ISO9001における検査の位置付けと現場での検査実務を徹底解説

ISO9001における検査の位置付けと現場での検査実務を徹底解説 ISO9001

検査は不具合製品を市場に流出させない、顧客に渡さないための最後の砦です。この検査について、ISO9001ではどのような要求事項が規定されているかご存知でしょうか。

この記事では、ISO9001での検査の位置付けや現場での検査実務について、以下の項目を中心にして重要ポイントを徹底解説します。

  • ISO9001における検査に対する規定
  • 検査でのISO要求事項
  • 検査の目的、役割
  • 検査の種類や検査員に必要な資質

現在検査に携わっている方や検査業務に就きたいと考えている方、ISO9001を管理・運営している責任者などの方に参考にしていただきたい内容をまとめています。

ISO9001における検査の位置付け

ISO9001で検査はどのように規定されているのでしょうか。現在の2015年版より前の規格には検査という用語がありましたが、今のISO9001規格本文には検査という用語はありません。2015年版では、検査が果たす不具合製品の排除などの役割を検査以外も含めた一般的な表現で示していると考えられます。

それでは、ISO9001を中心にして検査に関わることがどのように規定されているのかを見てみましょう。

検査の定義

ISOなどで検査はどのように定義されているのでしょうか。検査という業務を正しく把握するために各種、関連する検査の定義を見てみましょう。

ISOでの検査の定義

ISO9001:2015に検査という用語は使用されていませんが、ISO9000:2015(品質マネジメントシステム-基本及び用語)で検査は次のように定義されています。

3.11.7 検査

規定要求事項への適合を確定すること。

注記1 検査の結果が適合を示している場合、その結果を検証のために使用することができる。

注記2 検査の結果は、適合若しくは不適合又は適合の程度を示すことがある。

検査は規定要求事項への適合を確定するために行なうことで、その結果を検証のために使用することができるとされています。ここで検証という用語が出てきましたが、検証はISO9000:2015では次のように定義されています。

3.8.12 検証

客観的証拠を提示することによって、規定要求事項が満たされていることを確認すること。

注記1 検証のために必要な客観的証拠は、検査の結果、又は別法による計算の実施若しくは文書のレビューのような他の形の確定の結果であることがある。

つまり、規定要求事項が満たされていることを確認する検証のために、客観的証拠を得るための検査が行なわれます。検査は規定要求事項を満たさない不適合や適合の程度を示すこともできます。

ISOでの検査の定義から、ISO9001では「規定要求事項を満たしているか検証する」に類するフレーズのある条項に、検査に関わる事項が規定されていると考えて良いでしょう。

その他の検査の定義

ISOの表現はどうも堅苦しくて解りづらいと感じる方が多いでしょう。JISではどうでしょうか。JIS Z8101-2:2015(統計-用語及び記号)では次のように検査を定義しています。

4.1.1 適合性評価

アイテムが規定された要求事項をどの程度満たすかの系統的な調査。

4.1.2 検査

適切な測定、試験、又はゲージ合せを伴った、観測及び判定による適合性評価。

つまり検査とは、製品やサービスの特性値に対して、測定、試験、ゲージ合わせなどを行なって、規定要求事項と比較して適合しているかどうかを判定する活動としています。ISOよりはやや具体的な表現になっていますね。

一般の辞書、三省堂の大辞林では「ある基準に照らして適・不適、異常や不正の有無などを調べること」としていて、広い範囲に適用できる解りやすい表現になっています。

具体的な製造現場を例にとれば、出荷する製品に対して顧客の要求を満たすために、経常や構造、寸法、色、機能、性能などの項目に対して合格基準を定め、その基準に適合するか不適合かを判別するのが検査です。適合品には出荷が許可されます。

検査でのISO要求事項

「規定要求事項を満たしているか検証する」という趣旨の検査に関連するフレーズは、ISO9001の以下の条項に示されています。

  • 8.6 製品及びサービスのリリース
  • 8.4 外部から提供されるプロセス,製品及びサービスの管理

それぞれの要求されている事項を見てみましょう。

製品及びサービスのリリース

8.6項では製品やサービスを市場に、顧客にリリースする、引き渡すときの要求事項が規定されています。

「組織は、製品及びサービスの要求事項を満たしていることを検証するために、適切な段階において、計画した取決めを実施しなければならない。

計画した取決めが問題なく完了するまでは、顧客への製品及びサービスのリリースを行ってはならない。

ただし、当該の権限をもつ者が承認し、かつ、顧客が承認したときは、この限りではない。」

この要求事項は簡単に言うと、「製品やサービスは、それが要求事項を満たしていることを確認してから顧客に引き渡すこと」ということです。製造業で言えば、「最終検査や出荷検査などの検証を行なったうえで出荷する」ということを意味しています。また、権限をもつ者が承認した場合などはこの限りではない、というのは検査後の特別採用(特採)などのルールを意味しているでしょう。

8.6項の後半は記録についての要求事項です。

「組織は,製品及びサービスのリリースについて文書化した情報を保持しなければならない。これには,次の事項を含まなければならない。

a) 合否判定基準への適合の証拠

b) リリースを正式に許可した人に対するトレーサビリティ」

この要求事項は、「検査の記録を残して保存し、出荷を許可した人が誰なのかを追跡、特定できるようにしておくこと」ということです。

外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理

8.4項では外注などの外部の協力企業からの製品などに対する管理についての要求事項が規定されています。8.4.2項「管理の方式及び程度」のd)で次のように定めています。

「d) 外部から提供されるプロセス,製品及びサービスが要求事項を満たすことを確実にするために必要な検証又はその他の活動を明確にする。」

ここでは、外注などの協力企業から納入される部品や製品に対して要求事項を満たしているかを検証することを要求しています。具体的には、受入検査の実施や組織間で取り決めた検査成績書の添付、確認などの活動になります。もちろん、この検証などの活動についても記録を残して管理しなければなりません。

外部提供者についてはこの提供品などの検証、管理だけでなく、ISO9001ではさまざまな管理を要求しています。ISO9001での外部提供者の管理については、関連記事としてISO9001で求められる外部提供者の管理とは?規格要求事項にそって解説もご覧ください。

検査実務の具体的な内容

検査は製品などが要求事項を満たしているかを検証する重要な業務で、ISO9001でも受入検査や出荷検査に相当することが確実に規定されていることが解りました。ここからは、検査の役割や検査の種類などを中心にして、実際の検査業務の具体的な内容を見てみましょう。

検査の役割

検査の大きな目的は、その製品や部品、サービスなどの品質を保証することです。具体的には、決められた仕様や顧客の要求事項を満たしているかを確認、判断することですが、そのことによって検査は次の2つの役割を担っていると言えます。

  • 要求事項を満たさない不適合品を後工程や顧客に引き渡さない保証をする。
  • 不適合の情報をいち早く前工程などにフィードバックして改善につなげる。

特に不適合品を後工程や出荷に回さないことは、品質保証的にもコスト的にも重要なことです。検査では合否判定基準に沿って淡々とチェックしますが、場合によっては部分的な不適合品の出荷を許可する特別採用や、あるいは一部の不適合のためにロット全部を不適合とするロットアウトを適用しなければならないこともあります。このような重大な判断をする場合は、それを決定する責任者や合議体、適用の基準などのルールを確実に定めておくべきでしょう。

検査の種類

検査にはいろいろな種類があります。製造業を例にとると検査には以下のような分類があり、そのなかでいくつかの種類に分けられます。

  • 検査の実施段階による分類
  • 検査の実施方法による分類
  • 検査の影響による分類
  • 検査の判定方法による分類

それぞれの分類のなかでどのような検査があるのか見てみましょう。

検査実施段階による分類

いつ検査するかによって次の種類があります。

受入検査:ISO9001の8.4.2項で要求されている外部協力企業などから納入される部品や製品などの検査です。社外から購入した部品などに異常品が混入していた場合に、それを製造工程などに流入しないようにする重要な検査です。購入仕様書や出荷検査成績書などに基づいて検査を行ないます。

工程内検査:生産の各工程で、次の工程に送っても良いかを確認し、次工程へ不良品を流さないために行う検査です。「品質は工程内で作りこむ」とか「後工程はお客様」という言葉がありますが、自分の工程でいかにして不良品を出さないようにするかという考えが作業員に浸透し、品質向上の意識が高まります。

最終検査:出荷検査と呼ぶことがありますが、市場に出荷する前に行なう最終的な検査です。最終検査の最大の目的は不具合品の市場流出を防ぐことで、不具合流出の最後の砦になります。最終検査で不合格になったものは出荷できないルールとしている会社がほとんどです。

検査実施対象による分類

検査を実施する対象によって次のような種類があります。

全数検査:検査対象となるロットの全て、全数を検査する方法です。不具合流出をゼロに近づける最も確実な検査方法ですが、コストが高くなるのが難点です。そのため一部の検査項目を抜取式にすることもよく行なわれます。

抜取検査:検査対象のロットからサンプルを抜取って検査し、そのロット全体の合否を判定する方法です。抜取検査は工程が安定し、工程能力の検証ができている製品などに対して行なうことができます。サンプル数の決め方などの基準はJIS Z9015(計数値検査に対する抜取検査手順)などに示されていますので参考にすると良いでしょう。

無試験検査・間接検査:無試験検査は試験をしない検査で、過去の品質情報や技術情報などでその品質が安定していることが前提になります。書類などによってロットの合否を判断する検査方法です。間接検査は検査成績書などの他社の結果を確認する検査で、受入検査でよく用いられます。

検査の影響による分類

プロダクト

検査することによって製品などの検査対象に影響がでる場合もあります。

破壊検査:製品や部品を破壊しないと評価できない検査です。強度試験や引張試験、衝撃試験、加熱試験、劣化試験などが該当します。破壊検査をすると製品価値が無くなってしまいますので抜取検査が適用されます。

非破壊検査:検査対象を破壊しないで評価する検査です。目視測定や寸法測定、質量測定、光学測定などによる検査が一般的ですが、X線測定のように製品などの内部を破壊せずに検査できる方法もあります。

検査の判定方法による分類

どのようなデータで合否を判定するかによっても検査の種類が異なります。

計数値検査:不適合の数をカウントして、その数が基準内かどうかで合否を判定します。キズや汚れ、異物、不良品などの数が該当します。

計量値検査:幅や厚さ、長さ、重さなどの特性値を測定し、その量が基準内かどうかで合否を判定します。

官能検査:データや数値ではなく、人間の感覚で判定を行う検査です。味覚や嗅覚、聴覚などで、食品の味や香り、オーディオの音やボルトの緩みなどの検査をします。検査員による結果のバラツキや体調に左右されるなどのデメリットもあります。

検査員の資質

検査に関わる人は、検査対象を正確に測定、評価し、合否基準に照らして厳格な判定を下さなければなりません。検査員としての自覚を持ち、誇りをもって検査を行なうことが検査員の資質として求められます。

それと同時に、検査業務に必要なさまざまな知識、技術も持ち合わせなければなりません。例えば、検査規定の理解やJIS、関連法などの知識、測定器の取扱いなどの測定・判定技術など、OJT教育も含めた幅広い教育訓練プログラムが必要です。

検査員として適性が高い行動特性には、緊張感とか集中力、忠実さ、慎重さ、判断力、疑問力、忍耐力などがあります。その他、几帳面さや冷静さなども必要です。適格な性格と豊富な知識をもった検査員は、組織のなかでも優秀な人員が割り当てられ相応の待遇で尊重されるべきでしょう。

まとめ

ISO9001の規定では、検査に相当する処置の役割やそれに対する要求事項が定められています。製品やサービスは、それが要求事項を満たしていることを確認してから顧客に引き渡されなければなりません。その要求事項を満たしていることを確認、検証することが検査の役割です。

検査には出荷検査の他、受入検査や工程内検査などがあり、検査方法にも全数検査や抜取検査、破壊検査などさまざまな種類があります。検査で重要なことは、検査対象を正確に測定・評価し厳格な判定をすることです。そのために検査員にもさまざまな知識や技術が求められ、集中力や判断力などの適性も必要になります。

検査は不具合流出防止の最後の砦です。確実な検査を実施して誇らしい良品を出荷できるようにしましょう。

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この記事を書いたライター
hikaruta

ISO9001:94年版での認証取得に関わって以来、ISO14001や医療機器品質のISO13485の認証取得・運用に深く携わり、ISOに翻弄、鍛えられたビジネスライフを経験。一線を退き、反省なども込めてISOを見つめ直しています。

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