ISO認証返上による企業のメリットとデメリットを考える

ISO認証返上による企業のメリットとデメリットを考える ISO全般

ISO(国際標準化機構)で構築されたISO規格が国際的に認知されるようになった頃から、多くの企業が購買先に対してISO9001やISO14001認証取得を取引条件とするようになりました。その結果、ISO9001の導入が始まった2000年前後から、ISO9001やISO14001規格を組織のマネジメントシステムとして導入し認証を取得する企業が一気に増えました。

ISO9001やISO14001の初版規格で認証取得した企業は20年近く経ちますが、ISO規格改訂のたびに組織のマネジメントシステムも見直し、ISOを組織の活動としてうまく取り入れている企業があります。その一方で、ISO規格で構築したマネジメントシステム活動と組織の活動が分離して運用されていて、通常業務のほかにISOの活動に対して多くの工数を割いている企業も見られます。このようにISO活動が分離し業務負担になっている企業にとってはISO認証の返上も選択肢に入ってくるようになりました。

それでは、現在はISO認証を維持しているものの認証を返上することにより、どのような問題が発生してくるものなのでしょうか。

この記事では、ISO認証返上に関する概要として以下を説明しています。

  • なぜISO認証返上する企業が増えているのか?
  • ISO認証返上によるメリット
  • ISO認証返上jによるデメリット

ISO認証維持しているものの返上するかどうかを悩んでいる組織の方は、ぜひこの記事をご覧ください。

なぜISO認証返上する企業が増えているのか?

増加傾向の理由

ISO9001やISO14001認証を取得し、組織の通常業務のなかにISO規格をうまく取り入れ、仕事の一環として運用できている企業もあれば、ISOに関する活動と通常業務が分離してしまい両方の仕事に工数がかかりISO活動自体が課題となっている企業もあります。

ISO活動が分離している企業では、認証維持費用や業務の工数などの経費が無駄に見え、ISO認証維持しているメリットは感じられないことから返上することも検討されますが、顧客との取引条件のなかにISO認証取得が入っていると返上することはできません。

そのような状況にあるにも関わらず、最近はISO認証を返上する企業が増えてきているのも事実です。なぜISO認証返上が可能なのでしょうか。

大きな理由としては、顧客自体がISO認証のメリットを感じておらず、取引先へもISO認証取得を条件にしない企業が増えてきているからです。特に日本国内の大手企業では、組織独自の品質や環境のマネジメントシステムが効果的に運用されており、ISO規格を取り入れなくても十分に継続的改善が進み利益を生む体制が整っています。よって、取引先もその大手企業のマネジメントシステム改善活動を学び取り組めば同様に利益を生む健全な体制を整えることができると考えています。国内大手企業では、自社の組織改善活動発表会などに取引先を招待し、改善活動の仕方の学びの機会を与えているところもあります。そのような企業は、品質や環境に対しての組織独自の顧客要求仕様などを取引先に提示し、その要求仕様を順守することを求めています。組織に対して顧客から提示される購買条件として、顧客要求仕様の順守が必須でISO認証取得は任意であれば、顧客に寄り添うことが優先となり、ISO認証返上に踏み切っても問題ないということになるでしょう。特に、日本国内企業ではこのような動きがここ数年で活発化してきており、ISO認証返上に踏み切る企業が増えてきています。

それでは、ISO認証返上することにより組織としてその後のマネジメントシステム活動で問題は発生しないのでしょうか。

これから、ISO認証返上によるメリットとデメリットを考え、ISO認証返上が組織に与える影響を見ていきましょう。

ISO認証返上によるメリットは?

メリット

ISO認証を返上しようと考えている企業では、返上することによるリスク分析と評価を行うと思いますが、その時に必ずメリットとデメリットを考えなければなりません。

まずは、ISO認証返上による組織のメリットを考えてみましょう。

メリット①:ISO認証維持経費削減

ISO認証を維持するためには、1年ごとに定期及び更新審査を受審し維持する費用がかかります。企業の大きさにより維持費用は変わりますが、認証維持している企業は決して安くない費用を年間経費として計上し支払っています。

返上することによりISO認証維持費用は不要となりますので、その維持費用を削減することができます。

メリット②:顧客に寄り添ったマネジメントシステム構築が可能

顧客が独自で購買先に要求する品質や環境の仕様は、各企業でそれぞれ異なります。特に、製品やサービスに対して品質や環境の顧客基準が高いと、要求仕様はそれだけ高いものとなります。要求仕様が高い顧客は、その仕様通りに運用されているかを顧客監査を通して確認することになります。顧客との取引を確実にするためには、その仕様を取り入れた品質マネジメントシステム(QMS)や環境マネジメントシステム(EMS)などの仕組みを構築し、顧客監査へ合格しなければなりません。

顧客からISO認証取得の条件がなければ、ISO規格に基づいたマネジメントシステムを構築する必要はないので、顧客の要求仕様に沿ったマネジメントシステムを構築することができます。

メリット③:内部監査及びISO認証登録機関審査工数の削減

ISO規格は、内部監査の実施を要求しています。よって、ISO認証取得の間は、ISO規格を満足する必要があるので、ISO認証登録機関の定期審査や更新審査時には内部監査の実績を報告する必要があります。

ISO認証を返上すればISO規格である内部監査要求に縛られないので、内部監査実施は不要となり、その工数は削減することができます。

またISO認証維持のためのISO認証登録機関の定期審査や更新審査を受審する必要がないため、審査前準備、審査及び審査員への対応、そして審査後の是正対応などの工数を削減することができます。

ISO認証返上によるデメリットは?

デメリット

前章ではISO認証返上によるメリットを見てきました。それでは、ISO認証返上についてはメリットだけがあるのでしょうか。必ずしもそうではありません。

これから、ISO認証返上によるデメリットを見ていきましょう。

デメリット①:ISO認証取得条件の顧客との取引難易度アップ

先の述べたように、日本国内では取引先への条件としてISO認証取得を必須にしていない企業がありますが、海外企業は国際規格であるISO認証取得していることを取引先の必須条件にしているところがほとんどです。よって、海外との取引をその後のビジネス視野に入れている組織は、ISO認証返上してしまうと、取引したいと思っても顧客取引選択の中にも入れないことになります。日本国内でもISO認証取得を必須にしていない企業はほんの一部であり、ISO認証取得を取引条件として必須項目としている企業が大半を占めております。国内ビジネスとして多くの企業に対して拡販を考えている組織にとっては、ISO認証返上が不利に働くことが現実的なところです。

デメリット②:ISO再認証取得時の負担が増加

社内で困るメンバー

組織としてISO認証を返上した場合を考えてみましょう。ISO認証を返上するとISO規格に触れる機会はなくなります。よって、ISO活動は維持するとのマネジメント層の強い意志がない限り、必然的に組織のマネジメントシステムは組織独自の形に変化していくことになります。

その後のビジネス展開で、取引条件にISO認証取得が必須の企業と取引を進めたいとなった場合には、ISO再認証取得を進めないといけません。ISO規格から離れていると組織のマネジメントシステムが変化している可能性が高く、再認証のために再度、マネジメントシステムを大きく修正する必要があり、多くの工数と費用がかかることになります。

デメリット③:マネジメントシステムと経営管理の分離

ISO規格要求事項はPDCAサイクルで構成されており、方針決定、目的・目標及び計画策定、実行、検証そしてレビューの流れでマネジメントシステムも管理されることから、組織内の一連の活動がそのまま経営管理に直結します。

しかし、ISO認証を返上すると、PDCAサイクルのISO規格から離れることになり、目の前の会社実益の経営管理となる可能性が高くなります。そうなると、ISOの求める長期を見据えた改善のスパイラルアップの考え方から、単期の売上や利益を求める経営体制となり将来的に向かうべき方向性が毎年変化してしまうため、改善が思うように進まなくなることが考えられます。

デメリット④:文書と記録が放置されやすい

書類の放置

ISO規格要求事項では、作成し維持管理が必要となる文書や記録が明確になっており、変化点発生時の見直しや定期的にチェックすることを求めています。よって、ISO認証している間は文書や記録の見直しタイミングでチェックすることになり、現状管理と不整合があれば修正することになります。

しかし、ISO認証を返上すると、文書及び記録の管理の規格要求に縛られることがなくなるため、仮に不適合が発生した際に、是正処置は行うものの、それらが記載された手順書などは改訂されずに、次第と実作業とのかい離が生じてくることになります。結果として、数年も経つと、手順書内容と実作業との整合が取れないことから、生きた文書として有効活用ができず、かつ教育のツールとしても使用できなくなります。ISO認証開始時から残してきた記録類についても、認証返上の後は記録要求の縛りがないことから、記録するやり方について各担当者で変化していく可能性があり、不具合発生時のトレース確認時に重要な記録要素が得られないとの事態が生じることも予想されます。

デメリット⑤:内部監査機能がなくなる

ISO規格要求事項では、内部監査の実施を要求しています。よって、ISO認証取得している企業では、最低でも年に1回は内部監査を実施します。

ISO認証を返上すると、ISO規格要求に縛られないため、マネジメント層が組織活動として内部監査を必要と判断し事務局をサポートしない限りは確実に実施しなくなります。イベント的な内部監査であれば実施不要でしょうが、各部署のマネジメントシステムが有効に機能しているかに視点をあて、計画実施する内部監査であれば大変有効であり、組織全体の引き締めとチェック機能としては大切な活動です。ISO認証返上によりその重要な内部監査機能がなくなるのは、組織にとっては大きなデメリットになるといえます。

有効な内部監査の仕方については、関連記事ISO9001内部監査の進め方-現場の内部監査員から見た重要ポイントでまとめています。ISO9001を中心に記載していますが、考え方としてはISO全般に応用可能な内容ですので、ぜひ参考にしてください。

デメリット⑥:ISO認証登録機関審査によるマネジメントシステムチェック機能がなくなる

ISO認証を返上すると、当然ですが外部審査がなくなります。認証登録機関からの審査がなくなると、審査員が組織のマネジメントシステムを客観的に見て審査する機会が完全になくなります。そうなると、顧客監査がマネジメントシステムをチェックする機会になりますが、顧客は顧客視点での監査となるため、組織全体を見据えたチェック機能にはなりません。顧客数が多いとそれだけの顧客要求があるため、その要求を組織活動に取り入れ続けていくと負担ばかりが増えていきます。

認証登録機関の審査を受審していると、ISOに関わる専門審査員の目を通して組織のマネジメントシステムがチェックされたことを証明することができ、顧客に安心感を与えることができます。ISO認証返上により、マネジメントシステムに対してのISO専門審査員からの第3者的なチェック機能を失うだけでなく、顧客への対応負荷が増えていくデメリットを抱えています。

ISO監査に関して具体的に知りたい方は、関連記事ISO監査とは?内部監査と外部監査の違い、メリットとデメリットは?でまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

まとめ

この記事では、ISO認証返上による企業のメリットとデメリットを解説してきました。

ISO認証を返上するとの方針は、各企業でマネジメント層が決定することなので否定はしませんが、国際規格であるISO認証をせっかく取得したのに返上することは、先に述べたようにデメリットが多く、その後のビジネスとしてリスクが増えてくる可能性が高いと考えます。

ISO活動で成功している企業から学んだり、コンサルタントに相談し有効なマネジメントシステム運用方法をコンサルティングしてもらうなど、ISO認証状態を効果的に維持できるよう前向きに活動に取り組んでみてください。

ISO認証取得支援のコンサルタントの内容、選び方など詳細はこちらをご参考ください。【ISOのコンサル会社がサポートする内容は?コンサルタントを活用してISOを取得・運用する背景

ISO認証取得による企業価値を再度見直したい方は、関連記事ISOのメリットは?その1:認証取得、導入による企業価値の向上を参考にしてください。

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この記事を書いたライター
小一郎秀長

ISO9001(1994年度版)導入に続きISO14001(1996年度版)導入において、ISO事務局委員長として会社の認証取得に貢献。その後のISO改訂時には、後輩育成のためにISO事務局へのアドバイザーとしてサポート。
現在はISO9001/IATF16949の維持管理に従事中。
戦国時代をこよなく愛し、尊敬するのは豊臣秀長。連休は城址廻りでリフレッシュ。

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