ISOの認証取得・運用によるメリットとデメリットは?

ISOの認証取得・運用によるメリットとデメリットは? ISO全般

ISOのマネジメントシステム規格にはいろいろな種類があります。そして、どの規格にしても企業などがその適合認証を取得するのには、組織内での変革や大変な労力などが必要になります。

そのような大きな負担がありながらISOの認証取得を目指すのはなんのためでしょうか。ISOの認証を取得する目的は?得られるメリットは?ISOの魅力とはなんでしょうか。また、デメリットはあるのでしょうか。

この記事では、これらの疑問の答えとして以下の項目をわかりやすく解説します。

  • ISOとは?制定の歴史や規格の特徴
  • 企業がISOを認証取得する目的はなにか?
  • ISO認証取得活動の過程で得られる企業活性化のメリット
  • ISOの導入、運用で得られる企業価値向上のメリット
  • ISO認証取得・運用のデメリット
  • ISO規格ごとのメリットとデメリット

これからISOの認証取得を計画している方やISOのメリットを把握したい方などのために、ぜひ参考にしていただきたい内容をまとめています。

ISOとは?

ISOのメリット、デメリットを説明する前に、そもそもISOとは何なのか、その歴史やISO規格の特徴、企業などがISOを認証取得する目的は何なのか、ということについての説明をしておきましょう。

ISO制定の歴史

スイス_ジュネーブ

ISOは国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略称で、国際的な標準となる国際規格を策定している組織です。スイスのジュネーブに本部があり、世界の約160の国家標準化団体で構成されていて、1947年に設立されました。

ISOには約2万の規格があり、ネジやカードのサイズ、非常口のマークなどを例とするモノの規格と、ISO9001に代表される組織の活動を管理するためのマネジメントシステムの規格に大別されます。

この記事が対象とする規格は、多くの企業がその認証取得を目指して活動しているマネジメントシステム規格のほうです。その先駆けとなったのが1987年に発行された品質保証のモデル規格であるISO9001です。それまでは欧米各国で独自の品質保証に関する規格がありましたが、国際間の取引を行なう際に各国の規格ごとの差異が円滑な取引の障害になっていました。イギリスのBS-5750とアメリカのZ1-15をベースにして制定されたのが国際規格のISO9001です。

その後、1996年に環境のマネジメントシステム(MS)規格であるISO14001、医療機器品質MS規格のISO13485が制定され、2005年には情報セキュリティMS規格のISO27001、ITサービスMS規格のISO20000、食品安全MS規格のISO22000が制定されました。2010年以降は、エネルギーMS規格のISO50001、事業継承MS規格のISO22301、道路交通安全MS規格のISO39001、アセット(資産運用管理)MS規格のISO55001などが続々と制定され、2018年には労働安全衛生MS規格のISO45001が制定されています。

ISOマネジメントシステム規格の特徴-PDCAサイクル

PDCAサイクル 詳細図

各種のISOマネジメントシステム規格がありますが、その規格の構成はどの規格もほぼ同じになっています。これは、2012年にISOの附属書SLという文書でマネジメントシステム規格の構成が一律に定められたからです。これらの規格のなかで特徴的な要求事項が、PDCAサイクルによる継続的改善です。

ISOのMS規格は企業などの組織の仕組みを改善するためのものです。組織の課題を継続的に改善する手法がPDCAサイクルを回すことです。改善のための計画(Plan)を立てて、それを実施(Do)し、その結果を検証、見直し(Check)して実施方法を変更するなどの改善(Act)を行なって次の活動につなげていくのがPDCAを回す改善手法です。

ISOのMS規格にはPDCAの他、目標を設定するための手法や運用を支援するシステムの管理など、組織を管理するために必要な要素が数多く定められています。

企業がISOを認証取得する目的は?

ISOを認証取得するには審査費用やコンサルタントとの契約費用などの費用がかかります。それと、なによりもISOを構築するための作業工数、つまり従業員の多額の人件費を割り当てることになります。このような大きな負担があるにもかかわらず企業がISOの認証取得を目指すのは、ISOの認証取得によってそれ以上の価値、メリットが得られると期待しているからでしょう。

一般社団法人日本能率協会の「ISOの取得・運用状況に関する調査」報告書(2018年10月)の中に、企業がISOを取得した理由についての調査報告があります。

このなかで、ISOを取得した理由の複数回答アンケートの結果を以下に示します。

自社の経営体質やマネジメントのレベルを高めるため 72.9%

取引先や親会社などからの要請があったため 48.8%

営業機会を拡大するため 37.6%

社会的な責務に応えるため 32.9%

自社のブランドや評判を高めるため 32.9%

入札参加時において有利になるため 23.5%

多くの同業他社が取得しているため 10.6%

輸出取引において有利になるため 7.6%

その他 2.4%

引用元:(社)日本能率協会「ISOの取得・運用状況に関する調査報告書 3.2項

経営体質の強化やマネジメントレベルの向上が第1位で、営業機会の拡大や社会的な責務、ブランド評価の向上など、積極的な会社運営につながる理由、目的も30%以上になっています。品質のISO9001規格に限定すると、経営体質やマネジメントレベルの向上は84.2%にまで高まっています。

企業がISOを認証取得する目的は、経営体質やマネジメントレベルの強化・向上をとおして収益改善はもちろん、企業のイメージアップや社会的貢献を図るためのものと言えるでしょう。

ISO認証取得のコンサルタントの支援内容、費用感、選び方など詳細はこちらをご参考ください。【ISOのコンサル会社がサポートする内容は?コンサルタントを活用してISOを取得・運用する背景

ISO認証取得・運用のメリット

ISO認証取得・運用のメリット

それではISOを認証取得・運用するメリットを具体的にみてみましょう。メリットには実際にISOを取得・運用して得られるものと、認証取得する活動のなかで得られるものとがあります。

ISO認証取得活動で得られる企業活性化のメリット

ISO認証取得で得られる企業のメリットは、取得前の活動のなかにもあります。審査機関による認証登録を得るまでの活動は、取得という目標に向かって組織の全員が一丸となって熱く取り組まなければ達成できません。

取得活動では取得目標の期日にあわせ、ISOの要求事項を満たすために次のような項目の計画を立てて実践することが多いでしょう。

  • 登録認証機関や外部コンサルタントなどの検討
  • 事務局、内部監査チームの編成や組織改編
  • 必要なマニュアルや手順書、規定などの作成、実践
  • 重点人材の外部研修教育と従業員への社内教育
  • 組織単位、個人レベルでの目的・目標の設定
  • 内部監査や是正処置、マネジメントレビューを含めたPDCAの実践

このような活動のなかで、特に手順書などの内容や教育、目的・目標の設定、内部監査などを実践していくなかで、従業員の間で激しい議論が交わされることがよくあります。そのような熱い議論などをとおして、ISOの求めるところや考え方が従業員一人ひとりのなかに徐々に浸透していくことが期待されます。

逆に、議論もなくいやいやISOの取得活動をやっているような組織では、仮にISOを取得できたとしてもその後の活動の成果には疑問が残るところです。認証取得前の活動は、その後の企業活動の活性化につながる大きなメリットを含んでいると言えるでしょう。

ISOの導入、運用による企業価値向上のメリット

ISOの取得、導入によるメリットには、対外的な信用度の向上や社内的な改善志向の定着など、企業としての価値を向上させる多くのメリットがあります。それらの内容と、ISO取得についての企業の満足度について以下に紹介しましょう。

ISO導入で企業が得られるメリット

企業がISOを認証取得する目的の項で紹介した事項などがメリットとして実現されます。具体的には次のようなメリットが主なものとしてあげられます。

  • PDCAによる継続的改善の実現で、企業体質の改善、強化が図られる。
  • 社会的信用の向上で、取引拡大、売上増加などにつながる。
  • 業務コストの削減と生産性向上などによって収益改善が図られる。
  • 組織内の機能・責任権限が明確化され、業務効率の改善、経営改善が図られる。
  • 管理層のマネジメント能力が強化され、組織内の目的・目標管理が徹底される。
  • 従業員の意識改革によって組織の体質が強化される。
  • リスク管理の強化で、企業の社会的責任やコンプライアンスの徹底が図られる。

これらの企業価値を向上させるメリットは、ISOを要求事項に沿って運用していけば確実に得られるものです。ISO無しにこれらのことを実現することは、よほどの統制などがない限り不可能と言ってもよいでしょう。

ISO認証取得後の満足度は?

一般社団法人日本能率協会の「ISOの取得・運用状況に関する調査」報告書(2018年10月)では、ISOを認証取得後の企業の満足度も調査しています。品質や環境など、ISOの各マネジメントシステム規格についてのアンケート調査結果を下の表1に示します。

規格種類大変役立っている役立っているある程度役立っているあまり役立っていない役立っていないまったく役立っていない
ISO9001
(品質)
19.142.628.47.80.70.7
ISO14001
(環境)
7.135.338.812.94.71.2
ISO27001
(情報)
23.153.823.10.00.00.0
ISO22000
(食品)
28.650.014.30.00.00.0
ISO45001
(労働安全)
10.040.030.010.00.010.0
その他
50.025.025.00.00.00.0
表1.ISOの各マネジメントシステム規格についてのアンケート調査結果

※その他は、医療機器、航空宇宙、ITサービス、道路交通安全、アセット、エネルギーなどに関するマネジメントシステム規格。

この結果から、ISO27001(情報)やISO22000(食品)、あるいは「その他」など、対象業界が限定的な規格は満足度が高いことがわかります。これは、それぞれの規格にその業界特有の要求事項もあり、各企業がそれを反映することで有効な活動ができているからでしょう。

ISO9001(品質)やISO14001(環境)は多くの企業が認証取得しているメジャーな規格ですが、満足度には若干ネガティブな結果も含まれています。現実として認証登録を解除、放棄する企業も散見されています。ISOの要求事項の運用、活用が適切に行われず、メリットを生むまでに至らない場合もあるということを示しているのでしょう。

ISO認証取得・運用のデメリット

ISO認証取得・運用のデメリット

ISO認証取得後の満足度で「役立っていない」という調査結果が少なからずあるということは、ISOの認証取得・運用にもデメリットがあるということです。多くの場合はISOの運用、活用が適切に行なわれていないことから生じることですが、具体的には次のようなことがデメリットとしてあげられます。

  • マニュアルや書類などの文書・記録が増え、作成・管理の手間がかかる。
  • 改善の効果がすぐに出ないことで、運用・維持のモチベーションが低下する。
  • 認証取得・運用・維持にメリット以上の手間とコストがかかる。
  • 経営トップの目指す理想・目標と現場とのギャップが大きく、士気が低下する。

これらは、経営トップのISOに対する理解が無かったり、一部の担当者しかISOに関わっていないような場合に起こりがちなことです。組織内でのISOに対する理解、認識の徹底が、ISOの構築・運用・維持にはとても重要です。適切で効果的なISOの運用に悩んでいる場合には、外部のコンサルタント会社などに相談することもお勧めします。

ISO規格ごとのメリットとデメリット

ここまで説明してきたのはISOのMS規格に共通した認証取得・運用に関わるメリットとデメリットですが、ISO制定の歴史の項で紹介したように、ISOには様々なMS規格があります。品質や環境、医療機器品質、情報セキュリティ、食品安全、労働安全衛生などのMS規格です。これらの個別MS規格には共通部分以外にそれぞれ独自のメリットとデメリットがあります。

ISO9001のメリットとデメリット

ISO9001は品質のマネジメントシステム規格です。ISO9001のメリット・デメリットは「ISO9001のメリットとデメリットは?認証取得で企業や製品など多くの品質が改善」 に詳細にまとめていますので参照してください。

ISO14001のメリットとデメリット

ISO14001は環境のマネジメントシステム規格です。ISO14001のメリット・デメリットは「ISO14001のメリットとデメリットは?認証取得で環境に関わるさまざまな対象が改善」に詳細にまとめていますので参照してください。

ISO27001のメリットとデメリット

ISO27001は情報セキュリティのマネジメントシステム規格です。ISO27001のメリット・デメリットは「ISO27001のメリットとデメリットは?認証取得で確実な情報セキュリティ管理を」に詳細にまとめていますので参照してください。

まとめ

ISOのマネジメントシステム規格は、企業などの組織の仕組みを改善するためのものです。ですから、ISOマネジメントシステム規格を認証取得し導入するメリットは、端的に言うと企業価値の向上です。企業がISOを認証取得する目的も、「自社の経営体質やマネジメントのレベルを高めるため」が第一位です。

このISOのメリットは取得前の活動段階からも表れ、取得活動での熱い議論などが組織を有効に活性化させます。ISO取得後の運用では、社会的信用や企業体質の強化などさまざまなメリットが得られます。

ただ、適切なISOの運用ができないと余計な手間やコストがかかり、現場のモチベーションが低下するなどのデメリットも発生します。ISOには品質や環境などさまざまなマネジメントシステム規格があり、それぞれに個別のメリット・デメリットがあります。

ISOの要求事項を確実に理解して運用することで、企業価値向上のメリットを大きく引き出しましょう。

ISOナビでは月額4万円から取得・運用を完全サポートしております。

HACCPやISMS、Pマーク、ISO9001をはじめとする各種規格の新規の認証取得から更新・運用までサポートしております。

業界最安級の月額4万円からご利用いただけ、対応工数のゼロ化を実現します。

まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いたライター
hikaruta

ISO9001:94年版での認証取得に関わって以来、ISO14001や医療機器品質のISO13485の認証取得・運用に深く携わり、ISOに翻弄、鍛えられたビジネスライフを経験。一線を退き、反省なども込めてISOを見つめ直しています。

hikarutaをフォローする
ISO全般
ISOナビ
トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました