みであるPDCA運用が経営管理に繋がるように導いてください。そうすれば、マネジメント層も必ずISOの重要性を認識されるはずです。

まとめ

この記事では、ISO離れが起きる原因とISO離れを起こさないための対策を解説してきました。

ISO認証取得していることは顧客とのビジネスを継続するために有効かつ重要なツールです。そして、ISOは国際的な機関の有識者で練られた規格であることから、規格要求事項を組織のマネジメントシステムに取り入れ活動することは組織運用の活性化に繋がります。

ISOマネジメントシステムを詳しく知りたい方は、関連記事ISOマネジメントシステムを基本からわかりやすく解説!規格の種類も紹介で解説していますので、ご覧ください。

ISOから離れて、組織独自の経営管理に戻すことで結果的に経営状態の迷走に陥ったとならぬように、通常業務のなかでISO活動を無理なく維持できるように見直してみてください。

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この記事を書いたライター
小一郎秀長

ISO9001(1994年度版)導入に続きISO14001(1996年度版)導入において、ISO事務局委員長として会社の認証取得に貢献。その後のISO改訂時には、後輩育成のためにISO事務局へのアドバイザーとしてサポート。
現在はISO9001/IATF16949の維持管理に従事中。
戦国時代をこよなく愛し、尊敬するのは豊臣秀長。連休は城址廻りでリフレッシュ。

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