HACCP衛生管理にIoT導入で効率化できること、メリット・デメリット、補助金など解説!

HACCP衛生管理にIoT導入で効率化できること、メリット・デメリット、補助金など解説! HACCP

IoT(アイオーティー)という言葉をご存知でしょうか。最近目にする機会も増えてきましたが、食品業界においてはまだまだ普及しきっていないトピックです。 この記事ではIoTを導入したHACCP衛生管理の方法やメリットを、実例を交えて紹介します。HACCPを取り入れたものの中々運用が上手くいかない、管理項目が増えて苦労しているという方はぜひ参考にしてください。

IoTとは

IoTとは、「Internet of Things(モノのインターネット)」の略で、これまでインターネットに接続していなかった様々な「モノ(物)」をインターネットに接続することで、相互に情報交換や制御をするシステムです。身近な例を一つあげると、エアコンやテレビ、電子レンジなどはこれまで単に独立した家電でしたが、現在はそれぞれがインターネットに接続し、スマートフォンやスマートスピーカーを通して操作できたりレシピをダウンロードできたり、幅広い機能を使うことができます。

食品業界、HACCP運用にIoTでできること、できないこと

食品_パスタ

2021年6月よりHACCPが完全制度化された食品業界において、IoTの利用は大変注目されています。これまでHACCP運用経験のない中小規模の事業者にとっては、HACCPの運用において重要な管理書類への継続的な記録と保管が担当者の負担となるケースが多く見られ、その解決策としてIoT市場が活性化しています。また、すでにHACCPを導入済みの企業にとっても運用の見直しやリモートワークへの移行が契機となり、業界全体としてIoT導入の機運が高まりつつあります。

IoTでできること

これまでの食品業界からすると画期的なツールであるIoTですが、当然万能ではありません。まずは具体的にIoTを活用してできることは何か整理してみましょう。

温度管理、記録の自動化

食品業界では、一部業種を除いて必ずといっていいほど原材料や製品を保管するために冷蔵庫や冷凍庫を使用しています。HACCPを運用する上で前提となる一般衛生管理のポイントとしても、冷蔵庫の温度点検はよく取り上げられる項目です。IoT対応の温度計を利用して温度データを自動で記録することで、人的な負担を軽減することができます。

また、CCPとして加熱工程がある場合、中心温度測定用の温度計をIoT機器に変えるだけでもデータの信頼性が上がり、製品の品質をより管理しやすくなります。

紙の記録を電子化(ペーパーレス化)

タブレット操作

温度記録、作業記録などの管理書類は、基本的に担当者の手書きによって記録されることがほとんどです。紙による記録はパソコンで書式を作成し、印刷し、現場にペンを準備し、最後は回収するなど、付随する業務が思いのほか多いものです。タブレットのようなIoT機器を利用することで記録を電子化すれば、時間の節約になるだけでなく、資源を節約し環境にも配慮することになります。

遠隔監視と遠隔制御

モノづくりをおこなう上で、機械の管理というのは非常に重要です。IoTシステムを導入することで、これまで従業員の経験をもとに実際に現場まで足を運んで管理していた機械の状態や製品の状態を、遠隔で監視することができます。また、異常の予兆を数値として管理することもでき、アラートの発令や遠隔での制御もおこなうことができます。

IoTでできないこと

IoTでは、温度などの数値として測定できるものや、機械的な動き(電気信号)などには相性が良い一方で、数値化できないもの、判断が伴うものとはあまり相性が良くありません。判断については、AI(人工知能)と組み合わせることで解決が図られていますが、実用化にはAIの教育に時間とコストがかかるため、導入事例は限定的です。 また、IoTにはセンサーの取り付けおよびインターネットへの接続が必要になるため、センサーの設置が難しい場所や通信設備のない環境では使用することができません。

HACCP運用へIoTを導入するメリット、デメリット

では、IoTの導入にはどのようなメリット、デメリットがあるのか解説していきます。(38字)

HACCP運用へIoTを導入するメリット

まずはHACCP運用へIoTを導入するメリットを3つ紹介します。

人件費の削減、仕事の効率化につながる

今まで人がおこなっていた冷蔵庫の温度確認などの作業をIoT機器が自動で行ってくれるため、今まで割かれていた人員分の人件費を削減することができます。また、記録文書の作成、回覧、保管などの管理に費やしていた時間も短縮することができ、トータル的に仕事の効率化が期待できます。筆者の知る工場では、担当者1名が全ての部屋、冷蔵庫の温度を記録して回るのに1回10分ほど時間がかかっています。これを1日3回記録する労力をIoT機器により自動化した場合、年間のメリットを計算すると、『0.5時間/日×22日×12か月=132時間/年』分の人件費削減になります。時給1,000円で計算すると実に13万2千円ものコストメリットになります。(図1)

図1.IoT化による人件費削減効果
図1.IoT化による人件費削減効果

資材、コストの削減につながる

紙媒体の記録が電子化されることにより、印刷に使用している紙、インク、保管用のスペースなど資材の削減につながります。また、遠隔監視、遠隔制御に加えて、基準逸脱時には関係者にメールでアラートを送信するなどすることで、ロットアウトを未然に防ぎ、廃棄コストの削減も期待できます。

労働災害防止にもつながる

食品製造業は他に比べて労働災害の発生件数が飛びぬけて多い業種です。その中でも原因の上位を占めるのが、機械での挟まり、転倒です。IoTによる遠隔制御や自動データ収集は、機械へ接触するリスクや巡回による転倒のリスクを低減することが期待できます。

HACCP運用へIoTを導入するデメリット

逆にIoTを導入すると、どんなデメリットがあるのか、大きく3つにわけて説明します。

初期費用が掛かる

IoT対応機器の設置、通信環境の整備、プラットフォームの開発、メンテナンス費用など、少なからず初期費用が掛かります。工場全体など大規模に取り組むのであれば、メンテナンス込みでパッケージ化されたIoTソリューションを導入する方が費用を抑えられますが、例えば冷蔵庫1つから導入してみるなど、事業の規模にあった設備を導入する必要があります。

電子化した記録の管理には注意が必要

情報セキュリティ

HACCPでは、記録の保管(最短でも賞味期限+α)も求められます。自動で取得したデータはいつでも閲覧できるよう、整理して保管しておく必要があります。また、停電や落雷などでデータが消失してしまわないよう、バックアップを取る必要があります。紙の記録とは勝手が違うため、導入時にはデータの保管方法、管理方法について、再度確認しておく必要があります。また、導入するプラットフォームによってはクラウドサーバー上でデータを管理するものもあるため、セキュリティ面や自社のイントラネットとの接続性などを考慮する必要があります。

必ずしもコストメリットが出るとは限らない

IoT機器に馴染みがない事業所では、新しい機器を導入したものの、既存の手書きによる記録をやめられず、自動記録とのダブルスタンダードになってしまう事例も多く見受けられます。また、段階的な導入計画と最終的なコストメリットに関しては、事前にシュミレーションしておくことをお勧めします。

HACCPのためのIoT導入に使える制度や補助金

お金

実際にIoT機器の導入を検討したとき、初期投資の金額に躊躇する事業者も少なくありません。そこでHACCPのためのIoT機器導入に使える制度や補助金をまとめました。

HACCP支援法

1998年にHACCPの普及促進を目的に5年の時限法として制定されましたが、延長を重ねて現在に至ります(2023年までの延長が決まっています)。「HACCPの導入と製造過程の高度化に必要な施設設備」を対象に、計画を認定されれば日本金融政策公庫より長期の低金利融資が受けられる制度です。「高度化」の中には自動温度記録機、警報装置などが含まれているため、IoT機器も対象となります。

HACCPハード事業

正式には「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設設備緊急対策事業」といい、農林水産省が管轄する事業です。欧米を始め諸外国では輸出するのにHACCPの認定が必須となっている国も多いため、その要件を満たすための設備投資に補助金を出すことで、日本の農林水産物・食品の輸出拡大を目指す意図があります。申請が認められれば250万~5億円の補助を受けることができますが、申請には事前にGFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト)への登録が必要となります。

ものづくり補助金

正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、全国中小企業団体中央会(母体は中小企業庁)の事業です。上記2つは国がHACCP普及および輸出に必要なHACCP認定のために必要な設備投資を助成する制度でしたが、ものづくり補助金の趣旨は中小企業が働き方改革や賃上げといった制度変革に対応するため、試作品開発や生産プロセスを改善するための設備投資を支援することにあります。申請の際はその趣旨に沿うように事業計画を作成する必要があります。

事業所として該当するものがある場合は、補助金を上手く利用してIoT機器を導入してください。

HACCP運用へIoT導入にあたり、よくある質問

IoT機器による電子記録があれば紙での記録はなくても大丈夫でしょうか?
最終的にHACCPで管理している証拠として提示できるのであれば、電子記録のみで大丈夫です。
例えば冷蔵庫の温度記録の場合、単純に測定した温度がリスト化されているだけでは不十分で、誰が、いつ、どの冷蔵庫を測定した結果、何℃だったのかなど第三者が見てわかる状態で記録する必要があります。
また、記録の完全性(改ざん防止対策)にも留意する必要があります。

AI技術と組み合わせたIoT機器とは具体的にどのようなものが考えられるでしょうか?
IoTで集めたデータを、AIを用いて分析し、その結果をIoT機器に返すようなシステムが考えられます。
具体的には、IoTセンサーにより冷蔵庫の扉が開く回数や庫内温度のデータを時間帯別に収集し、AIが扉の開閉が多い時間帯、少ない時間帯を判別して冷蔵庫の設定温度を最適化するようなシステムが考えられます。
また、X線異物検出機にAIを組み込むことで、より異物検出の制度をあげる取り組みも進められています。

まとめ

これから先、IoTはAI技術や5G通信(高速、大容量、低遅延、同時多数接続)と組み合わさることでさらに利用の幅が広がっていくことが予想されます。

HACCPによる衛生管理にも新しい技術を取り入れながら、より良い製品づくりを目指していくことが最終的に利益にもつながっていきます。 HACCPの構築やIoTの利用にお悩みの際は、業界に詳しいコンサルタントやIoT機器の取り扱いメーカーに一度相談してみることをお勧めします。

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この記事を書いたライター
鴨下弥一郎

ISO14001認定工場にて製造管理、設備管理、品質管理と幅広い業務を経験後、本社統括部門として各工場のFSSC22000、JFS規格の認証取得支援を担当。
週末はパンを捏ねることに全力を注いでいる。

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