HACCPに重要な温度管理について解説!温度計校正や記録の残し方のポイントは?

HACCPに重要な温度管理について解説!温度計校正や記録の残し方のポイントは? HACCP

年明けに、仕出し弁当屋さんで食中毒が発生したのは記憶に新しいですが、食中毒は夏場だけのものではなく、温度管理が甘ければ気温の低い冬場でも発生します。季節を問わず、食中毒を防ぐためには温度管理のポイントを理解して適切に管理することが重要になります。

本記事では、HACCPの温度管理のポイントについて解説します。

日々、HACCPに取り組む皆さんの中にも、以下のような疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか?

  • HACCPは温度管理が大きなポイントというが、具体的にどういうこと?
  • 温度管理での記録の残し方について

記事で1つずつ解説していきます。

HACCPにおいて温度管理はなぜ重要なのか?

HACCPの管理項目として温度管理をイメージされる方は多いと思いますが、温度管理が重要なのは食中毒の発生に大きく関わるからです。温度管理が不十分だと、当然ながら食中毒のリスクは高まります。

また、加熱冷却後に新たに空気中から入ってくる食中毒菌の存在もありますので、完全にブロックすることは不可能です。食品の加熱と冷却をスムーズに行うことは食中毒菌が仮に食品中に入ったとしても増殖を防ぐことに繋がるので、食中毒対策に温度管理をしっかり行うことは絶対条件なのです。

HACCPの温度管理はどの様な点に注意すればいい?

HACCPの温度管理の観点で、食品を加熱するということは、食品温度をCritical Limit(以下略:CL)まで昇温させることを指し、冷却することはCLまで下げることを指します。昇温時は温度が上がるにつれて、菌の生育条件が悪くなるので食品衛生の観点では好ましい状況になります。しかし食品を冷却する際は、環境によっては2次汚染などによる食中毒菌増加のリスクが発生してしまうので注意が必要です。

冒頭で解説した仕出し弁当屋さんで発生した食中毒の原因も冷却にありました。冬場なので問題ないと判断して、加熱後の食材をすぐに冷却しなかったことにより食品中に混入していたウェルシュ菌が増殖してしまったのです。

本来食中毒が発生しにくい冬場でも冷却が緩慢だとこのような事態が発生するので、加熱と冷却はセットで考えることが重要です。また、食品によって腐敗しやすいものとそうでないものがありますので、食品の特性を知ることも重要になります。

水分の少ない食品でも注意は必要ですが、水分を多く含む食品については微生物が自由に使える水が多くなるので腐敗が進みやすく、食中毒の発生も起こりやすくなりますので注意が必要です。

以上より、温度管理のポイントとしては、以下の4点が有効です。

  1. 温度をしっかり上げきる
  2. 加熱後に素早く冷却する
  3. 温度の測定場所も重要
  4. 冷却効率を上げるには余熱除去も効果的

以下で1つずつ解説していきます。

①温度をしっかり上げきる

HACCPの温度管理では、温度をCLまでしっかり上げきることが重要です。加熱のCLを確実にとることで、熱に弱い大部分の食中毒菌を死滅させることが出来ますが、全ての食中毒菌が死滅するわけではありません。

熱に強い芽胞菌のコントロールは冷却がポイントになります。冷却は菌のコントロールに非常に重要な要素になり、具体的には次に解説する冷却工程を抑えるべきです。

②加熱後に素早く冷却する

HACCPの温度管理は、加熱後に冷却のCLを素早くとることも重要です。芽胞菌などの熱で死なない食中毒菌を発現させないためには、素早く商品を冷却することが非常に重要になります。

図1を見て頂いても分かるように、20℃から50℃の温度はほとんどの微生物の生育にとって好適な温度帯です。温度帯と食中毒菌増殖の関係については、図1にありますのでご参照ください。

(図1.温度帯と食中毒菌増殖の関係)

加熱後の冷却工程では、20~50℃の菌が増殖しやすい温度帯をできるだけ短時間で通過させることが食中毒菌の増殖を抑えるために重要となります。

具体例として、厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルでは30分以内に20℃付近まで冷却、あるいは1時間以内に10℃付近まで冷却すると定められています。

実際に急速冷却方法を実現するためには、製品の製造数に見合った冷却設備の能力が必要になり、冷却が緩慢になると仕掛品が発生してしまいます。仕掛品は冷却設備になかなか入れないことになるので、菌が増殖するリスクが非常に高いのです。

③温度の測定場所も重要

HACCPの温度管理では、温度を測定する場所も重要になります。

厚生労働省の発行している大量調理施設衛生管理マニュアルや文献では、食中毒菌ごとの様々な加熱条件が記載されています。大量調理施設衛生管理マニュアルや文献に書かれた食中毒菌データを有効活用するためには正しい品温を測定する必要があります。

製造中の商品にも同じ製造機器内で品温のばらつきはあり、品温の測定を製造機器のどのポイントで行うかはHACCPの温度管理において重要な要素です。加熱のCLとして設定するには、製造機器のすべての部分でCLをクリアしている必要があります。よって、加熱工程であれば製造機器内で仕掛品の温度が最も上がりにくい部分、冷却工程であれば温度の下がりにくい部分で温度測定することが有効となり、製造機器内で最も温度が変動しにくい部分を測定すれば、他の部分は確実にCLをクリアしていると言えるからです。

CLに達した条件で食中毒菌が発生しないかを確認するためには、製品形態で消費期限まで保管した段階で検査して衛生状態を確認することがおすすめです。

④冷却効率を上げるには余熱除去も効果的

食品の冷却効率を上げるためには、冷却機器の出力を上げて冷却効率を上げることも手段ですが、冷却前に余熱を除去する工程を設ける手段もあります。

加熱と冷却のあとは一通り危害が取り除かれた後になるので、この段階で別の製造機器に食品が触れることは2次汚染のリスクになります。対策としては、日々の清掃や就業中の中間清掃などで衛生状態を確保することが2次汚染のリスクを減らすことに繋がりますので、確実に清掃は入れましょう。 冷却機器の負荷を減らして商品の滞留を減らすという目的でも効果的です。

HACCPの温度管理と食中毒事例

HACCPの温度管理と食中毒が関わる事例には、煮込み料理が挙げられます。食中毒菌の生育特性は様々であり、熱に弱いものもあれば強いものもあります。特にやっかいなのは、加熱時には熱に強い芽胞の形で休眠しているにもかかわらず、冷却中に発芽して食中毒を起こすものです。

これは芽胞菌と呼ばれ、カレーなどの煮込み料理でよく発生する食中毒で、代表的な食中毒菌としてウェルシュ菌が挙げられます。細菌が芽胞を一度形成すると100℃以下の加熱では殺菌できなくなります。缶詰の様に100℃以上のレトルト殺菌を行えば芽胞菌は死滅しますが、通常の調理殺菌では死滅しません。

調理加熱で死滅しないこれらの菌をどうすれば制御できるのかというと、確実な冷却により芽胞菌を発芽させないことが重要になります。

つまり、食中毒の原因となる芽胞を発芽しにくい条件まで温度下げるということです。

冷却時に食中毒菌の増殖しやすい温度帯を早期に通過させるためには、加熱後に冷却器に入れるまでの時間をできるだけ短くする方が良いです。加熱後の具材が冷却器の前で滞留している製造工場を見かけますが、加熱後の食材の滞留はどうしても緩慢冷却に繋りますし、更に商品の中に食中毒菌が混入した場合は2次汚染に繋がります。

緩慢冷却の対策として効果的なのは、製造スケジュールの見直しと冷却設備の増強です。間隔を空けるなどして製造スケジュールを調整することで解決できればいいのですが、どうしても難しい場合は冷却設備の増強が必要になります。

食品工場にある冷却機器は様々なものがありますが、広く一般的なものは差圧冷却器と真空冷却器です。差圧冷却は食品に冷風を吹き付けることで品温を下げるもので、真空冷却は食品を真空状態にして冷却するものです。

差圧冷却は冷却に時間がかかりますが、メリットとして多くの食品を一度に冷却することができます。真空冷却は少ないバッチしか入らないという欠点がありますが、メリットとして短い時間で食品を冷却することが出来ます。

HACCPでは温度管理に加えて、2次汚染にも注意する

加熱であっても冷却であってもCLをクリアした後に発生する2次汚染についても注意する必要があります。CLをクリアした後に発生する2次汚染については、汚染源をしっかり追跡することがHACCPにおいて重要になります。

具体的な追跡方法については、製品の検査結果が悪かった場合に同じロットを分解検査することです。それぞれのパーツの菌数を測定して、どのパーツの菌数が高いか確認することで汚染源を特定するのです。

よくあるのが冷蔵設備の結露や人の手が原因で商品の2次汚染が発生するということですが、定期的に人の手を検査したり、結露を拭きとったり、冷蔵設備を清掃したりと、日々のメンテナンスが食中毒防止には有効です。また、人の手についてはアルコールを定期的に使ったり、手袋を交換したりするなど一般衛生管理体制の強化が必要ですが、重要なのはそういったやりとりを現場にしっかりフィードバックするということです。

ふき取り検査の結果、手が汚かった人がいたとしても、そこで終わらせるのではなく、手が汚くなった原因を突き止めてその原因を根絶することが重要です。

例えば作業場の温度管理が甘いことが原因であれば直す必要がありますし、作業者が製造中にベルトコンベアを頻繁に触ることが原因で手が汚染されているのであれば、コンベアの洗浄方法を考察したり、コンベアに触らないルールを作る必要があります。汚染の要因を現場にフィードバックすることは非常に重要です。現場はどういった動きが汚染につながるのか情報が入るので、この繰り返しで現場力は徐々に上がっていきます。

CCP以外のHACCPに必要な温度管理方法

HACCPの温度管理では危害が取れた後の食品の保管条件も重要になります。家庭での調理では、調理した後に厳密に温度を管理したりすることはないと思いますが、食品工場の場合は温度記録や温度逸脱時の対応記録などが審査時に必要になります。

HACCPの温度管理では主に以下の2つのパターンで管理されるのが一般的です。

  1. 定期的に人間が温度を確認する
  2. クラウドなどの一括管理で温度をモニタリングする

以下で解説して行きます。

①定期的に人間が温度を確認する

大企業以外の殆どの食品メーカーは定期的に人間が温度を測定する手法をとっていると思います。連続的に記録を残せる温度計で冷蔵庫内の温度を測定して、1時間~2時間に1度、工程検査の中で目視確認して記録に残すというものです。

クラウドサービスほどお金が掛からないということがありますが、人間が記録にかける時間が多くなるということと、記録を紙で残さなくてはならないということと、温度の逸脱が発生した時に次回の巡回確認までその事実が分からないということが欠点です。

②クラウドなどの一括管理で温度をモニタリングする

一方、クラウド管理の場合は全て温度記録がモニタリングされます。HACCP審査で温度記録を求められた場合、モニタリングされた温度記録表があれば対応できますし、製造中に温度逸脱が発生した場合でも管理者に警報を飛ばすこともできますが、欠点としてはクラウドシステムを導入するのにコストがかかるという点です。

私がかつて所属していたとある会社の工場では、クラウドとアナログの間のシステムで、工場内の冷蔵庫温度を一括で管理していました。クラウドを導入せずともコストをかけずに運用する方法はあります。

HACCPの温度管理で使用する温度計について

HACCPの温度管理の中で、CCPを測定する温度計は校正されたものである必要があります。正確な温度計を使う必要があるということです。

温度計の校正には外部にアウトソースしたり、標準温度計を購入して自分達で行う必要がありますので、コストを抑えたいのであれば標準温度計を購入して、毎月の最初の日に測定するのが良いでしょう。

まとめ

本日はHACCPの温度管理について解説させて頂きました。夏場に食中毒を出してしまうと消費者だけでなく、食中毒を出したメーカーにとっても大打撃です。せっかく自社の製品を世の中に提供するという素晴らしい使命を果たしているのですから、ポイントを押さえて安全に製造して行きたいですよね!

ISOナビでは月額4万円から取得・運用を完全サポートしております。

HACCPやISMS、Pマーク、ISO9001をはじめとする各種規格の新規の認証取得から更新・運用までサポートしております。

業界最安級の月額4万円からご利用いただけ、対応工数のゼロ化を実現します。

まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いたライター
久坂精一

品質管理として社内の様々な事業部のISO22000、HACCP取得に向けて取り組みをしてきました。
現在は商品開発を担当。
趣味は学生の頃から継続しているマラソンで、2時間30分台が目標です。

久坂精一をフォローする
HACCP
ISOナビ
トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました