HACCPの考え方を取り入れた衛生管理とは?対象となる組織について解説

HACCP

HACCP義務化の中で事業者に課される管理方法には、HACCPに基づいた衛生管理とその考え方を取り入れた衛生管理の2つのパターンがあります。2つの衛生管理方法は、それぞれ方法や対象となる事業者が異なります。

そこでHACCPに取り組む皆さんの中にも、以下のような疑問をお持ちの方は多いと思います。

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理とは何か?

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を採り入れる対象となるのはどんな企業か?またその理由は?

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理と、HACCPに基づいた衛生管理とではどう違うのか?

実際にHACCPの考え方を取り入れた衛生管理を運用する場合、何を参考に活動すべきか?

それでは記事で1つ1つ説明していきましょう。

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理とは?

まずHACCPの考え方を取り入れた衛生管理がどの様な企業を対象としているか、設立の背景と管理手法について解説いたします。

世の中には様々な規模の食品提供者がありますが、すべてがHACCPにすぐ対応できるわけではありません。大手の食品メーカーであれば既にISOやHACCPに取り組んでいるので、知識の蓄積やノウハウがありますが、実際の日本の企業は両規格を採り入れていないところが殆どです。

限られた人員で事業運営をしている方々がHACCPに取り組むのは容易ではないのです。

そこで、HACCPの手順を少し簡略化されたアプローチを作り、まずはそのアプローチから日本の中小企業や飲食店に取り組んでもらおうという動きがあります。それがHACCPの考え方を取り入れた衛生管理なのです。

実際に2018年に改訂された食品衛生法では、すべての事業者に本来のHACCPに取り組むようは制定されておらず、食品衛生上のリスクが小さい組織には弾力的な運用を許可しているのです。

HACCPに基づいた衛生管理との違いは?

次に、より厳しい基準であるHACCPに基づいた衛生管理と、簡略化が許された衛生管理がどの様に異なるかについて解説していきます。

具体的な違いとしては、組織にHACCPを7原則12手順に沿って導入するか、簡略化されたアプローチで導入するかという点ですが、小規模の事業者であれば、まず7原則12手順に沿って衛生管理計画を作成することが難しくなってきます。

例えば、12手順には最初の手順としてHACCPチームを編成するというものがあります。大企業ではHACCPの手順としてチーム編成は何ら問題のない工程ですが、小規模事業者では数人で組織を回している企業も多く、チームを編成することも困難です。

少ない人数で無理にHACCPチームを編成する場合、衛生管理システムに無理が生じてしまいます。その結果、書面を作成したりするだけの意味のない管理になってしまうだけではなく、本来重視して管理しなくてはならないリスクを見逃してしまう可能性もあるのです。

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の対象となる組織は?

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理が導入できる組織についてですが、一般衛生管理の対応で管理が可能な業種や小規模事業者等が対象となっています。

対象となる一覧は表1にありますのでご参照ください。

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理
衛生管理手法公表されている手引書を参考に衛生管理を行う。
対象事業者①小規模な一般飲食店など、併設された店舗で小売り販売のみを目的とした菓子や豆腐などを製造・加工する事業者。

②スーパーマーケットなど、低温保存が必要な包装食品の販売等一般衛生のみの対応で管理が可能な業種。

③定食屋など、提供する食品の種類が多く、変更が頻繁な飲食店等の業種。
この場合、個別のメニューでHACCPを考えるのではなく、
・加熱しないもの
・加熱して提供するもの
・加熱後に冷却して再加熱するもの、または加熱後に冷却するもの
にグループ分けしてHACCPを取り入れやすくしている。
表1.HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の対象事業者一覧について

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理は具体的に何を参考にすべきか?

多くの方が疑問に思われるのは、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を具体的に自分の業態でどうやって取り入れるのかということかと思いますが、業態ごとにマニュアル(手引書)が発行されています。

すべての業態のマニュアルが作られているわけではありませんが、厚生労働省のウェブサイトに、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書というタイトルで入っているので、是非参考にしてみてください。

マニュアルの中で具体的にどんな流れでHACCP構築を行うのかと言うと、以下の流れで行います。

①衛生管理計画の作成

②衛生管理計画に基づいた実行

③記録の作成

④記録の保管、衛生管理計画の見直し

以下で1つずつ解説して行きます。

①衛生管理計画の作成

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の具体的手順の1つである衛生管理計画とは、事業所内でどの様な衛生管理をしていくのかをまとめたものになります。

手引書に実際に書かれているのは、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理計画の雛形になります。この雛形は大きく2つのパートに分かれており、1つは一般衛生管理についての部分で、もう1つはHACCPの考え方を取り入れて重点的に管理する部分です。

一般衛生管理については、CODEX HACCPやISO22000にも前提条件として設定されているもので、いわゆるPrerequisite Program(以下略:PP)に当たるものです。社内の衛生意識が高い事業者ほど、PPの順守率が高いのが様々な組織を審査していて感じる特徴です。

PPについては、食品メーカーであればこれまでに製造室への入室や手洗い方法などをマニュアルにするなど何らかの形で作成している場合も多いでしょう。

雛形でもHACCPの考え方を取り入れたものについては従来までの管理で十分であればそのまま利用するのも良いですし、不足している部分があれば手引書を見て自社の衛生管理に必要な部分を追加していきましょう。

一般衛生管理の主な記載内容の具体例には以下のようなものがあります。

・原材料の管理

・従業員の管理

・製造環境の管理

・整理整頓、清掃状態、虫の侵入など

以下で1つずつ解説していきます。

原材料の管理

原材料の管理では、まず受け入れ時の状態(野菜の虫食いなど)や、納入時の温度や汚染状態などを記録します。悪い原材料を見極めたりすることで、目視でも確認できる不良原材料を確認できるだけでなく、食材の初発菌数を下げることにもなります。

初発菌数を下げることは、Clitical Control Pont(以下略:CCP)で確実に菌数を落とす手助けにもなり、初発菌数が高い状態でCCPを取った場合、危害が残る可能性があるのです。

例えば野菜の洗浄を例に挙げると、青ネギの洗浄などがあります。野菜には土や小石が挟まれており、これらを1次洗浄により取り除き、2次洗浄で殺菌することで消費期限を保証するまでの商品が出来上がります。

1次洗浄がCCPでないからという理由で中途半端になってしまったり、状態の悪い青ネギを入荷してしまった場合、CLをクリアしても危害を取り切れない可能性があるのです。

従業員の管理

2次汚染や異物混入の防止のために、従業員の管理も重要です。外から衣服を介して虫を持ち込むこともある為、害虫の持ち込み確認、手指チェック、頭髪チェック、体調確認(発熱の有無など)、毎月の検便の提出などを徹底します。

食品メーカーでは異物混入対策として、入場時に従業員の全身が映る大きな鏡が置かれていたり、作業着に着替える前にエアシャワーや除電のれんがついていることもあります。

製造環境の管理

製造環境の管理も重要になります。

CLをクリアして確実に原材料の危害を取り除くためには、初発の菌数を極力下げておくことが重要と述べました。その為に重要になるのが整理、整頓、清掃、洗浄、殺菌、躾、清潔(以下略:7S)の遵守や、7Sを支えるための現場の陽圧管理、水質確認などの基本条件になります。7Sの重要性は図1に示してあります。

図1.食品衛生7Sのフロー

7Sは工業分野で用いられる5Sを食品仕様にしたもので、作業効率の向上を目的とした5Sとは目的が異なります。

食品メーカーで製造環境を管理することで重要な要素として清潔であることが挙げられますが、清潔な製造環境を実現して世の中に安全・安心な食品を提供する為に考案された考え方が7Sなのです。

7Sは清潔の他に、整理、整頓、清掃、洗浄、殺菌で構成されており、清潔、整理、整頓、清掃、洗浄、殺菌を維持するために必要になってくるのが躾なのです。

整理整頓、清掃状態、虫等の侵入など

整理整頓、清掃状態、虫等の侵入については、機械設備等の管理(始業・就業点検)、防虫業者のインスペクションレポートなどが当たります。

整理整頓、清掃状態、虫等の侵入については前項の7Sにも関係するところですが、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理でも検討する必要があります。

工程については手引書でモデルが示されているケースが多いので、参考にして自社の製造工程に合わせて作成しましょう。各製品の特徴に応じた具体的な内容は手引書の中で示されていますので、手引書を参考にCCPとなる工程とCCPをどう管理するかを決めます。具体的には殺菌工程や加熱工程、金属検出工程など、重点管理する工程を決めて管理します。例えば、加熱であれば温度と時間によるチェック、または金属検出であれば機械によるチェックが、CCP管理になります。

②衛生管理計画に基づいた実行

衛生管理計画に基づいた実行も重要になります。

衛生管理計画をより確実にするためには、CCPなどの重要な工程にはある程度熟練した人員を配置する必要があります。そのためには従業員の誰もが同じレベルで行えるように教育することが重要となりますので、教育を継続することと、力量が一覧で明確になるような仕組みが必要です。力量が一覧で確認できるスキルマップなどを作成しておくと良いです。

また、審査ではスキルマップでスキルがあると判断された方はヒアリングの対象となりますので、自分の業務が食品安全上どれだけ重要なのかを本人に認識してもらうことが重要です。

③記録の作成

衛生管理計画がきちんと実行できているかを確認するためには、記録の作成が大切になります。

普段何も問題がなければ記録をきちんとつけるのは面倒だと感じますが、適切に製造または調理ができていることを後で確認したり、今後の改善点を見つけたりする際に記録は重宝します。先に述べた従業員の教育についても、教育記録を作成しておくと良いでしょう。

正しく実行できていることが見える化できていると、日々の自信にもつながります。

日々の記録をきちんと行うためには、誰が記録をするのか担当を明確に決めておくことが大切です。

④記録の保管

記録の保管も重要です。記録を作成してきちんと保管しておくことで、後で振り返って改善につなげることができます。

また万が一のクレームが発生した時などに社内外に経緯などを説明することもできますし、自組織に問題があるのか否かを判断する証拠となることもあります。私自身クレーム対応も行ってきましたが、悪質なクレームや明らかに出荷や販売した以降に問題が発生したと疑われるケースでは非常に役に立ち、記録があったおかげで助けられたことが実際数多くあります。

専用のファイルを作成して、保管期限も決めておきましょう。HACCPを受診する場合は、書類の保管期限のルールが色々あるのでよく確認して保管ルールを決めておくといいでしょう。

⑤衛生管理計画の見直し

衛生管理計画は永久に使える完璧なものを作成することは困難です。現在流行している感染症も企業を取り巻く新たな要因ですし、食中毒も毎年同じ食中毒だけが多いとも限りません。ライフスタイルの変化やこれまで使われてこなかった食材が使われるようになることで、食品危害も変化し、企業が打つべき対策もその都度変わってくるのです。

運用していく中での見直しや、法令改正や技術の進歩などに応じて更新していく必要があります。半年毎や1年毎など見直すタイミングを決めておくと良いでしょう。

まとめ

今回はHACCPの考え方を取り入れた衛生管理について解説してみました。まずは自組織の取り扱う商材に合わせた手順書を手に入れて衛生管理計画を作ってみましょう。

また、それでも良く分からない場合はコンサルタントに相談したり、管轄の保健所に相談したりするのもいいでしょう。

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この記事を書いたライター
久坂精一

品質管理として社内の様々な事業部のISO22000、HACCP取得に向けて取り組みをしてきました。
現在は商品開発を担当しながら、ISOコンサルティング会社の研究会に所属しています。
趣味は学生の頃から継続しているマラソンで、2時間30分台が目標です。

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