ISO22000のリスクと機会への取り組みについて解説!実務に落とし込むポイントは?

ISO22000のリスクと機会への取り組みについて解説!実務に落とし込むポイントは? ISO全般

本記事ではISO22000:2018から新しく登場したリスクと機会への取り組みについて解説致します。リスクと機会は組織を取り巻く状況によって大きく変わるので、慎重な分析が必要になります。

ISO22000:2018のリスクと機会への取り組みとは?

ISO22000におけるリスクと機会への取り組みについて解説します。この要求事項は2018年版から新しく追加されました。ISO9001でもリスクと機会の要求事項はありますが、自組織を取り巻くリスクと機会から活動を方針立てる流れはISO22000も同じです。

なぜ共通の章立てにされたのかというと、ISOがハイレベルストラクチャー(以下略:HLS)をマネジメントシステムの共通様式として採用すると発表したからです。HLSを共通様式とすることで他規格もその章立てに合わせる必要があり、ISO22000にもリスクと機会の取り組みの要求事項が設けられたのです。

ISO22000:2018の規格改訂の経緯

ISO22000:2018の規格改訂の経緯

初版であるISO22000:2005が発表されてから現在の2018年規格が作られるまで、何度か改訂の機会がありました。その間にISO9001が規格更新されたりFSSC22000が出てきたりとISO22000を取り巻く状況には多くの変化がありました。

最初に見直しの検討が行われたのは2009年でしたが、ISO22000の初版から4年しか経過していない状況での規格更新はISO22000を導入したての企業に混乱を招く恐れがあるという理由で見送られてきたのです。

その後にFSSC22000のPAS220が発行されて、今まで項目だけであった食品製造業者が取り組むべき前提条件プログラムが明確になりました。ISO22000もその後に弱点を補う形で規格がブラッシュアップされたのです。

ISO22000:2018の要求事項におけるリスクと機会の定義について

次にISO22000要求事項におけるリスクと機会の定義について解説致します。まずリスクとは顕在化していないが放置しておくと問題になりそうな事項を指します。

一方で機会とは、リスクと反対の意味合いで用いられる言葉で目標の達成に有利に働く事態を指します。ビジネスで例えるのであれば、リスクとは会社にとってマイナスに働く可能性のある状況で、機会はプラスのチャンスになりえる状況と言えます。

リスクと一緒に用いられる言葉として課題があります。

課題とは、顧客クレームや設計上不安な部分など既に顕在化している事項を指します。組織の資源には限りがあり、どの課題をリスクと捉えて対処するかは経営判断になりますが、組織の存続を揺るがすまでに発展しそうな問題があった場合は、それをリスクと判定して対策する必要があります。

これまで大きなニュースになった事件は、リスク認識の甘さが原因になったものが殆どです。

ISO22000:2018のリスクと機会の要求事項について

Risk

次にISO22000:2018のリスクと機会の要求事項について解説します。

まず、何のためのリスクと課題事項を決定すべきかというと、以下の3つです。

  • 食品安全マネジメントシステムの予定する結果を成し遂げるため
  • 食品安全上望ましくない影響を防ぐため
  • 継続的改善を達成するため

これらを組織及を取り巻く状況や、利害関係者のニーズを元にリスクと機会を決定するのです。

ISO22000:2018ではリスクと機会を特定することを要求していますが、この要求は食品安全マネジメントシステムのパフォーマンスに影響を与えるものに限定されています。よってHACCPの様に食品事業者内のリスクに限定するのではなく、フードチェーン全体で発生するリスクを想定する必要があります。つまり組織を取り巻く状況から、農場から食卓までの全ての工程に悪影響を及ぼしそうなリスクを特定する必要があるということです。

食品メーカーの場合、組織の活動は食品安全システムと連動していることが殆どですので、組織のPDCAが食品安全マネジメントシステムにも連動することになります。リスクと機会の特定は組織を取り巻く状況によって大きく変わってきますし、リスクと機会が明らかになって組織の方針も決まります。また継続的改善を達成するには、発生した不適合に対して是正するための活動をする必要があり、課題に対して計画を確り立てて管理する必要があります。

ISO22000:2018の具体的なリスク例は?

食品安全の具体的なリスクを挙げた場合、ISO22000はフードチェーン全ての工程でのリスクを考慮する必要がある為、適用範囲が広範囲に及びます。食品安全の具体的なリスクについては以下が挙げられます。

  • 使用原材料に関するリスク
  • 社内ルールや管理基準等の不徹底による不適合流出のリスク
  • 従業員の力量不足に関するリスク
  • 製品出荷後の管理不備によるリスク
  • 製造機器の整備不良に起因するリスク

以下で解説して行きます。

使用原材料に関するリスク

食品原材料

使用原材料に関するリスクについてですが、これにはHACCPに登場する生物的危害、化学的危害、物理的危害を中心に考えると良いでしょう。

具体的に使用原材料に関するリスクはHACCPに登場する食品安全ハザードと、製造工程上発生しうるハザードを中心に考慮する必要があります。生物的危害であれば食中毒菌の混入であったり、工程上の管理不備による食中毒菌の増殖などが挙げられます。化学的危害については残留農薬や洗浄剤のすすぎ残しなどがあります。物理的危害については石やガラスなどの硬質異物の混入などがあります。

原材料に由来するリスクは数多くあるので、原材料の選定時や製造工程上でリスクを消し込む必要があります。納入する原材料にリスクがないかどうか、供給者を確り吟味する必要があるということです。

社内ルールや管理基準等の不徹底による不適合流出のリスク

ウェルシュ菌 Clostridium perfringens

次に社内ルールや基準の不徹底により不適合品が発生するリスクについてです。例えば食品製造業者内部で発生しがちなリスクとして、現場でルールが徹底されないことにより食中毒が発生する事例があります。

最近発生した事例として、冬季に発生した仕出し弁当屋でのウェルシュ菌食中毒事例があります。食中毒の少ない冬であることに安心して加熱調理済みの食材管理ルールが徹底されず、室温で食中毒が発生しやすい緩慢冷却をしてしまったことでウェルシュ菌が増殖したことが原因でした。

決められたルールが守られていないことや従業員の認識の甘さが大きな事故の原因となるので、組織できちんとリスクを管理できるように心がけましょう。

従業員の力量不足に関するリスク

食肉工場

食品安全のリスクとして想定されるものの中には、従業員の力量不足に関するリスクが挙げられます。これは社内ルールの不徹底とも重なりますが、よくある例としては交差汚染対策の不徹底などが挙げられます。

肉の焼成工程を例にとりましょう。加熱前の肉をロータリー釜に入れて、取り出しも同じ場所で取り出す焼成工程があるとした場合、取り出しに使う製造機器は生肉用に使用したものと使い分ける必要があります。当然加熱後の危害が取れた後の肉は清潔品になりますので、生肉の触れた製造機器が触れるとサルモネラ菌に汚染されます。

このルールがどうして運用されているのかを作業を行う従業員が理解している必要があるのです。過去に発生した乳業メーカーの黄色ブドウ球菌による食中毒事件も最終的な判断を下す管理者が黄色ブドウ球菌の特性と、毒素の耐熱性についての知識があればあそこまで大きな事故にはならなかったはずです。

製品出荷後の管理不備によるリスク

また食品製造業者から出荷された後の商品管理も確実に行う必要があります。最近はコールドチェーンなど全流通過程の温度管理を行うシステムが一般的になってきましたが、出荷時には問題なくても店舗に納入した後に冷蔵庫が故障してトラブルに繋がるといったことは良くあります。

フードチェーンの全てでリスク管理が出来るように、トラブルをきっかけにPDCAを回して運用を改善していく必要があります。組織は発生した不適合に対して原因を追究して改善につなげる活動を行うことが規格でも要求されています。

製造機器の整備不良に起因するリスク

製造機器の整備不良に起因するリスクについてですが、これらは定期点検や始業終業時点検で確認しておきたいところです。特にCCPに関わるものについては問題があって正しく測定できなかった場合、安全な商品が出荷できていないことになります。

具体的な例を挙げると製造用の釜の熱源や温度計が正しく機能していなかったり、金属検出器が正しく金属異物を検出しないなどということです。釜であれば作業通りに起動させて問題なく昇温するかを校正した温度計で測定確認したり、金属検出器であればテストピースを問題なく検知するか、もしくは検知後に不適合品を確実にラインから外すフリッパーが問題なく作動するかなどを確認すべきでしょう。メンテナンスが必要であればその機器は使用せずに業者に点検してもらう必要があります。

リスクと機会はどこから考慮すべきか?

リスクと機会を明確にする為に、ISO22000では組織及びその状況の理解が重要であると説いています。組織及びその状況の理解には食品安全マネジメントシステムのパフォーマンスと有効性に影響を与える事項は全て考慮する必要があります。

具体的には4.1項の組織内外の課題と、4.2項の利害関係者の要求事項を元に重要度に応じて明確化することになります。

組織及びその状況の理解の内容

組織及びその状況の理解の項目では、食品安全と顧客満足を得るために必要な事項を決めることになります。

具体的には組織が置かれている状況や組織の位置づけ、顧客や利害関係者の要求事項の把握、組織の理念やビジョン、提供する製品やサービスの明確化、食品安全マネジメントシステムの適用範囲と構築などが挙げられます。これらを元に組織の内部、外部の課題を明確にします。組織とその状況の理解が明確であれば、より的確なリスクを洗い出すことができるのです。

リスクと機会を決定した後はどうすればいいのか?

PDCAサイクル

組織のリスクと機会を決定した後は、6.1.2項でリスク及び機会へどの様に取り組むのかを決定し、PDCAを回すことが出来るように計画立てる必要があります。それにはリスクや機会の取り組みを食品安全マネジメントシステムに取り込み、有効性の評価を行う必要があります。評価されたリスクや機会への対処方法としては、関わらないように回避したり、発生しないように対処したり、そのまま容認することが挙げられます。

次に食品安全マネジメントシステムの目標を立てて、それを達成するための計画を立てる必要があります。目標立てのポイントは食品安全マネジメントシステムの方針に整合した内容になっているかということや、その方針や目標が従業員に周知されているかが挙げられます。策定される目標はより判定しやすいものが好ましいです。

例えば目標を「良品製造を行う」、「食材を清潔に保つ」というだけでは不明確な目標になってしまい、達成度合いが判定しづらいです。一方、クレーム率を5%までに抑えるという目標であったり、トッピング工程で一般生菌数を10000/g以下に抑えるという目標であればより具体的で効果を判定することも出来ます。

まとめ

今回はISO22000:2018のリスクと機会について具体的にすべきことを解説しました。まずは自組織を取り巻く状況を確り見定めることが重要になりますので、正確なリスクと機会の洗い出しの為にもじっくり取り組んでみましょう。

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