ISO45001のメリットとデメリットは?認証取得で「働く人」の健康と安全を

ISO45001のメリットとデメリットは?認証取得で「働く人」の健康と安全を ISO全般

ISO45001は労働安全衛生のマネジメントシステム規格で、多くの組織、企業が認証取得の活動を進めています。このISO45001の認証を取得してシステムを運用すると企業などの組織にはどのようなメリットがあるのでしょうか?また、認証取得するにあたってデメリットはないのでしょうか?

この記事では、ISO45001認証取得のメリットとデメリットを以下のことを中心にしてわかりやすく解説します。

  • ISO45001制改訂の背景
  • JISQ45100などとの関係
  • ISO45001の要求事項
  • ISO45001を認証取得することによるメリット
  • ISO45001のシステム構築・運用することによるメリット
  • ISO45001を認証取得することによるデメリット
  • ISO45001の認証取得件数

ISO45001の認証取得を検討している方や、ISO45001の構築・運用が効果的にできず悩んでいる方などに参考にしていただきたい事項をまとめています。

ISO45001とは?

ISO45001は、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)が定めた労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格です。ISOには、品質のISO9001や環境のISO14001などのマネジメントシステム規格がありますが、ISO45001はそれらの規格とも整合性がとられた労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS:Occupational Health and Safety Management System)の規格です。ISO45001が規定するOHSMSの枠組みは、組織に従事する全ての人の労働に関連する怪我などの災害や疾病を予防することと、安全で健康的な職場環境を提供する仕組みを実現するための要求事項を規定しています。

ISO45001は認証規格で、規定された要求事項などを組織が満たしているかを認証審査機関によって審査され、適合していればISO45001の認証を取得できます。ISO45001を認証取得することでさまざまなメリットやデメリットが生じますが、まずISO45001制改訂の背景や要求事項などの特徴を以下に説明しておきましょう。なお、ISO45001の概要については、「ISO45001とは?労働安全衛生のMS規格、要求事項やメリットなど概要を解説」でポイントを解説していますので参考にしてください。

ISO45001制改訂の背景

ILO 国際労働機関

労働安全衛生のMS規格は、1996年に英国規格協会が国内規格BS8800を発行したのを契機に、世界各国で国内規格が制定されました。国際標準の規格制定を求める機運から、1999年にBS8800や各国の国内規格を基にOHSAS18001と呼ばれる規格が英国で発行されました。OHSAS18001(Occupational Health and Safety Assessment Specification)は認証規格で、労働安全衛生の世界標準として国際的に広く普及した規格です。

一方、国連専門機関のILO(International Labour Organization:国際労働機関)は、2001年にILO労働安全衛生マネジメントシステムに関するガイドライン(ILO-OSH2001)を公表し、多くの国がこのガイドラインを基に自国に合う労働安全衛生のMS規格を策定しています。

これらのOHSAS18001やILOのガイドライン、各国の法規制などがあるなか、再びISOによる国際規格の発行が求められるようになりました。従来の法令や規制、規格などと矛盾せず、かつ働く人の安全、衛生を第一とした国際規格として2018年にISO45001が発行されました。

日本の法規制では、1999年に労働安全衛生法の省告示として「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(OSHMS指針)」が示されました。この指針は2006年にILOのガイドラインに準拠させるため、2019年にISO45001の内容を取込むために改正されています。

ISO45001とJISQ45100などとの関係

ISO45001とJIS Q45100の違い、関係性

労働安全衛生の規格、ガイドライン、法規制の流れをISO45001が集約するかたちで2018年に制定されました。1999年以来世界標準として採用されていたOHSAS18001もその役割をISO45001に託して2021年3月をもって認証登録活動を廃止しました。

日本の労働安全衛生法の省告示である「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(OSHMS指針)」は、ISO45001の要求事項をほとんど内包しています。ただ、このOSHMS指針にはISO45001には無い日本独自の危険予知(KY)活動や4S活動、安全衛生パトロールなどの安全衛生活動が規定されています。JIS Q45100はISO45001にOSHMS指針の内容も加え、より高い労働災害防止効果を狙いとした日本独自の規格です。JIS Q45100の認証を取得すれば、ISO45001の認証も取得できたことになります。

ISO45001の要求事項はなにか?

ISO45001が狙いとする労働安全衛生の要求事項は、次の3点に集約されます。

  • 安全で健康的な職場の提供
  • 労働災害や疾病の防止
  • 労働安全衛生パフォーマンスの向上

これらを中心に多くの要求事項が規定されていますが、運用にあたってポイントになるのは次の3点です。

  • 経営トップが主導する取組み
  • 「働く人」の協議、参画
  • PDCAによる継続的改善

ここでの「働く人」は従業員だけではなく、経営トップを含む経営層や管理職、派遣社員、請負業者など組織の事業活動に関わるすべての「働く人」を指しています。要求事項の流れは、業務内容の見直しを行なって業務手順を文書化し、方針・目標を設定、計画を策定し、定めたルールに従った運用と実施状況の評価と改善をする、すなわちPDCAによる継続的改善が要点になっています。

ISO45001認証取得・運用のメリット

ISO45001のメリットには、認証取得することによるメリットと、労働安全衛生のシステムを構築し運用することによって得られるメリットがあります。以下、具体的に説明しましょう。

なお、ISO45001ということではなく、ISOのマネジメントシステム規格全般を取得することによるメリットなどについては、関連記事のISOの認証取得・運用によるメリットとデメリットは?で紹介していますので参考にしてください。

認証取得することによるメリット

ISO9001やISO14001など他のマネジメントシステムにも共通して言えることですが、ISO45001の認証を取得するということだけで得られるメリットがあります。具体的には次のようなメリットです。

  • 企業の信頼性向上:認証を取得できたということは、労働安全衛生について継続的な改善を続けている企業であるということが認められたということです。そのことで企業評価が向上し、顧客や取引先、地域住民などのステークホルダーの信頼性も向上します。
  • 企業競争力の強化:企業の信頼性が向上することで、取引先が拡大し業績の伸張などが期待できます。そのことは企業体力や企業競争力の強化につながります。
  • 「働く人」の意識向上:ISO45001は従業員だけでなく、その組織に関わる全ての働く人を対象にしています。認証取得活動のなかでは、組織の全ての働く人の間で激しい議論が交わされることもあります。認証取得という一つの目標に向かっての活動のなかで働く人の意識が向上し、企業活動活性化の下地が出来上がります。

システム構築・運用によるメリット

ISO45001を認証取得して、労働安全衛生のマネジメントシステムを構築し運用していくことによって得られるメリットには次のようなものがあります。

  • 労働安全衛生に関するリスクの低減:職場の労働安全衛生上の問題や課題、危険源をリスクアセスメントなどで把握し、適切で迅速な対処や効果的な対応策、防止策を施してリスクの低減や管理を行なうことができます。
  • 労働安全衛生に関するコストの低減:ISO45001に基づくマネジメントシステムの継続的改善によって、業務が効率化し人的資源や経済的資源などの無駄なコストのカットを推進できます。無駄な予算のカットや保険料の削減などの他、長期的な視点でのコスト削減にもつなげることが期待できます。
  • 「働く人」の満足度向上:労働安全衛生の環境を整えることで企業と労働者との信頼関係が醸成され、働く人の満足度やモチベーションが向上します。そのことは離職率の低下や有利な採用活動などにもつながります。

ISO45001認証取得・運用のデメリット

一般的に、ISOのマネジメントシステム規格の認証取得・運用についての共通のデメリットとして次の2点が挙げられます。

  • マニュアルや文書、記録などの作成・維持する手間が大変
  • 運用・維持のための工数や審査費用などの負担が大変

しかし、審査費用の負担はありますがISO45001ではこれらのデメリットが顕在化することはあまりありません。

その要因には、ISO45001自体が労働安全衛生法の労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針に組み込まれていて、法令順守の一環になっているということがあるでしょう。つまり、ISO45001は正常な組織、企業が守らなければならない決まりごとを規定した規格なのです。

ISO45001の認証取得件数と取得企業

労働安全衛生

ISO45001は2018年に制定され、ISOマネジメントシステム規格では新しい規格なので、ISO9001やISO14001などに比べるとまだ認証取得件数は少ないですが年々急速に件数も増加しています。

国内の認証取得件数は、日本の認証審査機関を統括する(財)日本適合性認定協会(JAB)の統計から確認することができます。2019年3月時点で1599件、2020年12月で2061件の認証取得件数データがあります。ISO9001、ISO14001、情報セキュリティのISO27001に次いで4番目の件数です。2018年以前からの規格OHSAS18001から移行する企業もあるので、今後も件数は増えるでしょう。

世界の認証取得件数は、ISO本部のウェブサイト「ISO Survey」にあるfull Survey dataで確認することができます。下表に示すように、年々4~5倍のペースで件数が増加しています。

表.ISO45001世界の認証取得件数推移グラフ
表.ISO45001世界の認証取得件数推移グラフ(THE ISO SURVEYより集計)

2020年の約25万件は、情報セキュリティのISO27001を抜いて、ISO9001、ISO14001に次ぐ3位の件数です。ISO14001の約57万件を近い将来抜く可能性もあります。

ではこのように認証取得件数が急増しているISO45001はどのような企業が取得しているのでしょうか?労働安全衛生と言うと、危険が目に見える建設会社や多量の危険物を扱う製造業などがまず想定されますが、実際は全産業に広がりつつあります。ISO45001が「働く人」の安全と健康に関わる規格だからです。働き方改革が全産業に対して提唱されていることと同じことでしょう。

ISO45001のよくある質問

ISO45001に関連するよくある質問をまとめましたので参考にしてください。

労働安全衛生でリスクとして考慮しなければならない危険源にはどのようなものがありますか?
危険源(hazard)というのは負傷あるいは疾病を引き起こす潜在的な根源のことです。
負傷の原因になるものには、鋭利な刃物や回転体、高温の物体などがあります。
疾病の原因になるものには、粉じんや騒音、化学物質、いじめ、ハラスメントなどがあります。リスクが少なくなるように危険源を適切に管理する必要があります。

ISO45001を認証取得するには、衛生管理者や安全管理者、産業医などの任命、設置が必要ですか?
事業所の規模などによります。
衛生管理者や安全管理者の選任は労働安全衛生法で義務付けられていることで、ISO45001では法令を順守することが要求されています。
労働安全衛生法では事業場の規模などによって衛生管理者などの選任を要求しています。例えば衛生管理者は労働者数が50~200人であれば1人、201~500人であれば2人の衛生管理者の選任を要求しています。
また、安全管理者は各種の業種ごとに選任が義務付けられる労働者数が定められています。
リスクの高い業種は少ない労働者数でも安全管理者が必要です。
衛生管理者などの要件は厚生労働省のサイトを参考にしてください。

労働安全衛生マネジメントシステムの必要性は解りましたが、実際に労働災害というのは年間でどのくらい発生しているのですか?
労働災害発生状況は厚生労働省でデータを公表しています。
2020年のデータでは、死亡者数802人、休業4日以上の死傷者数131,156人となっています(下記リンク)。
統計の範囲では1970年代のピークから1/3~1/4に減少しています。休業4日以上の死傷者数では、第三次産業が最も多くその半数を占めています。
次に製造業、運送事業、建設業の順ですが、あらゆる業種で労働災害のリスクが潜んでいることが解ります。

【厚生労働省】令和2年の労働災害発生状況を公表 

まとめ

ISO45001の認証取得によるメリットは、労働安全衛生に関するリスクの低減やコストの低減の他、働く人の満足度向上、企業の信頼性向上や競争力強化などさまざまなものがあります。また、認証取得の活動のなかでは働く人の意識が向上し、企業活動活性化の下地が出来上がります。ISO45001の要求事項は労働安全衛生法の指針にも組み込まれています。ブラックではない正常な組織、企業が順守すべき決まりごとを規定した規格なので、この規格を取得、運用することによるデメリットはあまりありません。

ISO45001は特定の業種ではなく全ての業種で活用できる規格で、認証取得企業数もISOの他の規格に比べて高い増加率で推移しています。「働く人」の健康と安全を確保し、健全なマネジメントシステムを構築できるのがISO45001です。認証の取得を検討してみることを、是非お薦めします。

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